325章Side:潤奈fin 六つ首のシャクヤス!オーバーディサイドVSネガ・ディサイド
「…ハッハァッ…!」
迫り来る六つ首のシャクヤスは六本の首の口からそれぞれ火・水・風・雷・氷・闇を吐き出した。
「散開!」
シュヴァルティアフォンフェル弐式がそう叫ぶとデュラハンたちは散らばり、六つ首のシャクヤスの放射攻撃から距離を取った。
「…どれ、どの人形から手に取ってやろうか…!」
六つ首のシャクヤスは四本の腕を伸ばし、シュヴァルティアフォンフェル弐式たちに向かって手を伸ばす。
「…させないからっ!」
潤奈がそう言うとシュヴァルティアフォンフェル弐式は三体に分身し、フォンフェル【夢幻】、シャドーマスターフォンフェル【朧】、イノセンスフォンフェル、シャドーアヤメの四体で六つ首のシャクヤスの注意を他のデュラハンたちから逸らした。
「ぐ…あぁっ…!?」
「…ひ、ひぃっ…!?」
「う、うわぁっ…!?」
六つ首のシャクヤスから急に悲鳴が聞こえて来た。
「…な、何…?声が…?」
潤奈が急に聞こえ出した悲鳴に怯える中、シュヴァルティアフォンフェル弐式は右手に持った可変型巨大手裏剣で六つ首のシャクヤスの右腕の一本を切り裂きながら飛翔し、上がり切ったら可変型巨大手裏剣を投げた。
可変型巨大手裏剣からヴィーヴィルの幻影が出現し、蛇のように六つ首のシャクヤスの右腕に巻き付く。
「…まさか、強制的にディサイドさせられた人たちの悲鳴なの…!?」
「何たる非道…!」
連れ去られ、水晶化された人たちの中には子供や赤ん坊、老人もいる。
そんな人たちから、パートナーでもない人たちから無理矢理ディサイドの力を引き出すというのは一体どんな副作用などのデメリットが起こるかはわからないが、何度もやらせていいものではない事は聞こえて来る悲鳴でわかる。
「…何としても、一刻も早くネガ・ディサイドを解除させないと…!」
「えぇ、必ず!」
潤奈の決心を聞いたシュヴァルティアフォンフェル弐式のオーバーディサイドは高まり、分身体と共に六つ首のシャクヤスにすれ違いざまの連続斬撃を繰り出す。
フィールドトラッカーは水流を、キルバは盾からビームを、グゲンダルとキャルベンの兵士たちは水の太刀を放ってシュヴァルティアフォンフェル弐式を援護する。
「…ふん、鬱陶しい…!」
六つ首のシャクヤスは火・水・雷・氷の剣を作り出し、四本の手に持って振り回し始めた。
雷と水の剣を逆手に持ち、地面にザクザクと連続突きを繰り出す。
四本の足で地面を何度も踏み付ける。
「…痺れろ、魚人共…!」
六つ首のシャクヤスは水と雷の剣を解除し、地面を水浸しにした上に電流を走らせた。
「おわぁっ!?」
「お、お前ら…!?」
地上にいたグゲンダルたちは電気ショックに襲われた。
フィールドトラッカーはバリアを張り、近くにいたキャルベンの兵士一体は電気ショックから守られた。
「…消えろ…!」
六つ首のシャクヤスが首の一つから炎を吐くと四体のキャルベンの兵士たちが消滅し、グゲンダルと兵士が一人残った。
「野郎、ざけた真似を…!」
巨体のグゲンダルは電流を耐え、生き残った兵士を右肩に担いで六つ首のシャクヤスから距離を取る。
六つ首のシャクヤスは他の剣を振り回しながら水と雷の剣を作り直した。
「…グゲンダル、大丈夫!?」
分身で戦っている最中のシュヴァルティアフォンフェル弐式から潤奈の心配の声が聞こえて来た。
「あぁ、何とかな…!だが、このまま地上にいると足を引っ張っちまうな…!」
