53章Side:深也 後編 天使のぬいぐるみ
「しゃあねぇっ!応戦だ、ランドレイク!」
深也とランドレイクに突如襲い掛かる謎の首無し戦士五人。五人の内の三人がトライデントを持っていて、三人同時に槍先を下に向けて落下してくるが、深也とランドレイクは後ろに下がって避ける。
「ありゃりゃっ、避けられちった!」
「大丈夫、大丈夫!任せて!」
続いてニ人が両手を手刀にし、水を纏わせる。
「何だ、ありゃ?」
「わからねぇが、わかる事がある…。この距離からの攻撃って事は…。」
「喰らえ、ソルワデス様直伝!水の刃!」
謎の首無し戦士二人は両手を上に上げた後、勢いよく罰の字に両手を下ろすと水の刃が四つが深也とランドレイク目掛けて飛んでいく。
「遠距離攻撃って事ですかい!」
深也は右、ランドレイクは左に跳んで地面に倒れて避ける。深也たちを通り過ぎた水の刃はブランコの鎖や街灯を切断し、落下させる。
「何て切れ味だ…!?」
「当たったらお陀仏だぜ、ありゃぁっ!?船長、ヘッドチェン…ぐっ…!?」
「ランドレイク!?」
ランドレイクの身体全体に電流が走り、胸の顔を押さえてしゃがんだ。レイドルクとの闘いのダメージが響いている。
「だ、大丈夫でさぁっ、船長…!早くヘッドチェンジを…!」
「後、ヘッドチェンジは一回…!一回で奴らを倒すには…!」
深也は急いでデバイスを操作し、手持ちヘッドの確認をする。
「攻防一体のこいつに賭ける!ダブルトライデント!」
深也はダブルトライデントのカードを出現させ、デバイスにカードスラッシュする。
『あなたの向かう先に二つの選択肢があります。あなたはどっちを選びますか?』
「だから、どっちも捨てねぇって!」
『欲張り』
「今は欲張りが必要な時なんだよ!」
深也は音声認識ボイスと会話してもしょうがないとわかってはいても会話する。ランドレイクに両耳が尖った新たな頭パーツが装着され、両手にトライデントを持つ。
「おし!テメェら、そこへ直れ!全員まとめて刺身にしてやらぁっ!」
ランドレイクはダブルトライデントを持った両手を回転させながら、謎の首無し戦士五人に向かって突撃する。ランドレイクから離れる五人。
「おっと!やれやれ、血の気が多くて乱暴な奴らだな。」
「おい!お前らは何者だっ!?バドスン・アータスじゃねぇのかっ!?」
深也は謎の首無し戦士の一人に問うた。
「違うよ、違う。ボクらは…『キャルベン』。今はそれしか言えないな。」
「キャルベン…?」
深也は何だそりゃ、と顔を顰める。
「今日目が覚めたばかりなんだ。傍迷惑な目覚ましのせいでね。おかげで機嫌が悪い。君らで憂さ晴らしするね。」
「うるせぇっ!憂さ晴らししたいのはこっちの方だぜ!俺たちの魂を震わせる闘いを邪魔しやがって…!挙句にてめぇらみたいな得体の知れない奴らと戦うはめになってよぉっ!」
「そりゃ、ご愁傷様。」
深也と会話していたキャルベンの戦士は深也と関わるのはやめて、ランドレイクの方に向かう。キャルベンの戦士二人は水の刃を飛ばすがダブルトライデントランドレイクの回転するダブルトライデントで弾かれた。
「うわっ、水の刃弾かれるよ。どうしよう。」
「よし、威力を増すぞ。変形だ。」
二人のキャルベンの戦士はジャンプし、二足歩行の両足から人魚の足ヒレに変えた。
「何っ!?」
二人のキャルベンの戦士は海に飛び込んだ後、海上に姿を現し、両腕に海水を纏わせた。
「あれは…!?やばい…!?そこから離れろ、ランドレイク!」
「もう遅いよ!喰らえ、水の大太刀!」
両手を上に上げた後、勢いよく罰の字に両手を下ろすと今度はさっきよりも巨大な水の刃が四つランドレイク目掛けて飛んでいく。
「で…でけぇし、速ぇっ!?ぐっ…!?」
ダブルトライデントランドレイクは直撃を避けるために横に少し駆け、トライデントを持った回転する両手を向かってくる水の刃の方に伸ばし、四つの水の刃を何とか防ぐ。が、びしょ濡れになり、左手に持ったトライデントは水の刃に斬られ、ただの棒になった。
