53章Side:愛歌 前編 荒ぶる箒の魔女
トワマリーは後ろに下がりながら、二つの鉄扇でしきりに叩いてくるダーバラを両手に持った小型リングで弾いていた。愛歌もトワマリーのサポートのために走る。道人とジークヴァル、潤奈とフォンフェルからは大分離れてしまった。トワマリーは段々、戦島の外側へと追いやられていく。
「ダーバラの奴、トワマリーをこのまま攻めて海に落とす気だ…!そんな事、させないから!」
愛歌はデバイスからカードを出現させ、立ち止まる。
「トワマリー!今から空戦メインでダーバラと闘うよ!準備はいい?」
「何時でもOKだヨ、愛歌!」
愛歌はトワマリーに了承を得て、カードを読み込む。
「ヘッドチェンジ!ブルームウィッチ!」
『あなたは魔法を信じますか?』
「そりゃ、当っ然!」
『承認。』
トワマリーはまだヘッドがついていない状態で戦島から飛び降りる。
「何っ!?」
ダーバラは追撃をやめ、落ちたトワマリーを見るために下を覗く。ダーバラの下から何か高速で飛ぶものが空へと上昇して通り過ぎ、姿を現す。鋼鉄の箒の棒部分に横を向いて座り、大きな尖り帽を被ったヘッドを装着したトワマリーが姿を見せる。赤いドレスのような鎧と右肩からは大きな鞄を背負っている。
「へへーン!ブルームウィッチトワマリー、爆誕!」
「また一段と美しくなったじゃないか、トワマリー!汚しがいがあるさねぇっ!」
ダーバラも空を飛び、ムチをブルームウィッチトワマリーに向かって打つ。ブルームウィッチトワマリーは箒に跨がり、華麗に避けた。
「あたいも見せてやるよぉっ、まだあんたたちに見せてないヘッドをねぇっ!」
ダーバラは今付けているヘッドを外し、
頭にビーム発射口がついた鳥の顔を新たにつける。両手が羽の先に四連砲門がついた
羽になり、元々ついていた羽も鋼鉄化し、
足も鋼鉄の鳥の足に変わる。
「うわっ!?明らかに火力特化って感じで殺意増し増しじゃん…。」
愛歌はダーバラの変化した姿を見て右手を口に当てて青ざめる。
「そう、これがあたいの重砲撃美!遠距離攻撃の美しさに特化したあたいの自慢の姿さね!そら、フルバーストを喰らいなぁっ!」
ダーバラは頭と両腕の四連砲門からビームを発射、羽から鋼鉄の羽根をブルームウィッチトワマリーに向かって複数飛ばす。
「甘い、甘イ!よいっト!」
ブルームウィッチトワマリーは箒で動き回って回避する。縦にぐるっと回ったり、横に回転したりと多種多様な避け方を披露する。
「ちぃ〜っ、ちょこまかとぉっ〜…!」
「見た目は強そうだけど、当たらなければどうって事ないわね!あたし達も見せてあげる!ブルームウィッチの力をね!」
「よいしょっト!行っテ、箒針!」
ブルームウィッチトワマリーは少しジャンプし、箒の穂先を前に跨る。穂先から無数のトゲをダーバラに向かって飛ばす。ダーバラは一斉掃射態勢を解き、鉄扇を四つ展開して飛んでくる無数のトゲを防御する。鋼鉄の鳥足でもトゲを弾く。
「一見、火力特化に見えて防御も兼ね備える…!あたいの抜け目のない美しさを舐めるんじゃないよ!」
「何の!まだまだこれから、これからぁっ!」
ブルームウィッチトワマリーはダーバラの上空を飛び、鞄の中から星形、パンプキン、キャンディーの形をした爆弾を投下する。大量の爆発に襲われるダーバラ。複数の鉄扇じゃ防ぎ切れない。爆弾の投下が終わった後、ダーバラの周りを三周し、箒針をお見舞いする。ダーバラに無数のトゲが身体に刺さる。
「ぐっ…!?」
「追撃!行きなさイ、使い魔たチ!」
ブルームウィッチトワマリーは帽子から機械でできた鳩二羽、コウモリ二羽、黒猫二匹を出して、ダーバラに向かわせる。愛歌がデバイスで使い魔に指示を送る。機械鳩は飛び回ってクチバシや羽で、機械コウモリは超音波、機械黒猫は爪や尻尾で攻撃する。
「な、何だい、こいつらは!?えぇい、鬱陶しい!」
ダーバラはヤケになって全砲門一斉掃射するが、誰にも当たらない。黒猫がダーバラの鋼鉄の羽を噛み砕き始める。
「あ、あたいの美しい羽を…!?やめ…!?」
「どうよ?この多機能さ!さすが今日当たったレアヘッド!箱買いしてくれた大樹君には感謝しきれませんよ!」
愛歌は両手を腰に当てて胸を張り、有頂天になっていた。レイドルクとの闘いでランドレイクが見せたアクアバズーカの多機能さに憧れ、自分もそういうヘッドを欲していたので喜びようが凄い。