「私と合体しましょう、グゲンダル隊員。」
フィールドトラッカーの申し出を聞いたグゲンダルはきょとんとしていた。
「な、何?できんのか?オレとも合体?」
「はい、アディション・デュラハンたちはヘッドチェンジが出来なくなったデュラハンをサポートできるように作られています!キャルベンのデュラハンでも理論上は可能なはずです!」
流咲がグゲンダルにアディション・デュラハンに関する解説を通信越しで聞かせた。
「確かにお前のバリア機能とホバー移動は魅力的だ…!よし、頼めるか?」
「はい。流咲隊員、合体シグナルをお願いします!」
「了解です!フィールドトラッカー!アディショォォォーーーン…!」
流咲は一旦息を整え、静かになった。
「…ユナイトォッ!」
「承認確認。これよりアディション・ユナイトを実行。さぁ、盛り上げていきましょう!」
グゲンダルの背後に回ったフィールドトラッカーは全身をバラバラにし、グゲンダルに追加パーツを装着していく。
グゲンダルは巨体な方なのでフィールドトラッカーのパーツは装着されるとバランスが良かった。
「よし!フィールドグゲンダル、ってところか!おい、兵!オレに乗っかれ!」
「よ、良いのですか?」
「気にすんな!奴を対抗できるんだったら無礼講ってやつだ!そこは理解!」
キャルベンの兵士はフィールドグゲンダルにおぶられる形となった。
フィールドグゲンダルはホバー移動で六つ首のシャクヤスに水流を放った。
「オレらの放つ水流でお前は水の太刀を連射すればいい!」
「わ、わかりました!」
キャルベンの兵士はフィールドグゲンダルの言う通り水流を利用し、水の太刀を連射した。
「潤奈、フォンフェル!オレたちの中で一番戦闘力が高いのはお前らだ!頼んだぜ?」
「…グゲンダル…。」
「奴はさっき装置を試すと言っていた。つまり、まだシステムは完全ではないという事だ。君にとって今はまだ奴が倒せない敵だという事はわかっている。だが、そこを突く事ができれば奴を撤退までには追い込めるはずだ。」
「…キルバ…。」
キャルベンとレング・ザ・ダイのデュラハンたちの言葉が潤奈に勇気を与えてくれた。
その強き感情はディサイドとなり、シュヴァルティアフォンフェル弐式の力となる。
「良いものですね、仲間というのは…。」
シュヴァルティアフォンフェル弐式は前世で最期まで一緒に戦ってくれた仲間たちの事を思い出していた。
シュヴァルティアフォンフェル弐式と一体化している潤奈にもその温かな気持ちが伝わって来て、オーバーディサイドの力は高まる。
「…シャクヤス…ううん、ヴァエンペラ…!そんな無理矢理引き出したディサイドよりも私たちの心が生み出す無限大のディサイドの方が強いって事、わからせてあげる…!」
「…くくっ、今度は逃げるなよ、小娘…?」
六つ首のシャクヤスの挑発は今の潤奈には通用しない。
シュヴァルティアフォンフェル弐式は自分の左右に可変型巨大手裏剣を配置させる。
「…行くよ、フォンフェル!纏って、ビーストの装い!」
潤奈がそう叫ぶとシュヴァルティアフォンフェル弐式の背後にO/Rヴィーヴィルが出現し、頭は変えずに合体した。
「…いざ、参る!」
フィールドグゲンダルやキルバが援護してくれる中、シュヴァルティアフォンフェル弐式は分身三体とシャドーアヤメと共に六つ首のシャクヤスへと襲い掛かる。
六つ首のシャクヤスは周りに火などを撒き散らしながらがむしゃらに剣を振り回す。
三本の長い首もぐねらせて攻撃に使って来るが、シュヴァルティアフォンフェル弐式たちの素早い動きには当たらない。
