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ギャルゲー世界にモブ転生したけど主人公がいないから必死にヒロイン救ってたらヤンデレハーレム地獄になった  作者: たうやん


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3/5

第3話:モブの戦い方は、泥臭く、無様に

「あぁ? なんだお前。引っ込んでろよ、くそが!」

男が苛立ったように俺を睨みつける。その目には、完全に理性の欠片もない狂気が宿っていた。

ゲームの主人公なら、ここで相手の攻撃を華麗にいなし、一撃で気絶させるのだろう。だが、俺にそんな戦闘技術スキルはない。

「不知火、走れ!」

叫ぶと同時に、俺はポケットから取り出した催涙スプレーを男の顔面に至近距離で噴射した。

「ぎゃああああああっ!? 目が、目がぁ!」

男が顔を押さえて絶叫する。よし、効いた!

すかさず俺はスタンガンを突き出そうとしたが、激昂した男が盲目的に振り回した腕が、俺の顔面に直撃した。

「ぶっ……!?」

強烈な衝撃と共に、視界が火花を散らす。地面の泥水に叩きつけられ、口の中に血の味が広がった。痛い、信じられないくらい痛い。一瞬で意識が飛びそうになる。

「佐藤くん……!?」

遠くで、怜奈が俺の名前を呼んだ気がした。彼女は恐怖で足がすくみ、逃げ出すこともできずにその場にへたり込んでいた。

「クソ……がっ!」

男は目を真っ赤に腫らし、涙と鼻水を流しながら、懐から小型のサバイバルナイフを取り出した。

「殺してやる……僕と怜奈ちゃんの邪魔をする奴は、全員殺してやる!」

ナイフの切っ先が、雨の中で鈍く光る。

モブの頭が「逃げろ」と警報を鳴らす。前世のサラリーマン根性が「関わるな」と叫ぶ。

だけど、ここで俺が倒れたら、あいつの人生は終わる。それだけは絶対に嫌だ。

「なめるな……っ!」

俺は泥まみれの地面を這い、男の足元にタックルをかました。不意を突かれた男の巨体が、激しく地面に倒れ込む。

すかさずその上に馬乗りになり、右手に持ったスタンガンを男の首筋に押し当てた。

パチパチパチパチッ!!!

激しい電撃の音と共に、男の身体が大きく痙攣する。

しかし、男も必死だった。最後の力を振り絞った男の左拳が、俺の脇腹を激しく殴りつけた。

「がはっ……!」

防刃ベストの上からでも、肋骨が軋むような痛みが走る。息ができない。

それでも、俺はスタンガンのスイッチを離さなかった。男の目が白目を剥き、完全に脱力して動かなくなるまで、必死にトリガーを引き続けた。

やがて、パチリ……とスタンガンの音が途切れ、男は気を失って水たまりに沈んだ。

「はぁ……はぁ……はぁ……っ」

俺は男の身体から転がり落ち、冷たい雨を受けながら、激しく呼吸した。

全身が痛みの奴隷のようだった。顔は腫れ上がり、脇腹は激痛で動かせない。服は泥と血で最悪の汚れ方をしている。

「佐藤くん……どうして、あなたがここにいるの?」

震える声が、上空から降ってきた。

見上げると、不知火怜奈が、まるで信じられないものを見るような目で俺を見つめていた。彼女のトレードマークだった「氷の仮面」は完全に剥がれ落ち、そこにあるのは、ただの怯えた16歳の少女の顔だった。

「佐藤くん、私、あなたに何も話してないのに……。関わったら、あなたまで危ない目に遭うのに、どうして……!」

彼女は泥水の中に膝をつき、俺のボロボロの制服の胸ぐらを掴んで激しく揺さぶった。その瞳から、大粒の涙が溢れ落ち、雨水と混ざり合っていく。

「どうしてって……げほっ、ゴホッ……」

俺は血を吐き出しながら、無理やり口元を歪めて笑った。

本当の理由は「お前のバッドエンドを見たくなかったから」だ。お前が絶望して、大好きな歌を奪われる未来を、俺の知る記憶から消し去りたかった。

だが、そんなオタクの執念をそのまま伝えても意味はない。俺はゲームの記憶にある、彼女の心に一番刺さるはずの「言葉」を、必死に絞り出した。

「お前が……笑って歌ってるところ、また見たいからだよ。お前の歌には、それだけの価値があるって……俺が知ってるから……」

それは、母親から「道具」としてしか見されてこなかった彼女が、人生で最も欲しかった「自分の歌への純粋な肯定」だった。

「私の、歌……? 私自身を利用するためじゃなくて……私の歌のために、命をかけたの……?」

怜奈の瞳の奥で、何かがパチリと切り替わる音が聞こえた気がした。

だが、限界を迎えた俺の意識は、そこで完全にブラックアウトした。

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