第35話予期せぬ遭遇
「ほんとに、凄いな」
見渡す限り、たくさんの冒険者、商人、そしてこの国の特徴である武具を作り出す職人達がいる。
ムラサメの転移魔法で銀氷龍から、逃れたアユム達が転移した先にあった国は。
和の国という、昔防具を作るのが得意なドワーフと武器を作るのが得意な人間で作られた国らしい。
その中には、俺みたいに召喚された日本人も混じっていたようでその日本人が和の国にしようと言ったことで共同で作られた国は和の国で決定したらしい。
だから、刀がこの世界にもあったんだな。
銀氷龍から逃げてこの国で住み始めて一週間、この国について知る必要があると思い調べたり、日課の鍛錬を欠かすことなくしっかりとこなしてきた。
アイツはというと、本職ではないのに膨大な魔力を必要とする転移魔法の繰り返しの使用によって魔力がゼロになり。
いっときの間は、転移魔法を使えないと言われた。
俺の魔力の枯渇は、一週間安静にしていたのとマジックポーションを飲んだことによって回復していた。
万が一のために、ポーション類を買おうと市場にやって来たのはいいが周りの多様な装備に目を奪われて一向に買い物が進まないでいた。
自分の近くにいる冒険者を見るだけでも、聖騎士と思わせるような白を基調とした防具に身を包んだ人間。
肌を大胆に露出しつつ、急所のところだけ守るといった超軽装の装備をした猫人。
その、大きな体を重厚な鎧で隠して背中に常人の人では持てないような大楯を背負った巨人族。
とんがった、耳と年齢を感じさせない美貌を持った弓を携えているエルフ。
と言った、具合にたくさんの冒険者がおり。
その、カッコいい装備を見て惹かれるのは男として仕方のないことだと言えるだろう。
見とれつつも、お目当てのマジックポーションや回復ポーションを買ったアユムは来た道を引き返そうとすると、そこに見覚えのある姿を発見した。
「なんで……お前がっ!?」
忘れるはずもない、自分をダンジョンに閉じ込め殺そうとした張本人。
大輝が他にも見覚えのある、クラスメイトを連れこちらに向かって歩いてきていたのだ。
なんでだっ!?
なんで、アイツらがここに……。
向かってくる、大輝達にバレないように気配遮断スキルを使い物陰に隠れていると。
次第に距離は近づき、その会話の内容が耳に入った。
「それにしても、かったるいんですけど。魔王の配下の討伐とか」
「まぁ、そう言うな。その、おかげて僕たちは強力な装備を作ってもらうことが出来るんだから」
「大輝の言っていることは正しいと思うけど、俺たちの力なら別に装備なんてわざわざここのじゃなくても大丈夫だったんじゃね?」
「あなた達ね、私達はこの国でしか作れない専用装備を作ってもらうために来てるのよ?」
「それも、普通なら莫大な資金が必要な装備を無料で作れるのだからこれくらい我慢しなさい」
「お前は、相変わらずオカンみたいだな!」
「誰がオカンよ! あなた達二人が適当なのが悪いのよ」
「まぁまぁ、落ち着いて? 二人とも早く帰りたいみたいだから早く用事を済ませに行こうか」
そんな会話を耳にしながら、大輝を含めた四人が国の中心へと歩いていくのを見たアユムは大輝達がなんのために来たのかを理解した。
会話の内容を簡単にすると、各々の専用装備を作ってもらうためにこの国に来たみたいだな。
勇者の大輝が来るってことは、この国は装備作りがおそらく国じゅうの中で一番なんだろうな。
アイツらが帰るまで、下手に動き回れないな。
少しの間、気配遮断スキルを使い続ける必要があるな。
大輝達にバレないように、気配を消しながらムラサメとフェンが待っている宿に戻ると。
ムラサメに事情を説明し、あまり外に今は出たくないことを伝える。
力を手に入れる前のアユムがダンジョンに閉じ込められ、死にかけた話をしたあたりでムラサメの顔から感情が感じられなくなっていた。
いろんな、押し込めたような顔でムラサメは
「分かったよ、じゃあ。用事だけ、先に済ませに行こうか」
「そして、この国を出よう」
と言ってくれた。
「あぁ、ありがとう」
「おそらく、その勇者の子達が作ってもらう専用装備はここの職人達でもかなりの時間がかかるはずだから」
用事を済ませて、ここから立ち去る方がいいと話してくれた。
なんで、俺あんな奴から逃げてるんだろうな。
いや、会ったら。アイツは絶対に俺の邪魔をしてくるはずだ。
俺はこんなとこで邪魔をされるわけにはいかない、フェンと楽しく過ごすためにもな。
「じゃ、お弟子くん。用事を済ませに行こうか」
「あぁ、ところでなんの用事だ?」
「そんなの、お弟子くんの刀を作りに行くのに決まってるでしょ?」
あー、そういえば俺の刀を作るために氷竜と戦ってたんだよな。
「忘れてたみたいだね? 人の話は聞いておくんだよ?」
「別に忘れてたわけじゃない」
記憶から抜け落ちてただけだ。
「私の刀も作ってくれた、お友達のところに行くからついてきて」
そう言って、歩いていくムラサメの後を気配を消しながらついていった。
俺の刀か……楽しみだな。