「今のオレたちの水力ならぁっ!」
フィールドグゲンダルはバリアを展開し、ホバーで力強く突き進みながら六つ首のシャクヤスの出す炎に狙いを絞ってキャルベンの兵士と共に水流と水の太刀を放つ。
「オレのボルトを喰らえぇっ!」
フィールドグゲンダルは宙に浮いたボルトを飛ばし、六つ首のシャクヤスの装甲の薄そうな部分を高速回転するボルトで削る。
四本足となった六つ首のシャクヤスは足が一つでもなくなればバランスを崩すはずだ。
「手裏剣乱舞、行けぇっ!」
フォンフェルの分身三体とシャドーアヤメは己の持ち得る手裏剣を全て投げた。
シュヴァルティアフォンフェル弐式は虹色に輝く紫マフラーを振り回しながら周りの火や水などを掻き消しながら右手の折り畳みブレードを展開して六つ首のシャクヤスの胴体の顔を斬った。
続けて左手の折り畳みブレードを展開し、胸の竜の顔からブレスを放ちながらアッパー攻撃を繰り出した。
「…例え倒せなくても…!想いが伝われば…!初樹!聞こえてる、初樹?」
潤奈は六つ首のシャクヤスの三つの内の人格の一つ、手科に語り掛ける事にした。
その間にシュヴァルティアフォンフェル弐式は両手でキャッチした可変型巨大手裏剣を剣に変えて六つ首のシャクヤスの首の一つを斬り刻む。
「…惑星ラーデルクが襲撃された日、あなたは私を捜してくれてたんだよね?自分の身を顧みずに…。」
シュヴァルティアフォンフェル弐式は可変型巨大手裏剣を投げた後に後ろに跳び、他の分身体のフォンフェルたちが投げた手裏剣をキャッチして投げ直す。
キルバも追尾式の槍で周りを飛び回る手裏剣の軌道修正をしてくれていた。
「…心配してくれて、助けようとしてありがとう…!でも、もう大丈夫…!私はここにいるから…!ラーデルクから脱出できてここにいるから…!あなたの故郷である地球に…!」
「…ふん、無駄な事を…。」
六つ首のシャクヤスは雷の剣をわざと砕き、周りに固体化した雷の破片を散らして攻撃した。
すぐに雷の剣を作り直す。
「…ううん、無駄なんかじゃない…!ディサイドの可能性は無限大…!私たちが諦めない限り、ディサイドはずっと力を与えてくれる…!」
「…くくっ、それはネガ・ディサイドも同じ事よ…。」
六つ首のシャクヤスは自分の剣を壊しては直しを繰り返し、周りに火の粉や電流、水飛沫を撒き散らす。
「…ううん、同じじゃない!」
「…同じだ…。…人間はマイナス感情の方が強いからな…。…すぐに乾くのだよ、温かな親切心などという下らぬものなどはな…!…お前だってそうであろう…?…悲しき人生を歩んだ小娘共よ…!」
六つ首のシャクヤスは火と雷の剣を合体させてハサミのようにし、シュヴァルティアフォンフェル弐式を黙らせようとする。
シュヴァルティアフォンフェル弐式は羽を大きく広げ、胸の竜の顔からブレスを吐きながら上昇して避ける。
「…確かに一時期、私は一人っきりで星から星を渡り歩いた…!あなたのせいで…!そこにはマイナスな感情も確かにあった…!でも、私はここまで辿り着けた…!豪たちから…初樹、あなたから聞かされた青き星、地球の事を!」
「…ジュン、ナ…?」
その時、水を放出する六つ首のシャクヤスだけ攻撃が止まった。
「…初樹、私…この地球でたくさんの良い人たちに出会えた…!豪や初樹の言う通り、地球は素敵な星だった…!フォンフェルとも出会えて、友達もたくさんできた…!お父さんとお母さんとも思わぬ形で再会できた…!」
潤奈の言葉に呼応し、シュヴァルティアフォンフェル弐式は身体から発するオーラを強めていく。
