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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第2部 DULLAHAN WAR
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58章 グルーナとの面会



「………。…? ん?また、か…。」


 道人は宇宙空間を漂っている。二度目にしてもう慣れてきた。目の前には当然のように青と黄緑の髪の子供がいる。道人はダジーラク戦で未来の前借りをした際の自分の言葉を思い出す。


「えっと、未来の前借り?をありがとうね?君なんだろう?僕を助けてくれたの。」


 子供は頷いた。


「確か、僕は自分で言ったな…。君は地球の意思…というか、地球そのものなんだよね?」


 子供改め、地球の意思はまた頷く。


「君、僕の事を守護者って言ってたけど、どういう事なの?何で僕を選んでくれたの?」


 地球の意思は右手を前に出して道人の脳内にまたワードを与える。


『ビーストヘッド』『英雄』『前世』『捜索』『遺跡』


「ビーストヘッド…?確か、前にも…。ん…?」

「…あ、起きた?良かった…。」


 目が覚めると見慣れない天井と林檎を果物ナイフで剥きながら自分に微笑みかけてくる潤奈が視界に入った。


「…道人、大丈夫?あの後、倒れちゃってね、丸一日寝てたんだよ?みんな、心配してたよ?お母さんもお見舞いに来たんだよ?」

「えっ?倒れた?僕が…?」


 確かに道人は博士たちや大樹、深也と合流した後の記憶がなかった。


「道人、目が覚めたか!良かった…!ハーライム、聞こえているか?道人が目を覚ましたぞ!」


 道人は上半身を起き上がらせて机に置いてあるデバイスとスマホを手に取って見る。


「心配かけてごめんな、ジークヴァル、ハーライム…。」

「…道人が眠っている間に博士たちスタッフが身体検査やデバイスとスマホの点検をしたけど、身体に疲労が溜まっている事以外は異常はなかったって。」


 ダジーラクとの闘いでかなり無茶をしたが、何も異常がなかったと聞いて道人は安心する。


「…ただ、身体の疲労を考慮してね。もし、道人が目を覚ました時はその日だけは車椅子で行動してもらう事になるって。」


 道人はベッドの近くにある車椅子を見た。


「…みんなと話し合って、道人を当番制でお世話をする事になってね。今日は私が道人のお世話をする事になったの。」

「そっか…。そうだ、他のみんなは?」

「…昨日のバドスン・アータスの戦いの事後処理でみんな忙しくて…。でも、司令たちが各々の用事が終わった後、午後からみんなで司令室に集まって話をするって。道人は後日改めてって話だったけど、目が覚めたんなら参加できるけど…どうする?来る?」

「わかった、午後からだね。僕も行くよ。」

「…それとこの後、少しだけグルーナさんの面会に行く予定なの。良かったら、道人も一緒に来る?」

「あ、そっか…。グルーナさん、自首したんだ…。わかった、僕も付き合うよ。何時からなの?」


 道人はスマホの時計を見ると朝の十時四十分だった。


「…十一時半からの二十分間だよ。デュラハン・パーク会社エリア内の一室だから、すぐに着くよ。」

「えっ?警察じゃなくて、パーク内に…?」

「…博士が今、実験エリアでルレンデスの検査を行なっててね。その検査のためにグルーナさんは警察じゃなくて、パーク内にいてもらう必要があるんだって。」

「なるほど、そっか…。」

「…後の詳しい事はグルーナさんが直接教えてくれるって。あっ、林檎…食べる?自分で食べるつもりでもあったし、もし道人が目を覚ましたら食べさせてあげようかと思って剥いてたの。はい、道人。あ〜ん。」

