325章Side:潤奈③ 起動!クリスタルネガ・ディサイドシステム
「…手裏剣に纏うはアヤメ、舞うが蝶が如く!」
シュヴァルティアフォンフェル弐式が投げた巨大可変型手裏剣は蝶型に変形し、無数のアヤメを投影した。
「続けて!」
シュヴァルティアフォンフェル弐式はもう一つの巨大可変型手裏剣を出現させ、投げた。
「…手裏剣に纏うはヴィーヴィル!荒々しく吠える黒き飛翔!」
巨大可変型手裏剣は四枚刃から八枚刃となり、ヴィーヴィルの姿が投影された。
ヴィーヴィルが吠えると超音波が発生する。
「…ほう、心地良い不協和音だ…。…なるほど、味方と識別した者には効き目がないのか…。…よくできている…。」
オーバーディサイドしたシュヴァルティアフォンフェル弐式を前とした三つ首のシャクヤスには余裕が見られた。
もし、ヒューマン・デュラハンと同じ仕様ならシャクヤスを倒したら手科も死ぬ恐れがある。そこから来る余裕なのかもしれないと潤奈は考えた。
現にシュヴァルティアフォンフェル弐式はそれでどうしても攻めあぐねてしまうところがある。
しかし、オーバーディサイドは制限時間がない究極の姿。思考できる時間には余裕がある。
三つ首のシャクヤスは自分の周りを飛んでいる巨大可変型手裏剣を撃ち落とそうと左肩の仮面の鳥の口から竜巻を連射しながらアヤメの斬撃とヴィーヴィルの爪撃を避ける。
「避ける暇を与えん!」
キルバは宙に舞う追尾式の二本の槍を飛ばし、巨大可変型手裏剣と共に舞わせた。
三つ首のシャクヤスが竜巻で撃ち落とそうとする巨大可変型手裏剣の軌道を追尾式の槍で無理矢理方向転換させてサポートもしてくれた。
「オラ、ボルトもくれてやらぁっ!」
「こちらも援護します。」
グゲンダルはボルトを、フィールドトラッカーは他のデュラハンたちの投擲武器に当たらないように計算し、水流を放った。
「よし、フィールドトラッカー殿の水を使って我らも水の太刀を放つ!ソルワデス様直伝の技、奴に見せてやろう!」
五人のキャルベンの兵士たちもフィールドトラッカーが放って水流でできた地面の水溜まりや水流を利用して水の太刀を三つ首のシャクヤスに対して放つ。
「これだけ足場となるものがあれば!」
シュヴァルティアフォンフェル弐式は宙を舞う大型可変型手裏剣やボルト、槍を何度も蹴り駆けながら高速移動し、分身し始める。
「潤奈!」
鎧姿の潤奈の幻影も出現し、槍を構える。
「…うん、分身体をそれぞれヘッドチェンジ!【夢幻】、シャドーマスター【朧】、イノセンス!」
潤奈がそう言うと分身体のフォンフェル弐式たちに新たなヘッドが装着された。
「…アヤメにシャドー!」
アヤメもヘッドチェンジし、シャドーアヤメに変化した。
「シュヴァルティアコンビネーション!」
フィールドトラッカーは水流を、キルバは槍を同タイミングで三つ首のシャクヤスに放って一瞬身動きを止めさせた。
その隙にフォンフェル【夢幻】は印を結んで竜巻を作り出し、三つ首のシャクヤスを竜巻の中に閉じ込めた。
「…ほう…!」
竜巻に閉じ込められた三つ首のシャクヤスに対し、幻影のフォンフェルたちはすれ違い様に斬撃を繰り出し、手裏剣やマフラー、ヴィーヴィルの幻影でも攻撃する。
「素晴らしいコンビネーション…!私顔負けの大道芸だぁ〜っ…!」
三つ首のシャクヤスは元のシャクヤスの人格に切り替わり、敵であるはずのシュヴァルティアフォンフェル弐式たちを讃えて来た。
「…滅ぼされた故郷に背を向けて逃げるだけだった小娘がよくぞここまで…!…これもディサイドによるものか…!」
「…っ!」
三つ首のシャクヤスはヴァエンペラの人格に切り替わり、褒めてるようで貶しているようでもある言葉を投げて来た。
少し憤った幻影の潤奈は竜巻の中の三つ首のシャクヤスに対し、槍の連続突きを繰り出す。
「…だが、まだオーバーディサイドの力に振り回され、うまく操れていないようにも見える…。」
「言ってろ!」
シュヴァルティアフォンフェル弐式は可変型巨大手裏剣の一つを自分の右足に装着し、ヴィーヴィルの幻影を纏わせた右足で飛び蹴りを繰り出した。
シュヴァルティアフォンフェル弐式は竜巻を突っ切り、三つ首のシャクヤスを地面に叩き付けた。
「そのまま喰らえ、ヴィーヴィル!」
地面に落下した三つ首のシャクヤスをヴィーヴィルの幻影が何度も噛みついてみせた。
「…ふん、オーバーディサイド相手ではもうこの姿では部が悪いか…。」
三つ首のシャクヤスはヴィーヴィルの幻影に噛み付かれながらも両手から黒い球体を作り出した。
