59章 謎の来訪者
深也と潤奈は車椅子の道人と共に会社エリアの司令室に続く通路を歩いていた。
「そういえば、深也は怪我、大丈夫なの?
」
「ん?あぁ、潤奈が治癒してくれてな。平気さ。一応、今日も検査したけどな。」
「大神さんから通信で聞いたけど、キャルベンの奴らと戦ったんだろ?」
「あぁ、ランドレイクとレイドルクの爺さんとな。オルカダイバーは途中で時間切れになっちまった。」
「あ、そっか。深也も十糸姫の糸を…。」
「おう、頼りになる相棒だぜ。」
深也はスマホに映るオルカダイバーを見る。
「…オルカダイバーもランドレイクと合体できるのかな?グルーナさんのルレンデスとキャロルナも。」
「あぁ、聞いた聞いた!ジークヴァルとハーライムが合体したんだってな!で、どうなんだ?」
深也が興奮気味に聞いてくるのは珍しい。やっぱり誰でも合体ロボットには心惹かれるものだろうか?と道人は思う。
「うむ、私が洞窟で道人たちを助ける身体が欲しいと願った結果だからな…。どうなんだろう…?」
「…私もハーライムのパートナー扱いなら、フォンフェルも合体できるのかな?」
「わ、私とハーライムが…が、合体!?」
「おぉっ!?いんのか、フォンフェル!?」
深也は驚いた。普段は姿を見せずに潤奈を護衛しているフォンフェルが珍しく話に入り、動揺している。
「そうか、俺は天使のぬいぐるみから糸とデュラハン・ハートが出て来ただけで特に願っ…いや、言ったな…。確か、海音を…。」
「えっ?海音さん?」
「…ん?」
「いや、何でもねぇ…。うん…。」
深也は下を向いて黙った。
「あ、でもさ。十糸姫の糸はまだ後六つあるんだし、また深也が手に入れれば…。」
「なるほど!そうすりゃっ、ランドレイクも合体できるかもしれねぇって訳か!よし、俄然やる気が出てきたぜ…!うおぉーっ!!」
深也は車椅子を押しながら走る。
「やる気を僕の車椅子で表現するのはやめないかね!?」
「…ふふっ…!」
そうこうしている内に司令室に辿り着いた。司令室に入ると全員集合していた。グルーナもモニターに映っている。
「あっ、道人!」
「おぉっ、道人!心配したぞ!」
愛歌と大樹が道人の側まで駆け寄って来る。虎城と大神も道人の姿を見て安心していた。
「良かったぁ〜…っ、一時はどうなる事かと…。」
「いきなり倒れた時は冷やっとしたぞ!」
「ごめんな、二人共。心配掛けて…。もう大丈夫だからさ!」
道人は右肩に左手を置いて右腕をグルグル回して元気を見せる。
「道人君、大丈夫かい?すまないね。車椅子でわざわざ…。」
「無理はせんでいいんじゃぞ?気分が悪くなったら遠慮なく言ってくれ。」
司令と博士も道人を気遣ってくれた。
「い、いえ。僕も参加させて下さい。みんなに伝えないといけない事がたくさんあるので。」
「そうか、ありがとう。感謝する。」
司令は道人にお辞儀をし、慌てる道人。
「…愛歌、前に教えてくれた道人が元気になる方法、やってみたら道人喜んでくれたんだ。ありがとうね。」
「ん?何の話…?」
「…ほら、食べさせ方の…。」
「…えっ!?あれ、今日披露したの…?へ、へぇ〜っ、そっかそっか…。」
やはり愛歌だった。
「み、道人、ごめん!まさか今日実践するとは…。」
「いいよ、昔からの付き合いだ。愛歌の小芝居好きには慣れてる。」
「おぉっ、ありがたや…!道人様…!」
道人は別に怒っていなかった。バドスン・アータスとの激戦の後、またこうしてみんなとふざけ合う事ができてほっとしていた。
「…それでは早速本題に入ろう。みんな、席に座ってくれ。」
愛歌たちは司令に返事をし、近くの空いている座席に座った。
「現時点での御頭街の状況だが、もう危機は去った事は通達済みで市民たちは元の生活に戻っている。」
「そうそう、うちの爺ちゃんも無事避難してくれてたんじゃ!心配掛けたの、みんな!」
