第32話氷竜との遭遇
見渡す限り一面真っ白な雪景色。
目の前に広がる景色では銀色の毛並みを持った狼が雪が積もった地面を駆け回っている。
「いや、寒っ! ここどこだよ!」
「見てわからないのかい? お弟子くん、ここはね氷竜が住処にしている氷山だよ」
そんな事も、分からないのみたいな顔をするなよ!
「じゃあ、サクッと倒しに行こっか!」
なにその、ちょっとコンビニ行こうのノリ。
「ご主人様ーー!! これ、すっごく冷たいよ?」
そう言って、狼の姿から獣人の姿に戻ったフェンはその、小さな手で沢山の雪をすくって見せに来た。
「あぁ、これは雪だからな」
「雪ー? 食べれるの?」
「さぁ、どうだろうな。氷とかなら食べれるかもしれないけど、食べるなよ?」
食べるなよって言われたフェンはすくってきた雪をちょこちょこと歩いていきそっと元あったところに戻した。
「フェン……」
お前、そんなにご飯に飢えていたのか。
よし、分かった!
これからは、好きなだけご飯を食べさせてやるからな!
「あー、お弟子くん? そろそろ、いいかな」
そう言って、蚊帳の外にされていたムラサメは話を戻すように促した。
「すみません、フェンが可愛くて」
「フェンちゃんが、可愛いのは分かるけど君もなかなかだよ!」
「えっ?」
「君は、自分で分かってないだろうけど私と話すときは笑顔ゼロなのにフェンちゃんを見ている時だけは笑顔なんだよ!」
嘘、俺そんなににやけてたかな。
「そして、その笑顔……私的にはすっごい好き!」
ムラサメが、大きな声で好きと言いきった瞬間、この寒い環境に慣れているムラサメでも寒いと感じさせる顔をアユムはしていた。
その、アユムの顔は笑顔という言葉が想像できないほど冷えた顔をしていた。
「竜に食われろ」
「いやー、竜なんかには食べられないよ?」
コイツ天然なのか?嫌味のつもりで言ったのに、何冷静に力の差を分析してんだよ。
「じゃあ、風邪をひかないうちに倒そっか」
ハァ、この人には敵わないな。
「じゃあ、私についてきてよ〜〜?」
「分かったから、早く行け」
「行くよ、フェン」
「はーい!」
ムラサメの行く道を追うように一人と一匹が歩き始める。
◆
「おい、いつまで歩くつもりだ!」
「うーん、後二時間くらいかな?」
「もう、三時間くらい歩き続けてるだろ!」
ていうか、コイツの歩くスピードがおかしいんだよ。
俺はついていくだけで大変なのに……なんで、現れた魔物をサクサク倒してるんだよ。
現れる魔物はどれも、小さな村なんか軽く滅しそうなのばかりだった。
「まぁ、二時間は冗談だから安心してよ」
「君も、気づくんじゃないかな? そろそろ」
「気づく?」
言われてみれば、急に魔物の姿が見えなくなったような気がする。
それに、一面雪ばかりだったのが急に氷ばかりに。ここには、何もいないと思うほどの静けさ。
「来たみたいだよ」
ムラサメがそう言うよりもはやく、場の異変と空気が変わったのを感じたアユムは自作の愛刀虎鉄を引き抜いた。
「ゴワァァァァァ!!!!」
張り裂けんばかりの、咆哮をあげた大型の魔物は。
倒せば、永遠の名誉と富。
なによりも、冒険者達が憧れる【竜殺しの称号が与えられる。
竜種の内の一種。
「氷竜!」
氷のような、透明度と冷たさを感じさせる。鋭利で大きな爪と牙、滑らかで長い尻尾、そして大きな翼。
そして、一番の特徴が滑りやすい氷の大地でもしっかりと踏み込めるように発達した大きな足だ。
アユムの目の前20メートルの距離に降りてきた氷竜は先制攻撃とばかりにその大きな口から氷のブレスを吐き出した。
「いきなりかよっ!」
そう、悪態をつきながらも事前に調べていた知識で氷のブレスを知っていたアユムは自分の使える火魔法の中でも速度と火力に優れている速攻魔法炎の槍を複数放った。
放った後、フェンを抱えて咄嗟に横っ飛びをしたアユムの横を全てを凍てつくすような冷気と威力を持ったブレスが横切った。
「危なっ」
やっぱり、魔力を込めきれてなかったから押し負けたか。
「てか、俺が避けれてなかったらどうしたんだよ!」
そんな抗議の声を未だに攻撃体制に移っていないムラサメに投げかける。
「いやー、さすがにあれくらいどうにかしてもらわないとね。私のお弟子くんなんだから」
助ける気が始めからなかったのか。
それとも、こんなので倒れるようなら必要ないってことか?
どっちにしろ、これだけは聞いておかないとな。
「目の前の敵を倒すのを手伝ってくれるのか?」
「えっ、自分の獲物なんだから自分で倒すに決まってるでしょ? 私は甘やかしたいけど、お弟子くんのためにも鬼になる時はなるんだよ!」
ケッ、どうだかな。
けど、手伝ってくれないなら俺一人でどうにかするしかないな……やってやるか。
一つの決意をした、アユムに向かって氷竜が氷の大地を勢いよく蹴り猛スピードで突進してきた。
その、スピードのまま体当たりをしようとする氷竜を見て刀で迎え撃つには相性が悪いとまたしても体当たりするギリギリに横っ飛びをして攻撃をかわす。
壁にぶつかる前に急ブレーキをした氷竜の比較的耐久が低い首に向かって切断力のある風邪魔法と水魔法の風の刃と水の刃を放った。
「どうだっ!?」
アユムの放った魔法は竜の鱗を傷つけるだけで終わった。
自慢の体に傷をつけられた、氷竜は激怒し咆哮をあげた後体内から次は人の頭ほどの大きさの氷の塊を複数吐き出してきた。
その一つが、離れたところでアユムの様子を見ていたフェンの方向に飛んでいく。
「フェンッ!? 避けろ!」
咄嗟のことに、反応の出来なかったフェンは動くことが出来ず向かってきた氷の塊が当たると思った瞬間、氷の塊が滑らかな切断面とともに真っ二つに割れていた。
あの、滑らかな切断面……アイツ。
「手を貸さないんじゃなかったのか?」
「あのねー、お弟子くん。こんな、可愛い子に傷なんか作っちゃダメでしょ!!」
「ねーー? フェンちゃん」
「ムラサメさん! 私もムラサメさんのこと守る!」
「はうっ、本当可愛い! もう、私の妹にしたいわ」
「ってこと! こっちのことは心配せず、お弟子くんは目の前の敵を倒すの」
ったく、余計なお世話だっての。
「……でも、まぁ」
「ありがとな……」
「えっ、お弟子くん! 今デレた!?」
「ねぇ! ねぇ!」
これさえ、無ければいいんだけどな。
よっしゃ!気合い入れ直すぞ。
いつまでも、こんな奴に時間はかけれない。
短期決戦だ!