「よし、いいぞ!続けてもう四発!」
「何っ!?即撃ちできるだと!?」
「ボクらは水中戦でこそ、真価を発揮するんだ。水があれば弾数は無限さ。それっ!」
「あっ…!?くっ…!」
ランドレイクは走る先に倒れているレイドルクがいるのに気づく。
「手間の掛かる爺さんだ…!」
ランドレイクはダブルトライデントを捨ててレイドルクを両手で持ち、共に茂みに飛び込んだ。深也もさっき置いた手荷物を取り、同じく茂みに飛び込む。四つの水の大太刀は弾け、公園に雨を降らす。
「はっはっはっ!圧倒的じゃないか、ボクら!気持ちいーなー!」
ダブルトライデントランドレイクは時間切れになり、元のランドレイクに戻ってしまった。
「おい、てめぇら!人魚騎士伝説って知ってるか!?」
深也は自分の位置を特定されないために一箇所に留まらずに茂みの中を動き回る事にした。ランドレイクはもうヘッドチェンジが使えない。ランドレイクから目を離させる必要があるし、少しでも打開策を考る時間が欲しい、それらを考慮してキャルベンの戦士たちと会話する事にした。
「何それ?」
「ねぇ、ひょっとして人魚騎士ミオンの事を聞きたいんじゃない?」
「…あ、そっか。それだね。」
「その裏切り者ってのは何だっ!?海音が何をしたって言うんだっ!?」
「人魚騎士ミオンは高い位にいながら、何故かリーダーたちを裏切ったんだよ。リーダーたちが地球に実験兵器の巨大クラーケンを送ったのがそんなに気に入らなかったのかね?裕福な暮らしを約束されてたのに勿体ない事したよ、あの馬鹿女。」
「…は?おい…。」
深也の頭に色んな事を全力で楽しむ海音の姿が浮かんだ。深也が手に持っている荷物の中が光り出す。
「今頃ひもじい貧乏生活送ってんじゃない?きっと後悔してんだろうな、自分の愚かな行いにさ!はっはっはっ…!」
「…てめぇら、勝手に…!」
「は?」
深也は怒りを我慢できず、茂みから出てくる。
「勝手にお前らの頭ん中で、海音を不幸だと決めつけてんじゃねぇーっ!!」
キャルベンの戦士たちは深也の眼力にびくっと身体を震わせる。
「俺も命を助けてもらって、たった一日の付き合いしかねぇが!あいつは料理も!買い物も!町内大会も!車の中も!俺が思いつく出来事じゃ、全部楽しそうに笑ってたぜ!あいつは人質にされた俺の仲間の代わりにもなろうとした勇敢な女だ!正体が人魚騎士だって言うんなら納得だぜ!」
「なっ…!?」
「そんな誇り高さを持った海音を侮辱するてめぇらを、俺は絶てぇ許さねぇからなぁっ!」
「そうかい、お前の許しなんていらないよ!間抜けぇっ!」
キャルベンの戦士の一人がトライデントを投げた。その時、深也の目の前に天使のぬいぐるみが出現し、トライデントを空中で静止させてそのまま落とす。
「何っ!?」
深也が青い光に包まれ、十糸姫が出現する。
「と、十糸姫だと!?何でこいつを…!?」
「あんた…?」
十糸姫は深也を見て頷き、天使のぬいぐるみの中から青い糸とデュラハン・ハートが出てきてストラップになり、深也のスマホについた。十糸姫は姿を消す。
「…そうか。稲穂の奴、健康祈願になりそうな物をたくさん入れたって…。 …ははっ、マジかよ…。おい、稲穂、芽依…。こいつは確かに御利益のある…。」
深也は右手に持ったスマホデバイスを左肩の前に配置する。
「最高のお守りだぜ…!」
スマホから青い光の玉が出現し、人型の姿に変わる。大きな二つの板がついたタンクジェットを背負った鯱をモチーフにしたデュエル・デュラハン。その名を
「オルカダイバー、見参!」
「何だ、こいつは!?」
「リアクションありが…とうっ!」
オルカダイバーは右手に銃を持ち、銃口から水でできた鯱を発射。鯱がキャルベンの戦士の一人を噛み砕き、機能停止させた。
「何だと!?」
「や、やるなぁっ、あいつ!俺も負けてられねぇっ!」