ヴィーヴィルの幻影と黒い球体は相殺し合い、消滅した。
三つ首のシャクヤスは立ち上がり、後ろに下がる。
「おっと、せっかく地上に戻って来たんだ!まだいろよ!」
グゲンダルは宙に浮いたボルトを繋ぎ合わせて槍のようにし、三つ首のシャクヤスの元まで駆けた。
「…ふん、魚人の雑魚が…。」
三つ首のシャクヤスはグゲンダルのボルトを繋ぎ合わせた槍による攻撃と宙に浮いたボルトによる攻撃を避けるために後ろへと跳ねる。
「…Dレボリューション、聞こえるか…?…例の『クリスタルネガ・ディサイドシステム』を試す…。…場所が変わったが問題ないか…?」
ヴァエンペラはDレボリューションに通信をし始めた。
「ほう、シャクヤスのお身体でお試しに?」
「…構わん、こ奴らはなかなかにやるのでな…。…試すには遅いくらいだ…。」
「わかりました。大丈夫、問題ありませんよ。シャクヤスがいる座標に変化はありません。実験を兼ねてとりあえず三人分と行きましょうか。」
「…来い…!」
三つ首のシャクヤスは地面に着地し、天井を見上げた。
「…! みんな、気をつけて!シャクヤスは何かをする気だよ!」
「あいよ!」
潤奈がそう叫ぶとグゲンダルは深追いをやめ、後ろに下がった。
「…来い、ネガ・ディサイドの力よ…!…我に力を与えてみせよ…!」
三つ首のシャクヤスがそう言うと頭上から紫の光が降り注いだ。
降り注ぐ光と共に誰かが苦しむような声も聞こえ始める。
「…な、何?あの光は…?それに、この断末魔のような声は…?」
「ネガ・ディサイドだと…?」
潤奈とシュヴァルティアフォンフェル弐式は共にネガ・ディサイドと呼ばれる光に対して嫌悪感を抱いた。
「…くくっ、ヘッドチェンジ…!」
三つ首のシャクヤスは全身から邪悪なオーラを放って大きくなり、六つ首のシャクヤスとなった。
大きさとしてはディールマーシャルと同じ高さ、ビル二階分の大きさだった。
「な、何じゃありゃぁっ…!?」
グゲンダルが先に驚きの声を上げる。
六つ首のシャクヤスは両肩だけでなく、背中から三つの首の長い頭を生やしている。
腕は四本、足も四本足となり、悪魔のような羽も生えた。
「随分と禍々しく変わったものだな…。」
「いや、何でああなる!?何があった!?不理解!?」
キルバの感想に対し、グゲンダルが取り乱しながら突っ込みを入れた。
「…くくっ、傀魔怪堕で捕らえた水晶に閉じ込められた者たちがいただろう…?…奴らから無理矢理ディサイドの力を引き出し、シャクヤスのパートナー扱いである手科にそれを注ぎ込む…。…これでわしは擬似的にディサイドの力を得る事ができた…!…言わば、ネガ・ディサイド・デュラハン…!」
「…ネガ・ディサイド・デュラハン…!?」
「…人間の負の感情を無理矢理引き出し、それを主としたディサイド、なかなかに心地良い…!」
六つ首のシャクヤスのネガ・ディサイドの説明を聞かされた潤奈は驚愕と同時に憤りも感じるを得ず、ドス黒い感情に包まれた。
「…! 潤奈、しっかり!」
シュヴァルティアフォンフェル弐式は潤奈と一体化しているため、潤奈が今抱いている感情を共に共感する事ができた。
おかげで潤奈は心細い思いをせず、何とか平静を保とうとする。
「…ご、ごめん。大丈夫だよ、フォンフェル…!水晶化された人たちを連れ去って、こんな形で悪用するなんて…!」
「…驚いたであろう…?…最終決戦では水晶化された者たち全員からディサイドの力を吸い取るつもりだ…!」
「…なっ…!?」
かつて、ガイアのデュラハンと戦った程のヴァエンペラがそこから更に何人もの水晶化された人間たちからディサイドを無理矢理吸い上げたら一体どうなってしまうのか?
潤奈たちは恐れでもはや想像が尽かなかった。
「待って下さい!水晶化された人たちの中には子供や赤ん坊もいるはずです!」
「流咲隊員の懸念は最もです。あなたはそんな小さな命をも利用しようと言うのですか?」
流咲とフィールドトラッカーは六つ首のシャクヤスに問うた。
流咲は恐れで言葉が震えているのが通信越しでも伝わって来た。
「…くくっ、さぁて…?…知った事か…。…わしは地球が採掘星と化す日、『銀河侵食帝王神』となるだろう…!…お前たちにはその野望のための実験の贄となってもらおうか…!」
「…! 来るぞぉっ!!」
グゲンダルがシュヴァルティアフォンフェル弐式たちにそう叫んで警戒させると六つ首のシャクヤスはその巨体に似合わない速さで急接近して来た。