「…恋も、した…!」
潤奈はつい道人の笑顔を思い出してしまい、説得中だというのに恥ずかしさが込み上げて来てしまったので調子を整え直した。
「…初樹、私たちは必ず豪もあなたも、捕われた人たち全員を助け出してみせる…!もし、助け出せたら…あなたの得意な手品を私の大事な人たちにも披露してあげて…!」
「ジュ、ジュンナ…!そこに、いたんだな…。無事で、良かった…。」
六つ首のシャクヤスの水を放つ首の一つが手科の人格になったようだ。
水を放つ首の一つはまるで目から涙を流しているようだった。
「地球…帰りたい…。私、帰りたい…!」
「た、助けてくれぇっ…!」
「…むっ…!?」
六つ首のシャクヤスの背中の二本の首にも変化が起きた。
どうやら無理矢理ディサイドさせた人たちの意思が表に出たようだった。
「ヴァエンペラ様、このままではネガ・ディサイドが…!」
Dレボリューションの焦りの声が六つ首のシャクヤスから聞こえて来た。
「…まさか、たった一人の小娘の声が我がネガ・ディサイドに影響を与えただと…?」
「どる!」
六つ首のシャクヤスの足元から空間が発生し、中から謎の物体が出て来た。
「…? 何だ、あのチビ?」
グゲンダルが突然現れた謎の物体に不思議がり、シュヴァルティアフォンフェル弐式たちも同じく不思議がる。
謎の物体はツインテールのような髪で頭を二つ抱えていた。
「…お前たちもやられたのか…。…くくっ、素晴らしい…!…力強くもあれば恐ろしくもある…!…やはり面白いなぁっ、ディサイドというのは…!」
六つ首のシャクヤスはそう言うと小さくなり、元のシャクヤスに戻って謎の物体を抱え、頭を変えた。
背後に縦長の箱が出現した。
「…ネガ・ディサイドに関する良いデータが取れた…。…今日は退散するとしよう…。」
「それではご機嫌よぉ〜っ…!」
シャクヤスはヴァエンペラの人格から元に戻り、箱の中に入ろうとする。
シャクヤスは謎の物体三体をジャグリングし始めた。
「…! 待ちやがれ!」
グゲンダルが叫ぶと同時にボルトと水流を飛ばし、シャクヤスを攻撃した。
「おっと。」
「どる!?」
シャクヤスがボルトと水流を避けている最中に謎の物体の一つが地面に落ちた。
シャクヤスは箱の中に入り、すぐに箱は消えた。
「…いいよ、グゲンダル。もし、シャクヤスがヒューマン・デュラハンと同じ仕様なら今は倒せないから…。撤退させただけよしとしよう…。」
シュヴァルティアフォンフェル弐式がグゲンダルの近くに着地し、潤奈はグゲンダルに話し掛けた。
シャクヤスが帰ったため、キルバは盾を回収して周りの背景を実験エリアの外に戻した。
「どるぅ〜っ…!」
置いてけぼりにされた謎の物体は悲しそうに走り去って行った。
「あ、置いてけぼりにされた奴が何か逃げた。おい、一応追いかけとけ!」
「はっ!」
グゲンダルの命令を聞いたキャルベンの兵士は謎の物体を追いかけて行った。
「…初樹だけじゃなく、水晶化された人たちにも私の言葉は届いたみたいだった…。なら、またヴァエンペラがネガ・ディサイドを使って来たとしても私は諦めず、何度だって語り掛けてみせるよ…!」
「はい、その意気です、潤奈…!」
「…まずはクリスタルネガ・ディサイドシステムの事をみんなに話して今後の対策を練らないとね…。道人たち、大丈夫かな…?」
シュヴァルティアフォンフェル弐式は実験エリアのビルの方を見て、潤奈はガイアヘッドと今も戦っている道人たちの身を案じた。