「えっ?いや、自分で持って食べるから…。」

「…駄目。私が食べさせてあげるから。はい、あ〜ん。」

「…わ、わかったよ。あ〜ん…。」


 道人は照れ臭く潤奈の剥いた林檎を食べた。


「…美味しい?」

「うん、美味しいよ。潤奈、林檎の皮剥き上手だね。」

「…ほんと?良かった!はい、あ〜ん。」


 潤奈は一体どこでこんな事を覚えたのか…?…愛歌(やつ)かっ!?愛歌(やつ)に違いない…!道人の脳内に愛歌(やつ)の面白おかしく笑む姿が容易に想像できる。


「…どうしたの、道人?あ〜ん、だよ?」

「あ、うん。潤奈も食べなよ。二人で一緒に食べよう。」


 二人で林檎を全て平らげた後、道人は普段着に着替えて車椅子に座った。その間に潤奈が道人が目を覚ました事を司令室に連絡した。


「潤奈、大丈夫?車椅子押せる?」

「…うん、大丈夫。押せるよ。」

「そっか。まだ時間あるし、ゆっくり行こう。」

「…うん。」


 道人と潤奈は病室を出る。ここは会社エリアのビル六階にある医療センター。最初のライガの闘いの時にも身体検査を受けた場所だ。グルーナは九階にある第三保管庫の一室にいるらしい。潤奈は道人と共にエレベーターに乗り、九階に着く。かなり厳重な場所だが、フリーパスのおかげで難なく入れた。


「それでは失礼します。」


 グルーナがいる保管庫から刑事三人が出てきた。道人と潤奈は軽くお辞儀をして通り過ぎる。潤奈は監視員にフリーパスを見せた後、使って第三保管庫の中に入った。


「ワオ!よく来たね、潤奈!ようこそ!歓迎するよぉ〜っ!道人君も目が覚めたんだね、良かった!」


 とても捕まっている人とは思えないテンションでグルーナは道人と潤奈を迎え入れた。室内はベッドや冷蔵庫などが置いてあって割と快適そうな空間になっている。スケッチブックや鉛筆、マネキンなども置いてあってまるで画家の作業場みたいだった。さすがにグルーナのいる保管庫への扉は関係者でも開閉厳禁となっている。


「どうも、グルーナさん。良かった、思ったよりエンジョイしてるようですね。」

「えぇ、昨日の経験が良いインスピレーションになってきてね!創作意欲がグルグルよ!」


 本当に拘束されてるのか、この人?ここはグルーナさんのアトリエだったか?と思いながらも道人は会話を続ける。


「何か不自由な事とかはありませんか?飲み物とか。」

「あぁ、大丈夫大丈夫。お風呂やお花を摘みに行く時とかは監視員さんに連れられてなら外に出てOKだから。」

「そうなんですか。この部屋からは条件付きなら出られるんですね。」

「…お花も摘みにいけるんだね。」

「うん、ファッションデザイナーさんだもんね。モチーフとかに必要なのかも。」

「あちゃ〜っ、青少年たちにはまだ意味がわからないかぁ〜っ…!若いねぇっ、ヤングだねぇ〜っ…!(>▽<)」


 グルーナは右手を額に当てながら上を見る。


「…?」


 道人と潤奈はグルーナの言っている意味がよくわからなかったが、とにかく話を続ける。


「あのさっき出て行った人たち、警察の方でしたよね?何か言われました?」

「ん?あぁ、大丈夫!御頭(おがしら)デパートの件だったけど、死傷者はいなかったし、損害も博士が修理ロボットで直してくれたから、それ程罪には問われないって話。」

「えっ!?本当ですか?」

「えぇ、ここの司令官さんが手回ししてくれてね。貴重なディサイド・デュラハンのパートナーだし、十糸(といと)姫の糸の使い手でもあるから、今後戦いに協力してくれるなら罪を軽くしてくれるって。」

