325章Side:潤奈② 速攻のオーバーディサイド
「…どれ、こちらでも遊ぶとするか…。」
シャクヤスはそう言うと顔を装着し、右肩に仮面の竜面、左肩に仮面の鳥顔の長首が付いた三つ首のシャクヤスとなる。
「…あれが大樹やイジャネラさんの報告にあったシャクヤスの三つ首の姿…!」
「潤奈!」
「…うん!シャドースライド!」
三つ首のシャクヤスは火や氷などの強大な力を持つデュラハンだと聞いている。
潤奈はすぐに鎧を身に纏った。
「先手必勝!」
フォンフェル弐式は現れたり消えたりを繰り返し、三つ首のシャクヤスに一気に近づいて刀による横一閃と回し蹴りを繰り出した。
「そう言えば、貴様には借りがあったな…!」
大樹の家の近くでシャクヤスと初めて会った時、フォンフェルはハーライムと共に一緒に戦った事があった。
その時のフォンフェルはシャクヤスにやられ、ボロボロにされた。
潤奈にとっては苦い記憶だった。
「…くくっ、はて…?」
三つ首のシャクヤスはフォンフェル弐式の二段攻撃を避け、後ろに高く飛んで右肩の仮面の竜の口から火球を吐いた。
「この火球…!注意しろ!」
三つ首のシャクヤスの放つ火球は地面をも溶かす凄まじい熱量を持っている。
フォンフェル弐式は避けながら水のマフラーで火球を弱らせようとしたが、水のマフラーは蒸発してしまった。
「トラちゃん!」
「はい、パークに被弾させる訳にはいきません。」
流咲の声を聞いたフィールドトラッカーは自分の予備のヘッドを火球に向かって投げた後、二発の消火弾と三つの水流を発射。
予備のヘッドにはかなりの量の水が圧縮されているため、そこに消火弾と水流を合わせた事で何とか火球が実験エリアの建物に当たる前に消してみせた。
潤奈の近くに着地したフォンフェル弐式は水のマフラーを新たに作った。
「場所を変えるのは私の得意分野だ。」
キルバはそう言うと盾を回転させ、上空に投げた。
回転する盾は周りの風景を赤い壁の広い空間に変え始めた。
「レング・ザ・ダイの訓練所を投影した。ここでならパークへのダメージを気にせず、気兼ねなく戦えるだろう。」
「ほう、何という大道芸!やりますねぇ〜っ!同時に妬けますねぇ〜っ…!」
三つ首のシャクヤスの人格が急にヴァエンペラから元のシャクヤスの人格に切り替わった。
右肩の仮面の竜から火球、左肩の仮面の鳥から竜巻を投影している盾に向かって発射した。
「盾を狙っても無駄だ。」
キルバは宙に浮く槍二本で無理矢理投影している盾を移動させ、火球と竜巻から遠ざけた。
火球と竜巻が当たった天井はドロドロに溶けるのと同時に爪で何度も切り裂かれたような跡が付いた。
天井から火の粉が降って来る。
「ちっ、さすがに兵を全員は連れて来られねぇか…!」
グゲンダルの言う通り、キャルベンの兵士は十人しかこちらに来てなかった。
他のメンバーは元の空間に残され、引き続きパークの護衛に回る事となる。
「イジャネラ様から聞いた通り…!あの野郎、凄まじい攻撃力だ…!へっ、当たったら即死だろうな…!理解にして不理解…!」
強気なグゲンダルが珍しく弱気な発言をしていた。
それ程、あの三つ首のシャクヤスの有する戦闘能力は凄まじいものだと言う事だ。
「…くくっ、兵たちが恋しいか…?…どれ、早い再会をさせてやろうか…?」
三つ首のシャクヤスは右手を上に上げて何かをやろうとしていた。
「…! させない!フォンフェル!」
「御意!」
潤奈は羽を広げて空を飛び、フォンフェル弐式は潤奈が三つ首のシャクヤスに近づく前に水の手裏剣を投げた。