「そっか!良かったね、大樹!」
「壊された街も現在修復中だ。ただ、バドスン・アータスの存在は奴らの演説で明るみになってしまった。」
「そうなの、道人。今やテレビもネットもどこを見てもバドスン・アータスの報道で持ちきりよ。」
「そうなのか…。まぁ、そうなるよな…。」
あんな事があったんだ、今まで通りの御頭街の日常に戻るのは難しいよな、と愛歌の話を聞いて道人は思った。
「そう、明るみになったのはあくまでバドスン・アータスの存在だけ…。ここからは敵対勢力の整理の話に入ろうと思う。まずはバドスン・アータスからだ。みんなが戦ったバドスン・アータスの整理をしたい。報告してくれ。」
「俺はディアスとシャクヤスと交戦しました。カプセルロボットの救出を優先したんで撃退はしてません。ディアスはカラクリ武者軍団と交戦していましたが、シャクヤスはいつの間にかいなくなっていました。」
大樹が先に慣れない敬語で報告した。
「…そうだ、父さんの宇宙飛行士仲間はどうなったんですか、司令?」
道人は気になって前屈みになる。
「安心してくれ、道人君。三人とも無事だよ。今は医療センターで療養してもらっているよ。」
「そっか、良かった…。」
「…良かったね、道人。」
道人は潤奈に支えてもらって車椅子に座り直す。
「救出した三人に聞いたんだが、道人君。君のお父さんともう一人…手科という人物は別の場所に閉じ込められていてあの三人にも状況はわからないようだ。」
「そうなんですか…。手科さんも…。」
手科という人は豪の宇宙飛行士仲間の一人でマジックが趣味の人だ。
「シユーザーが戦島で父さんはとっておきの切り札だから、まだ切らないと言ってました。どのタイミングで奴らが切ってくるかはわかりませんが、警戒はしておくべきだと思います。」
「そうだな。道人君の言う通りだ。」
「安心せい、道人!奴らがどんな非道な手を打って来ても、また俺とカサエルが救出してみせるわい!」
「任せるさぁっ、道人!」
「うん、ありがとう!大樹!カサエル!」
道人は大樹とカサエルに頼もしさを感じ、喜んだ。
「深也も一人助けたんだよね?」
愛歌が深也に尋ねた。
「助けたっつうか、レイドルクの爺さんが闘いの邪魔だって壊しただけで俺らが救出した訳じゃないんだけどな。あーっ、俺とランドレイクはレイドルクと闘ったんだが、キャルベンの奴らが水を差して来たんで中断。キャルベンの奴ら、途中で逃げたんだが、気がついたらレイドルクもいなくなってた。以上。」
深也は相変わらず敬語は喋らずにだるそうに報告した。
「…私とトワマリーはダーバラと交戦…。ダーバラとは分かり合えそうだったんですけど…何者かの攻撃で行方不明になりました…。」
「あぁ、愛歌君の報告は既に聞いていて、海中を捜索したんだが、ダーバラは発見されなかった。」
「そうなんですか…。ごめんなさい、司令。敵の捜索なんて頼んじゃって…。」
「いや、話の通じるシチゴウセン…。私もいると信じたい…。愛歌君のやった事は変ではないよ。」
道人たちは司令がディアスと接触していた事を思い出した。
「そうだよ!シチゴウセンと分かり合えちゃうなんて、愛歌はすごいよ!」
「…うん。確かにダーバラも色んな惑星を滅ぼしてきたバドスン・アータスの一人…。でも、もし罪を償う意思があるんなら、受け入れてもいいと思う…。」
潤奈はそう言ってはいるが、少し複雑な思いが垣間見えた。
「私とルレンデスにもみんな、償いのチャンスをくれたしね!これからはルレンデスと一緒に頑張っちゃうから!よろしくぅっ!」
グルーナが暗い雰囲気を吹っ飛ばすかのように明るく振る舞った。
「元気を出しテ、愛歌。」
「うん、ありがとう、トワマリー。みんな。」
「…私とフォンフェルはシユーザーとラクベスと交戦。グルーナさんと共に退却させました。」
