322章 ピーキーな頭 ネクストチャージヘッド
「さて、いよいよか…!」
道人たちは実験エリアに着いた後、ビル内に入ってもう慣れた迷路のような通路を歩いていた。
潤奈はパークの守りに付くため、ビルに入る前に道人たちと別れた。
「いた、深也たち!」
「海音さんたちもおるの。」
愛歌と大樹が先に広々とした大地フィールドに立っている深也とランドレイク、グルーナとルレンデス、ダーバラとディアス、海音とスラン、シルエット大将軍に気が付いた。
道人たちも通路を抜け、広い大地フィールドに出た。
「司令、お疲れ様です!」
「うむ、今は司令じゃないんだがな…。」
司令は敬礼したスタッフにそう言いながらも作戦の準備状況を聞き始めた。
「深也、グルーナさん、調子はどう?」
作戦開始までまだ四十分近くはある。道人は深也とグルーナに話をする事にした。
「おう、問題ないぜ?」
「まぁ、これからわざとデストロイの力を解放する訳だから問題発生するんだけどね。」
深也の返事に対してグルーナがツッコミを入れた。
「ランドレイクとルレンデスはどうだ?」
デバイス越しでジークヴァルもランドレイクとルレンデスに調子を尋ねた。
「さてな。俺たちは恐らく、暴走し出したら自分の意思じゃどうにもならなくなるだろうからな…。イルーダの嬢ちゃんの時がそうだった。」
「自分が自分じゃなくなるような感覚って言うの?それを踏まえると何だか怖いね、うん…。」
ランドレイクとルレンデスは不安な気持ちを素直に述べて来た。
「だいじょうぶ!またわたしたちがもどしてあげるから!」
「ふふっ…。頼もしいですね、スラン。」
「ぴーっ。」
スランとトワマリーは水縹星海岸での戦いで暴走したランドレイクを止められた経験がある。
張り切るスランに対し、海音とクラちゃんが微笑み掛けた。
「それと…聞いたよ。ダーバラとディアスは…難しいんだよね?ヴァエンペラの力を引き出すのは…。」
道人がダーバラとディアスに話し掛けると二人は何か困った様子を見せた。
「あぁ、あたいたちはどうもヴァエンペラが与えた力ってのが自覚できないんだよ。発揮のさせ方もわからない。」
「あぁ、全く感覚が掴めないな…。」
ダーバラとディアスはそう言いながら自分たちの両手を見ていた。
「ダーバラさんは愛歌さんとディサイドしたのに加えて、頭はイルーダが色々といじってますからね…。」
「そっか、それでダーバラの頭は結構浄化されちゃってるって感じか。」
「何だかあたいの頭がいじられたとか浄化だとか聞くとむず痒いねぇーっ…。」
海音と愛歌の言葉を聞いたダーバラは自分を抱きしめてぞっとしていた。
「じゃあ、ディアスも…。」
「あぁ、ダーバラの頭はディサイド後も形状が変わらないが、私は元々ヴァエンペラからもらった頭に警戒していたのと、塔馬とディサイドした際に形状が変わって回復してしまったからな…。それで消えたのかもしれない。」
道人もディアスに調子を聞いてみたが、わざとヴァエンペラの力を引き出すというのは難しいようだった。
「すまないな、協力できなくて…。」
「いや、気にする事ないぜ、ディアスの旦那。力そのものには善悪はないって言う大船長の考えは賛成だけどよ、ないならないで越した事はねぇとも俺は思うしよ。」
申し訳なさそうなディアスに対し、ランドレイクが励ましてくれた。
「ここは元デストロイ・デュラハンである事を活かせる俺たちに任せなって。な、ルレンデス?」
「まぁ、ここまで来たら何とかしてみせるしかないね。」
「やってやろうぜ、ランドレイク!」
「ちゃんとできたらハグしてあげるわよ、ハグ!」
覚悟を決めたランドレイクとルレンデスに対し、深也とグルーナはエールを送った。
グルーナは褒美を与える約束をしながらも既にルレンデスに抱きついていた。
「うーむ…。」
シルエット大将軍は会話には参加せずに一人唸っていた。
「どうしました?…潤奈のお父さん?」
「お義父さん?」
道人の呼び方に関してはシルエット大将軍は敏感で唸りをやめてすぐに反応した。
咄嗟に潤奈の、って付けたんだけどなぁ…と道人も困った。
「…ど、どうしました、シルエット大将軍…?」
道人はシルエット大将軍が発する殺気や警戒心に弱ってわざわざ呼び直した。
「いや、潤奈は大丈夫かとつい心配になってな…。」
潤奈は外の守りにつく事になったのでシルエット大将軍は父として心配していたようだ。
「ふふっ、大丈夫ですよ。フォンフェルやアディション・デュラハンやキャルベンたち、キルバだってついてるんですから。それに潤奈だってここまで戦って来られた強い子で、立派な俺たちの仲間なんですから。」
「そうか…そうだな。すまないな、どうも親として心配になってしまう…。」
シルエット大将軍は道人の言葉を聞いてリラックスできたようだった。
「仕方ないですよ。一度は離れ離れになっちゃったんですから…。心配するのは親として間違ってないと思います。だから、お気になさらずに…。」