ランドレイクは茂みに隠れてオルカダイバーの戦いを見ている。
「深也、まさかこうして現実世界で君と会えるとはね。僕は超感激してるよ!嬉しい!」
「お、お前そんなキャラだったのか…。ステータス画面と印象違うな…。」
「何をごちゃごちゃ言ってる!仲間の仇ぃっ!」
海にいた二人のキャルベン戦士は両腕を海水につけ、水の大太刀の準備をする。
「喰ら…何っ!?」
少し目を逸らした隙にオルカダイバーと深也はいなくなっていた。
「ど、どこへ行った!?」
「こっちだよ。」
オルカダイバーは背中につけていた板二つをジェットホバーボードに変形させ、深也に乗せていた。深也は波乗りをして動き回る。
「悪いな。今からこの海は俺らの領域だ。出て行ってもらうぜ。」
「貴様…!」
「待て、もう一人はどこに!?」
「オルカダイバー、戦術プランAだ!」
「OK。深也が地区大会で最も得意とした戦術だ。」
オルカダイバーは海の中から姿を現し、宙に浮く。射撃ダメージ増加ヘッドを装着していて、キャノン砲の持ち手にタンクに繋がるケーブルを接続する。キャノン砲についたフォアエンドをショットガンのように三回動かした。
「何か知らんが、まずそうなのは確かだ!打ち落とせ!」
「させねぇよ。」
深也は片方のキャルベンの戦士に接近し、ジェットホバーボードの先と尾にブレードを出現させ、駒のように回転してキャルベンの戦士の両腕を切り裂いた。
「ぐあっ!?ボクの腕が…!?」
もう一人のキャルベンの戦士はオルカダイバーに水の大太刀を放つがオルカダイバーは巧みにジェット噴射を使って華麗に避けた。
「調合完了!喰らえ、オルカキャノン!」
オルカダイバーはキャノン砲から電撃を調合された水のオルカを発射する。深也は公園に戻り、着地する。
「ぐがあぁぁぁぁぁーっ!?」
水のオルカが海面に当たると二人のキャルベンの戦士は電撃に襲われ、感電して黒焦げになった。深也はジェットホバーボードを宙に投げる。オルカダイバーが深也の隣りに着地すると同時にジェットホバーボードは分離し、オルカダイバーの背中に戻った。
「船長、オルカダイバー、すげぇぜ!何つーコンビネーション!」
「ふん、やりおるわ…。」
ランドレイクが肩を貸して目を覚ましたレイドルクを連れて深也とオルカダイバーの近くに来た。
「さて、残り二人。どうする?」
「…は?二人?何の事だい?」
「何の事だい?」「何の事だい?」「何の事だい?」「何の事だい?」
「…な、何じゃ、こりゃっ…。」
ランドレイクは驚きを隠せなかった。周りに突然キャルベンの戦士が十、二十、三十とどんどん集まってくる。深也たちは周りを囲まれた。
「こいつら、一体…?」
「驚いた?絶望した?ボクらは量産型でたくさんいるんだよ。もう勝ち目ないよ?」
「…くっくっくっ…!」
「…かっかっかっ…!」
深也とレイドルクが共に笑い出す。レイドルクはランドレイクから離れ、一人で立ち上がる。
「な、何だよ?何がおかしんだよ?」
「いやぁっ、悪ぃ悪ぃ…!まだこんなにぶっ飛ばせるんだな、って思ってよぉっ…!」
深也の殺意剥き出しの目に一瞬恐怖する量産型キャルベン戦士たち。
「かっかっ!その通りよ!よくもわしらの闘いを邪魔してくれたのう…!…ただで済むと思うなよ…?」
「おぉっ、怖!同情はしないぜ、あんたら。俺もテメェらをぶちのめしたいからよぉっ!爺さん、怪我人なんだから、無茶すんなよ?」
「たわけが!お前ももうヘッドチェンジが使えんじゃろうが!わしと改めて闘う前に死んだら許さんぞ!」
「…何かすごい武闘派な方々だなぁっ…。」
オルカダイバーは一人、このノリについていけずにいた。
「おらぁっ!全員蹴散らしてやるぜぇっ!覚悟しろよぉっ、てめぇらぁぁぁぁぁーっ!!」
深也たちは前進し、量産型キャルベン戦士の群れに突っ込んだ。戦島から巨大な光の柱が立ったが、深也たちは気にしなかった。




