319章 やっと渡せたお守り
「…ふぅっ、結構形にはなって来たかな?」
道人は時間を忘れてお守り人形作りに集中できていた。
「あぁ、なかなかいいんじゃないか?」
「はい、とても可愛いですよ?」
ジークヴァルとユーラも道人が作った人形の出来を誉めてくれた。
気づいたらデバイスに映るジークヴァルはオリハルコン化が解けて元の姿に戻っていた。
「へぇっ、それがお守り人形ってやつなのか。創作物?ってやつの人形なんだろう?」
「おう、グッズってやつだな。」
椅子に座っているカジートも道人の作った人形に興味を持っていた。
必要なものがあった際はカジートの亜空間移動で何度か取りに行ってもらったので何だか申し訳ない。着替えまで取りに行ってくれた。
いつの間にかヤジリウスも実体化していて共に椅子に座っていた。
「お守りの効果ってのはすごいもんでな。俺もお凛からもらった歯車のおかげで道人たちに出会えたようなもんだ。」
「なるほどな…。元々、道人の方の主たちはディサイドって言う想いの力で強くなれるみたいだしな。想いを力に変える…ってのは何だか良い響きだな。」
ヤジリウスからお守りの効果の強さを聞いたカジートは何だか感慨深そうにしていた。
「うん、元の人形にも劣らない完成度だと自負したい。後は彩色かな。」
「ふふん♪是非に是非に。私に似合う色をお願いしますよ?」
ユーラはそう言うとジト目で両手を後頭部に当ててセクシーポーズをして来た。
道人はつい頬を染めてしまう。
「ど、どこでそんなポーズ覚えたの…?」
「はい、グルーナさんや愛歌に。私の身体を活かした悩殺ポーズをと。」
「あ、あ奴らめ…。」
恐らくお泊まり会をした際に教えられたのだろう。ユーラにとって悪影響だな、あの二人は…と道人は改めて思う。
「さて、そろそろ晩ご飯食べに行かないとな…!続きはそれから…!」
道人はそう言うと思いっ切り両手を上へと伸ばし、部屋にある時計を確認した。
現時刻は夜六時過ぎだった。
道人とユーラは一緒に椅子から立ち上がる。
「俺らはここで待ってるわ。ゆっくりして来な。」
「うん、ありがとう。ジークヴァルはどうする?」
「私は道人について行こうかな。」
「わかった。じゃあ。ちょっと食堂行って来るよ。」
道人はジークヴァルが映るデバイスを手に取った。
ヤジリウスとカジートは部屋に残し、道人とユーラは下の階にある食堂を目指した。
「姫はまだ現実世界と傀魔怪堕を行ったり来たりしてるんでしょうか?気になりますね…。」
「さ、さすがに休憩はしてると思うよ、うん…。」
ユーラの言う通り、あれから姫たちがどれくらいの人間たちを帰還させる事ができたのか気になるところだった。
もし、地上世界にいるのならデバイスが繋がるはずだが、今は繋がらなかった。
という事は姫とキャプテン・雷牙たちは今は傀魔怪堕にいるのだろうと道人は察した。
そうこうしていると道人とユーラは階段を下り終わり、食堂に辿り着けた。
「おーい、道人!」
道人とユーラを見た愛歌が手を振って来た。
道人とユーラは愛歌が座っている場所に向かう。
「こんばんは、道人さん。」
「ばんはー!」「ぴーっ!」
「あれ?海音さん?スランにクラちゃんも?」
海音も愛歌と一緒にいて食事をしていた。
スランとクラちゃんも海苔を食べていた。
「体調が良くなったので会社エリアまで来ちゃいました。」
「残念ながら深也はいないけどね。」
「べ、別に深也に会いに来た訳では…!」
「かくさない、かくさない。」
「ぴーっ。」
頬を染める海音に対し、スランとクラちゃんは共に二回頷いた。
「他のみんなは?」
「大樹と真樹さんは今もデュエル・デュラハンで対戦してる。潤奈はフォンフェル弐式の実戦報告書を渡しに行きがてらマーシャルやお父さんのとこ。」
「そっか、納得。」
道人はそう言うとユーラと一緒に席に座ろうとする。
「あ、海音さんがいるんならちょうど良かった。」
「はい?」