「そうだな…。しかし、君は潤奈に対してなかなかの理解度や信頼感があるな。一体娘とはどこまで…?その引っ付いてる子も…。」
シルエット大将軍は道人の左腕にしがみ付いているユーラを気にして来た。
「まさか、その年で…いや…?」
「いや、勘弁して下さい…。」
「ふふっ、娘思いなお方ですね、シルエットさんは。」
道人はシルエット大将軍の親としての猜疑心に対してまた音を上げてしまった。
ユーラはシルエット大将軍の娘を思い遣る気持ちを見て楽しそうにしていた。
「あの、道人君たち。パートナーデュラハンたちへの意思データのインストールをお願いします。」
「あ、はい。わかりました。」
整備班のお姉さんが道人たちに話し掛けて来た。
道人、愛歌、大樹はそれぞれジークヴァル、トワマリー、カサエルの前に立ってデバイスを構えた。
「ジークヴァル!」
「トワマリー!」
「カサエル!」
「「「インストール!」」」
道人たちは一斉にデバイスからレーザーを発射し、ジークヴァルたちを起動させた。
「ねェ、愛歌。私たちハセカンドディサイドまで行かないト浄化の能力ハ使えないかラ作戦前ニ、一回ヘッドチェンジした方ガいいんじゃなイ?」
「あ、そっか…。空打ちみたいでちょっと勿体ない気がするけど仕方ないか…。」
愛歌はそう言うとデバイスを操作してヘッドカードのデータを見始めた。
「だったら、いいのがあるぜ、愛歌ちゃん。ちょっと待ってな。」
「真輝さん?」
真輝はそう言うとスマホを手に取り、デュエル・デュラハンのアプリを起動した。
「ほら、ネクストチャージヘッド。これは使うと二回目に使ったヘッドがパワーアップするっていうヘッドさ。」
真輝がネクストチャージヘッドを見せるためにスマホを前に出し、愛歌と道人は一緒に見た。
「へぇっ、そんなヘッドあるんだ…。道人、知ってた?」
「いや、俺も初めて見たな…。」
「無理もないさ。このヘッドはそれ以外何の能力もないんだ。二回目のヘッドのパワーアップは約束されるんだが、デュエル・デュラハンだと最初の三分間はほとんど頭なしの素の状態で闘う事と同じになる。まぁ、玄人向けのヘッドだな。」
「なるほどの…。真輝さんは何でそんな玄人向けのヘッドを持っておるんじゃ?」
腕を組んでいる大樹が真輝に質問した。
「俺、大会だとよくシード選手として扱われる事が多いんだ。それでハンデとしてこの制限されたヘッドを使わせられる事が多くてよ。こんなピーキーなヘッドだが、一応レアもののヘッドなんだ。」
「なるほど、それで…。」
「大変なのね、チャンピオンも。」
「甘いな、真輝。俺とオルカダイバーなら例え二回ヘッドを封じられても問題ないぜ?」
深也は真輝に対して対抗意識を燃やして右手の親指で自分を指差していた。
「ははっ、言ってろ言ってろ。それでよ、デュエル・デュラハンとディサイド・デュラハンとではヘッドによっては扱い方が変わって来るだろ?」
「あ、そっか。ディサイド・デュラハンはゲームとは違うからか。遭遇戦では難しいけど、こう言った待ち受ける形の作戦前なら、このヘッドを事前に付けておけて備えられるって訳ね。」
「そう言う事だな。ほら、貸してやるよ。これ、失くすとスタッフたちに怒られるから後で返してな。」
「わっかりました!ありがとう、真輝さん!」
真輝はスマホ内のネクストチャージヘッドのデータを愛歌のスマホに転送した。
「じゃあ、早速!ヘッドチェンジ!ネクストチャージヘッド!」
愛歌はスマホとデバイスを合体させた後、カードを実体化させてスラッシュした。
『あなたは縛りプレイをする事はありますか?』
「えっと、エリクサー病ならあるかと…。」
『承認。』
エリクサー病とは完全回復できるような貴重なアイテムを使うのを勿体なく思って温存し、結局クリアまで使わなかったと言うゲームではよくある事だ。
トワマリーに×の字の角が付いた頭だけ装着された。
「本当に頭が付くだけなのね…。」
「ア、でもでモ!何だカ不思議ト力が漲る気がすル!」
その後、三分が経ってトワマリーは元の姿に戻った。
「鎧は…まだ纏えないか。」
愛歌はデバイスを操作し、自分がプライドスライドできるかどうか確認した。
「潤奈は最初からチェンジできるけど、あたしはまだ駄目みたいね。」
「やっぱり鎧を纏うのには個人差があるんだね。」
愛歌と道人たちは作戦開始まで何気ない会話を続けた。
おかげでリラックスする形で作戦開始十分前となった。
「さて、いよいよだな…!」
「ちゃんと来なさいよ、ガイアヘッドちゃん…!」
深也とランドレイク、グルーナとルレンデスは大地フィールドの中央に立っていた。
道人たちは少し離れた場所で待機していた。
「よし、そろそろ時間だ!頼んだぞ、深也君たち!」
司令がそう言うと深也とグルーナは冷や汗を掻きながらもデバイスを構えた。