「僕もダジーラクと闘って勝ちましたが、ライガ、マーシャルと共にダジーラクは退却しました。」
潤奈と道人も報告を司令に伝える。
「…それとスラン。彼女は戦いの前に何か揉めていて戦島を去っていきました。」
潤奈がスランを思い出し、報告を足した。
「わかった。まとめるとダーバラが行方不明だが、バドスン・アータスは未だ健在…。撃退はできたが、戦力に痛手はない…。今後も厳しい戦いが予想される。皆、気を引き締めてくれ。」
司令の言葉に皆、頷いた。
「次に新たに現れた敵勢力、傀魔怪堕とキャルベン…。この二つの勢力に関しては情報が少な過ぎる…。」
「博士、以前潤奈の宇宙船を調べに行った時、十糸の森の洞窟にあったカラクリ武者の残骸は回収したんですよね?」
道人は博士に疑問を尋ねた。
「あぁ、もう回収済みで今回の件で改めて調べたんじゃが…。何故これで動けるのか、全く解明出来なかった…。」
「えっ?博士でもお手上げなんて…。」
道人たちは悔しそうにする博士を心配した。
「奴らは十糸姫の関係者らしいし、十糸の糸のように魔術的なもので動いているのかもしれん。とにかく、化学じゃお手上げじゃよ…。じゃが、わしにも科学者の意地がある。諦めずに調べてみようと思う。」
「わかった。頼んだぞ、博士。」
司令は博士の右肩に手を置いて激励した。
「なぁ、司令。キャルベンの奴らだったら、俺はわかる事があるぜ。」
深也が発言し、みんな一斉に深也を見た。
「裏切り者の人魚騎士ミオン…。奴らは確かにそう言っていた。巨大クラーケンを地球に送り込んだ事に反発したらしい。」
「えっ?海音さんと同じ名前…?」
「巨大クラーケンって、もしかして人魚騎士伝説の…?」
道人と愛歌は水縹星海岸で出会った殻谷海音とそこに伝わる人魚騎士伝説を思い出す。
「…キャルベンのリーダー、イジャネラが昨日言ってたね。バドスン・アータスよりも我らの方が先に地球に目をつけたから他の惑星に渡さない、って…。」
「言ってた、言ってた!え?じゃあ、あいつらも宇宙人…!?」
潤奈が思い出した発言を聞き、愛歌も閃いた。
「海音は必ずキャルベンと関係があるはずだ。俺はもう一度海音に会って話す必要があると思う…。」
「深也君の言う通りだ。よし、わかった!まずはキャルベンの事から調べる事にしよう!準備ができ次第、水縹星海岸へ向かう!」
「じゃが、全員という訳にはいかんぞ。パークの留守中に三勢力が攻めて来る可能性がある。」
「そうだな。よし、部隊を二つに分けることにしよう!」
早速、司令たちは作戦の準備に取り掛かった。
「大神君、早急に適切な部隊分けのシミュレーションを頼む!」
「わかりました!まっかせて下さい!」
大神はプログラムを起動し、演算を始める。
「何か司令たち、燃えて来たね…!あたしたちもテンション上がってきたぁっ!」
「うん!敵が増えたからって、気落ちしてても何も始まらない!僕たちは目の前の事を精一杯がんばってみよう!」
道人の発言にみんなは強く頷いた。
「…確かに良い心掛けです。ですが、それではまだ頼りない…。あなた方は更に強くなる必要がある…。」
「…!? 誰っ!?」
司令室に聞き覚えのない声が響き、みんな周りを警戒した。
「恐れる必要はありません。私に敵対の意思はない…。」
司令室に透けた姿の鎧を身に纏ったドラゴンが突然出現した。
「えっ?何?」
「…喋るドラゴン…?」
ドラゴンを見て困惑する道人と潤奈。
「私はビーストヘッドを代表して意思だけをここに何とか飛ばして来ました。名は…まだありません。」
「名がない…?ってか、ビーストヘッドって…。うっ…!?」
道人の脳内に地球の意思の姿がちらついた。右手で額を抑える。
「あなた方は試練を受け、知らなければならない…。ディサイド・デュラハンの前世を…。」