「トラちゃん、潤奈ちゃんを援護しましょう!」
「了解。」
フィールドトラッカーも三つ首のシャクヤスに対して三つの水流を発射した。
「…ほう…?」
三つ首のシャクヤスは右手を下げ、左肩の仮面の鳥から竜巻を連射して下がる。
大樹とカサエルの報告に三つ首のシャクヤスは右手を上に上げて黒い巨大な玉を作って攻撃しようとして来た、と書いてあったのを潤奈は思い出した。
「…ヴァエンペラ…!もうこれ以上、あなたに私の大事な人たちを殺させはしない…!絶対にぃっ…!」
潤奈は槍を構え、三つ首のシャクヤスに連続突きを繰り出す。
「ジュンナァッ…!私が見ない間に何て乱暴になったんだぁっ…!ジュンナァッ…!」
三つ首のシャクヤスはまるで潤奈を煽るように手科の人格に切り替わってオロオロしながら槍の連続突きを避け続ける。
「…初樹の声で遊ぶなぁっ!」
潤奈は横に一回転し、羽で三つ首のシャクヤスの体勢を崩した後、槍を突き出した。
三つ首のシャクヤスは槍を左手で掴んで止めてみせた。
「…くくっ、すまないな…!…この身体を使うとどうにも好戦的で愉快な気分になってしまう…!」
三つ首のシャクヤスは潤奈の槍を離さず、火球と竜巻を放とうとする。
「潤奈、槍への拘りは!」
「…捨てる!」
潤奈は槍を手放し、飛ぶのをやめて落下を利用して飛んで来た火球と竜巻を避けた。
「…この先の戦いは速攻性が大事になる…!だから…!」
潤奈は落ちながらデバイスを手に取り、カードを実体化させた。
「…ヘッドチェンジ!フロアクリーナーヘッド!」
『あなたは清廉潔白で居続ける心を持ち続けられますか?』
「…うん!」
『承認。』
フォンフェル弐式はフロアクリーナーフォンフェル弐式に姿を変え、潤奈の元に駆ける。
「潤奈!」
フロアクリーナーフォンフェル弐式は掃除機を三つ首のシャクヤスに向かってぶん投げた後、潤奈をお姫様抱っこで受け止めた。
三つ首のシャクヤスは向かって来た掃除機を容易く火球で溶かしてみせた。
「敢えてヘッドチェンジ一回分を犠牲にする判断…!思い切りの良い見事な決断です、潤奈…!」
「…道人や深也、真輝ならもっとうまくやれたのかもしれない…。けど、これで条件は満たしたから…!」
これでヘッドチェンジを一回した事になり、シュヴァルティアヘッドへの条件を満たせた。
今後はもっと効率の良い、コンボ性のあるヘッドカードを用意したい。
潤奈はそう思いながらもデバイスを輝かせた。
「…お願い、オーバーディサイド!」
『オーバーディサイド、解放。承認。』
フォンフェル弐式は潤奈を抱えたまま空高く上昇し、二人で見つめ合った。
「…ヘッドチェンジ!」
潤奈が横に猛回転すると形を一瞬で変え、シュヴァルティアヘッドになった。
「失われし我が前世の力!潤奈の力を借り受けて!再現を超え、今ここに新生する!頭着!!」
フォンフェル弐式はシュヴァルティアヘッドを頭に付け、シュヴァルティアフォンフェル弐式へと姿を変えた。
潤奈がすぐに鎧を纏える事を活かした速攻のオーバーディサイドだった。
シュヴァルティアフォンフェル弐式は地面に着地し、虹色に輝く紫のマフラーを田靡かせながら三つ首のシャクヤスを見上げた。
「…ほう、オーバーディサイドか…!…どれ、お手並みを拝見させてもらおうか…!」
「…拝見?できればな!」
シュヴァルティアフォンフェル弐式は巨大可変型手裏剣を出現させてすぐに投げ、両手に持った刀を交差させて三つ首のシャクヤスに対して跳び上がった。