海音は道人の言葉を聞いて首を傾げた。
スランとクラちゃんも一緒に傾げる。
「ちょっと待ってて。すぐ戻るからさ。」
道人は愛歌たちにそう言うとまた自室へと戻る事になった。
さっき来た道を逆走し、自室へと戻って来た。
「それでその時にイノシシと出会った風車の荒武者がやった事ってのがな…。」
「ふむふむ。」
扉を開けるとヤジリウスとカジートが楽しそうに会話をしていた。
イノシシ?風車?一体何の話をしているのかつい気になってしまった。
「おっ、道人?どうした?」
「いや、ちょっと用があってね。」
道人はリュックの中からまだ海音に渡せてなかった水色のエスポワールのフィギュアを取り出した。
「…真輝さんもお腹空かせたら食堂に来るかな?よし!」
真輝にも渡せるかもしれないので金色のエスポワールも道人は持ち出す事にした。
「それでその風車の荒武者はイノシシから技のヒントを得てだな…。」
「ほうほう。」
道人は楽しそうに会話しているヤジリウスとカジートの邪魔にならないように静かに退室した。
階段を降り、食堂へと戻って来た。
「お待たせ!はい、海音さん。ずっと渡しそびれてましたけど…。」
「私にですか?」
道人はやっと海音にエスポワールクリアブルーのミニフィギュアを渡す事ができた。
「わぁっ、かわいい…!」
スランも海音が手に持ったミニフィギュアを一緒に見た。
「これは?」
「お守りです。デュラハンパートナーのみんなに渡そうと思ってたんですけど、海音さんや真輝さんには今まで渡しそびれてて。」
「まぁっ、そんな素敵なものを私に…。」
「センスはイマイチだけどねぇ〜っ。」
愛歌はそう言いながらジト目で右手にエスポワールのミニフィギュアを持った。
「もっと早く渡せたら良かったんですけど…。」
「いえ、このような事態ですし、仕方ありませんよ。ありがとうございます。常に持って大事にしますね?」
「なくさないようにね?」
「はい、もちろん!」
スランから紛失を心配された海音はミニフィギュアを大事に鞄の中に入れた。
そんなやりとりをしているとこの場にいる三人のデバイスから着信音が同時に響いた。
「道人、私のデバイスにメッセージが届いたぞ。」
「何々?」
道人たちは届いたメッセージを確認した。
「作戦に関するメッセージだ…。」
「遂に固まったんだね、作戦内容が…。」
「えっと…。」
道人はメッセージ内容に目を通そうとする。
「ちょい待ち。先にご飯食べましょ?行儀悪いしね。」
愛歌はメッセージを読もうとした道人に待ったを掛けた。
「今、私がざっと確認してみたが、詳しい内容は明日の朝集まって改めて話すと書いてある。今日のところは会議をスムーズに行うために作戦内容の把握だけを頭に入れてもらって明日に備えてゆっくり休んでくれとも書いてあるな。」
ジークヴァルが届いたメールを速読して今必要な情報だけを伝えてくれた。
「そっか、わかった。ありがとうね、ジークヴァル。」
「よし、道人が食べてる間に私が目を通しておこう。」
「よシ、私モ!」
ジークヴァルとトワマリーが道人たちの体調管理を気遣ってくれたので道人は安心してメニューが載っているタブレットを手に取った。
「…何か油揚げは今日はもう見たくないな…。」
「わかる。あたしもそうだし。」
油揚げには申し訳ないが、油揚げを見るとディヴェロップメントフォックスを思い出してしまうので何となく避けたかった。
「おっ、いたいた!道人!」
「作戦メッセージが来たぞい!」
真輝と大樹が道人たちに向かって走って来た。
メッセージが届いたのでデュエル・デュラハンを切り上げて急いで来たのだろう。
「はい、二人共!その話は後でって話になったの!」
「ふふっ…先にご飯ですよ、二人共?」
愛歌と海音にそう言われ、真輝と大樹も晩ご飯を食べる事になった。
これで真輝にもお守りを渡せるぞ、と道人は心踊らせながらタブレットのメニューを読んだ。