「そうなんだ!良かったね、潤奈!」

「…うん!おめでとう、グルーナさん!」


 潤奈はその場で拍手する。なるほど、だから拘束している感じではないのか、と道人は納得した。


「任務の時にしか君たちとは一緒に行動できないけど、これからよろしくね!オーディエンスたち!」


 そうこう会話している内に監視員が面会終了を伝えに来た。


「あっ、それじゃあ、グルーナさん、また…。」

「…また来ますね、グルーナさん。」

「私、後で会議にもモニターで参加するからよろしくね!」


 道人と潤奈は第三格納庫を後にし、また厳重なセキュリティを通ってエレベーターに乗った。


「良かったね、潤奈。グルーナさん、それ程罪に問われなくってさ。」

「…うん、良かった。」

「さっき林檎食べたけど、お腹空いたなぁ〜っ…。もうお昼だし、ここの食堂で一緒にご飯食べようか?」

「…うん。お好み焼き、あるかな?」

「どうだろう?会社の食堂にあるのかなぁ…?」


 道人は潤奈がお好み焼きを気に入っているようで微笑ましかった。道人と潤奈は真っ直ぐ一階の食堂に行き、食券売機の前に立った。


「…あ、あったよ!デュラハンお好み焼き定食!」

「あるんだ…。じゃあ、僕はデュラハンハンバーグ定食を…。」


 潤奈は車椅子の道人を机の前に設置した後、食券を店員に渡し、戻ってくる。しばらく待つと店員から呼び出され、潤奈が取りに行く。二人分なので店員も気を遣ってくれて潤奈を手伝ってくれた。潤奈は道人の前に座った。


「「いただきます。」」


 道人は楽しそうにお好み焼きを食べる潤奈を眺めながら食べていたら、ふと聞きたい事が思い浮かんだ。


「そういえばさ、昨日僕がダジーラクに突撃した時…。」

「…うん?」


 潤奈はストローでウーロン茶を飲んでいる。


「潤奈、僕に何か言いかけなかった?ごめん、聞き取れなくって…。何を言いかけたの?私はあなたの、って…。」

「…!? げほっ、こほっ…!」

 

 潤奈が急に頬を染めたかと思ったら、咳き込み出した。


「だ、大丈夫か、潤奈!?しまった、ごめん…!言いづらい事だったのかな…?」

「…ひゃっ、ひゃい丈夫…!そんな事、ないよ…!あ、あれはね…!」

「うん。」

「あれは…。その、あなたの…事が…。わ、忘れちゃった…かな?うん!」


 潤奈は火照(ほて)った身体を急速に冷やすようにウーロン茶をストローで飲んだ。


「そ、そっか…。」


 潤奈がこんなに慌てたのは珍しい気がする。潤奈が言おうとしていた事を何となく察してしまい、道人も恥ずかしそうに飲み物を飲んだ。


「「はっ、はっはっはっ…!」」


 道人も潤奈もお互い慌てる姿が面白く見えたのか、二人で笑い合った。


「何やってんだ、お前ら?」


 急に現れた深也を見て道人と潤奈は驚き、硬直した。


「な、何でもない!何でもない!」

「…そ、そう!そう!」

「何でもあるような反応だな…。」

「うむ、実はな。道人が潤奈に…。」

「ジークヴァルは黙ってて!」「…ジークヴァルは黙ってて!」

「わ、わかった…。」


 ジークヴァルは二人の威圧に押されて黙る。


「…まぁ、いいか。司令が呼んでるぜ?この後、一時から会議始めるって。」

「そ、それをわざわざ伝えるために?」

「いや、俺の身体検査と妹の面倒をな。そのついでだ。飯、食い終わったんだろ?なら、行こうぜ。」

「…深也は食べないの?」

「俺はもうとっくに食い終わったよ。」


 深也は車椅子の道人を気遣って食べ終わった食器を潤奈と一緒に片付けてくれた。


「潤奈、車椅子は俺が押してやるよ。車椅子は妹で慣れてんだ。」

「…そう?じゃあ、お願いしようかな?」

「おう、任せな!おりゃぁっ!」

「おぉっ!?深也、ガタガタ!ガタガタ言ってるって!車輪が、椅子が!?」

「…ふふっ…!」


 三人は楽しそうに一緒に司令室へ向かった。

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