「あたいの美しい身体がボロボロに…!?許せない…!許せないよぉっ、お前たちぃぃぃぃぃ〜っ…!…よりによって、ダジーラク様の前でぇっ…!」
「もうブルームウィッチヘッドは時間切れが近いけど、このヘッドはラスト一分で発揮できる能力がある!それを今、見せてあげる!」
「任せテ、愛歌!出てきテ、ゴーレム!」
ブルームウィッチトワマリーの隣に暗雲が出現し、雲の中から巨大な岩でできた右手が姿を現す。
「ゴーレムのどこの部位が出てくるかは完全ランダム!今回は右手!そのままぁ〜っ…!」
愛歌はデバイスを左手に持ち替え、右腕をぐるぐる回す。ゴーレムの右腕はダーバラに向かって勢いよく拳を前に出す。ダーバラは向かってくるゴーレムの拳に一斉掃射するが、効果はなく、止まらない。
「く、来るなぁぁぁぁぁーっ!?」
「殴っちゃえぇっ!」
愛歌が右拳を前に出すとゴーレムの拳がダーバラに直撃。ダーバラは吹っ飛んで戦島の地面に叩き落とされた。ブルームウィッチトワマリーは時間切れになって落下する前に戦島に着地する。ブルームウィッチヘッドが解け、ダーバラに刺さった箒針も消える。
「よし、あたしたちの勝ちぃっ!さぁ、トワマリー!道人や潤奈たちを助けに行きましょ!」
「…待っテ、愛歌!まダ…!」
ダーバラはボロボロになりながらも立ち上がる。トワマリーは愛歌の前に立ち、警戒して四つの小型リングを周りに浮遊させる。
「…ふっふっ、さすがはあたいが認めたにっくきライバル…!やってくれたねぇっ…!」
「あなたのさっきのヘッド、火力は高かったし、防御も鉄扇や鉄爪で補えてたと思う。でも、火力を求め過ぎていて、あなたの本来の鳥型としての俊敏性が失われていた。そこをあたしたちは突いたんだよ。」
「…冷静な分析ありがとさん、言ってくれるじゃないか…!確かにあのヘッドはあたいが考案したものじゃない…。あれはダジーラク様があたいのために考えて、与えてくれたヘッドだ…。」
ダーバラは道人とジークヴァル相手に闘うダジーラクを見る。
「…あ、ご…ごめん。そんな大事な物をあたし、ケチつけちゃった…。駄目だ、あたし、すぐ調子に乗っちゃうからなぁーっ…。」
愛歌は申し訳なさそうに左手で後頭部を摩る。
「ははっ、あんた変わってるね…。あたいたちは敵同士なのに何を謝ってるのさ?変な奴…。」
ダーバラも愛歌が何故か謝罪をしてきたので調子が狂っていた。愛歌はさっきまで自分たちを殺そうとしてきた相手との会話なのに今は殺伐とした空気ではなくなっていて不思議に思った。
「…ねぇ、あたした…。」
「あたいはまだ負けてない…!あたいはダジーラク様のいる前で負ける訳にはいかないんだ…!ダジーラク様は今回、またヴァエンペラに新たな頭を授かった…!もう何度目だろう…?ダジーラク様は本当に凄いお方だ…!あのお方の出世はまるで自分の事のように嬉しく思う…!だが、ダジーラク様とあたいとじゃ到底釣り合わない…。あの方の美しさと強さはあたいの憧れなのさ…。」
「ダーバラ、あなタ、ひょっとしテ…。」
「言うな!あたいはダジーラク様の闘士であればそれでいいのだ…! …つい変な話をしてしまった。闘いの続きさね…!」
ダーバラは紫の邪悪な鳥の頭のヘッドパーツを出現させる。
「このヘッドもダジーラク様があたいにお与えになった最高、最速、最強のヘッド…!覚悟しろ、愛歌!トワマリー!」
ダーバラは邪悪な鳥の頭を装着すると苦しみ出した。
「ぐあぁっ…!?何の、ダジーラク様のためならばぁっ…これしきぃっ…!」
ダーバラから邪悪なオーラが溢れ出し、両手が剣になる。鳥の足の爪も鋭くなり、翼も巨大化して紫の炎を纏う。
「あたいはあの方のためならば、全てを懸けても構わない…!あたいはあの方に…愛を捧げる…!」
「…! 愛…?捧げル…?」
『初めまして、トワマリー様!私は…。』
『トワマリー様はこんな私を好きになって下さいました…!私はあなたに永遠の愛を捧げる…!』
『トワマリー、残念だよ…。私は君を…。』
「な、何…?今ノ…?私の、記憶なノ…?」
「あ、あたしも見えた…。何なの、今の…?トワマリー…?」
ダーバラの言葉を聞いて謎の光景が見え、取り乱すトワマリーと愛歌。二人の様子などお構い無しにダーバラは紫炎を揺らめかせて襲い掛かった。




