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第33話激闘の末に学ぶもの

 

 さて、短期決戦って意気込んだはいいけどどうやって倒せばいいんだ。


 奴の特徴はやっぱり、あの発達した足から繰り出される猛スピードからの攻撃だよな。


 尻尾のおかげで、攻撃範囲まで広いから厄介だ、なんにせよ奴の機動力を奪わないとな。


 まぁ、そんな簡単にいくとは思ってないからな泥臭くやらしてもらうぞ!


「フェン! 目の前の敵を倒すのに力を貸してくれないか!」


「任せて!」


 フェンはそう言うと、助けを求めたアユムのところに来ると獣人の姿から狼の姿に戻った。


 なにも、一人で戦って勝とうなんて思ってない。機動力、攻撃の手数で負けているなら一人じゃなく二人でだ!


 アユムは目の前の(氷竜)の位置を確認した。


 氷竜は、自分の獲物が一匹増えたのが嬉しいのか、その長い尻尾を上から下へと叩きつけた。


 氷竜との距離は、約50メートル。人間のアユムからしたら遠い距離でも竜からすればないも同然の距離だろう。


 アユムは身体強化を使い、距離を詰められる前に先に動き出した。


 氷竜が尻尾をムチのようにしならせて攻撃してくるが、スキルの気配察知で瞬間的に上に跳躍してかわした。


 尻尾を振るった後の少しの硬直を見逃さず、アユムはその厄介な尻尾を切断しようと尻尾の根元に向かって風魔法(ウィンドカッター)を放った。


 アユムが放った、風魔法は氷竜の尻尾にしっかりと当たり氷竜の悲痛な叫びが聞こえた。


「フェン!」


 しかし、相手は竜、持ち前のタフさで空中に跳躍したアユムを攻撃しようと先程放った氷のブレスを放とうとする。


 それを、予測していたアユムはフェンに自分が攻撃した箇所を氷竜がアユムの方に向いてから攻撃するように伝えていた。


 その、指示を守りフェンはブレスを放とうと反転した竜の後ろに現れた。アユムによって傷を負った尻尾に思いっきり噛みついた。


「グルル(離さない!)」


「ゴワァ!?」


 予期しないところからの攻撃に驚いた氷竜は放とうとしていたブレスを放てず、アユムを攻撃出来なかった。


 フェンの噛みつく力はとてつもなく、さすがの氷竜も見過ごしておけないと判断したのか。


 未だに、尻尾に噛みついているフェンを振り払おうと尻尾をやみくもに振り回した。


「やらすか!」


 このまま振り飛ばされたりでもしたら、間違いなく大怪我だ!


 アユムはその攻撃を妨害するためにも、縮地で距離を詰めスキル頑丈と怪力、そして自己回復を使い。


 強化した拳で殴る、ボロボロになる、自己回復ですぐさま回復。それを、ひたすら繰り返した。


 普通の冒険者が見たら、夢でも見ているのかと錯覚するような。


 無謀な攻撃を、猛烈な勢いで繰り出し。意識を向けさせようとした。


 この攻撃に、竜種の中では耐久力が低いとはいえ。竜の名にふさわしい耐久力の持ち主の氷竜も、その透明で幻想的な体にダメージを負った。


 その証拠にアユムの目の前には、幻想的な体の氷竜のお腹あたりに大きな亀裂が入っているのを見た。


「攻撃が効いた……勝てないて相手じゃないんだ」


 どんな、ありえない攻撃だろうと。


 綺麗な勝ち方じゃなくても、狩るか狩られるかの勝負。


 最後まで倒れなかった方の勝ちだ。


「フェン! もういい、離せ」


 フェンに、痛みでアユムしか見てない間に戻ってくるように指示をした。


「ご主人様〜あの、お肉硬かったぁ」


 そう言って、獣人の姿に再び戻ったフェンがお肉の硬さに文句を言いながら戻ってきた。


「お前、肉だと思って噛り付いていたのか、ずっと」


「少しは、緊張感持て。この、食いしん坊」


「うぅーー、だって」


 フェンの訴えをスルーしながら氷竜の様子を見てみると、あきらかに当初より弱々しい足取りで接近戦を嫌ってか距離を離そうとしていた。


 その、弱気な様子を見て逃がす冒険者はいないだろう。


 未だに文句を言う、フェンに合図をしたら一斉に魔法を放つことを伝え。


 アユムは目の前の弱りきった、獲物にトドメを刺すために魔法を詠唱し始めた。


 フェンの魔法の準備が出来たのを確認した後、アユムは大きな声で合図をした。


「やれ!!」


 まず、フェンとアユムの放った風魔法(ウィンドカッター)がその体を傷つけた。


 すぐさま、逃げだそうとする氷竜に向かってアユムは闇魔法の一つの重力操作で対象と同じ重さを与え動きを鈍らせた。


 トドメを刺すのは俺じゃない!


「フェン! アレだ」


「うん!」


 アユムがその、膨大な魔力を注ぎ込み氷竜を逃がさないように動きを止めている間に。


 フェンの奥の手でもある、風の神の使い魔と言われているフェンリルにしか使えない【風神の風】を使うための魔力を込め始めた。


 数分経っただろうか、そのアユムの膨大な魔力を持ってしても魔力が底を尽きはじめ。


 動きを止めるのがキツくなってきた頃。


 フェンの体が大きく変化し、まるで大人のフェンリルになったかのような神々しさを持った姿に変わった。


 なんだ、この威圧感……これが、フェンの力か?


「ご主人様、もう、限界だから、放つよ!」


 その、神々しい体になったフェンがアユムに問いかけた。


「あぁ、頑張れ! フェン!」


 アユムが、その姿に驚きつつも倒せと応援すると。


 その、大きな口を開き先程見ていた氷竜のブレスを思い出させるような、いや、それを超えるような膨大な魔力を込めた風のブレスを放った。


「ゴワァァァ!!」


 その、風のブレスを迎え撃つかのように、今までとは比べ物にならない氷のブレスを放った。


 その、二つのブレスがぶつかった瞬間、周囲が揺れ、強烈な地響きが起きた。


 ブレスがぶつかる瞬間、残りの魔力を自分達を守る壁を作ることに使ったアユムは氷竜が倒れたのか確認するために、その壁から顔を出して覗くと。


 ブレスの衝撃を物語るように、地形は激しく変化し、衝突した周辺は特にひどく。


 陥没していた。


「これは、すごいな」


 そう言って、驚きながらも氷竜の様子を見ると、その神々しかった姿はそこには無く体のいたるところは消し飛び。


 おそらく、衝突の衝撃で飛んできた氷の破片が大量に刺さっていた。


 そこには、激戦の末に最後まで死に抗った一匹の竜の死体があった。


 この、戦いを忘れることはないだろう。


 最後まで、生きることを諦めなかった、アユムとフェンが協力して倒したはじめての魔物として心に刻まれる。


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