318章Side:ジェネラル・シユーザー ラドード、メフシ、ドルエ
「やれやれ、単独行動を取った上にルアンソンを失うとは…。」
「も、申し訳ありません…。」
ジェネラル・シユーザーは玉座に座り、右手の甲に頬を当てながら足を組んでいた。
右膝を立てて座り、俯いているハクヤの事を呆れながら眺めていた。
「これでせっかく新しく結成したシチゴウセンが一人減っちゃった訳?」
ハクヤの隣に立っているエイプリルもハクヤに対して容赦なく言葉のナイフを刺した。
「いえ、ヒューマン・デュラハンとカウンター・ディサイド・デュラハンはセット扱いですから。私の美学的にね。言うなれば、ロクテンゴゴウセンと言ったところですか。まぁ、ハクヤはまだヒューマン・デュラハンとしての価値はありますし。ハクヤには別のデュラハンを与えて戦ってもらいましょう。」
「あ、ありがとうございます、シユーザー様…。」
「しかし、ディヴェロップメントフォックスまで壊れたのはなぁ~っ…。あの油揚げは自信作だったのですが…。残念です。」
「あ、油揚げ…?」
エイプリルはディヴェロップメントフォックスの事を知らないので油揚げと聞いても何の事かさっぱりのようだった。頭の上に?マークをたくさん浮かべている。
『まぁ、いいじゃないか、シユーザー。僕としては興味深い事を二つも知る事ができたよ。シャクヤスを通じてね。』
「…! ヴァエンペラ様…!」
エイプリルとグレリースのとなりにガイアヘッドが機嫌が良さそうにゆっくりと歩いて来た。
ジェネラル・シユーザーは姿勢を正し、玉座に座り直した。
「はて?二つとは…?」
『一つはトワマリーとフォンフェルがしてみせたオーバーディサイド。あれは大変見応えがあった…。ああいうのをディサイドの集大成と言うんだろうね。敵ながら興味深いよ。』
「オーバーディサイド…。そんな事が…。」
「もう一つは?」
オーバーディサイドの事を聞いて興味深そうにするジェネラル・シユーザー。
エイプリルが首を傾けて隣にいるガイアヘッドに質問した。
『アレウリアスとルアンソン、前世の記憶を取り戻した者同士でこうまで違うものかと学べた事さ。カウンター・ディサイド・デュラハンが前世の記憶を取り戻した場合はどうなるのか未知数だった。結果、ルアンソンは前世の記憶を取り戻せてもディサイドはできなかった。だから、暴走した。対して、アレウリアスはウェントと…ふふっ、楽しみが増えたな。』
「何?その反応?ウェントってば、そんなにアレウリアスと順調なの?」
『その内わかるさ、その内ね…。』
「むーっ、我らがヴァエンペラ様は勿体ぶり上手であらせられる…。」
「こらこら、エイプリル。ヴァエンペラ様に対して馴れ馴れしいですよ?」
ジェネラル・シユーザーはヴァエンペラに失礼な態度を取っているエイプリルに注意した。
「はーい。それにしても、ウェントってばそんなにすごい事してるんだ。ねぇ、グレリース。ウェントとアレウリアスを捜しに行ってさ、頑張り具合を見に行ってみようか?」
「エイプリル、それは…。」
エイプリルが思いつきでわがままな事を言い出したのでグレリースは困っていた。
「またこらこら、後一週間でヴァエンペラ様本体がやって来るという大事な時に…。決戦の前にあなたもやられに行こうとするんじゃありませんよ。」
ジェネラル・シユーザーは軽率な行動を取ろうとするエイプリルに再び注意した。
エイプリルの元の身体の主である芽依の兄を想う気持ちをウェントに重ねているのではないかともジェネラル・シユーザーは考えて危惧した。
「あ、ひどい。私とグレリースはやられないもん。」
「ちょっと前にカサエルやフォンフェルにやられて帰って来たのはどこの誰でしたっけねぇ?」
「勝手に出掛けるとしたらあの竜のお爺ちゃんなんじゃないの?」
「あの爺さんは決戦前に奴らとの因縁をどう片付けようかだのなんだのとか言ってよくわかりませんが瞑想中ですよ。まぁ、大丈夫でしょう。」
「○×△◻︎…。」
「あん?」
エイプリルとグレリース、ハクヤの背後に空間が発生し、中から三体のデュラハンが現れた。
『おっと、翻訳翻訳…。』
ガイアヘッドが指を鳴らすと現れた三体のデュラハンたちのヘッドにデータが送られたようだった。
『はい、翻訳完了したよ。』
「これは失礼…。では、改めて…。おやおや、これはまた随分と賑やかですな。バドスン・アータスというのはこのようにゆったりとした場所であらせられる?」
「あん?」
ジェネラル・シユーザーも改めてあん?と返した。
『君たち、随分来るのが早かったね。』
「はい、ヴァエンペラ様…。」
『僕だとわかる?』
「はい、我らがあなた様の姿を見間違える訳なく…。ヴェエンペラ様よりも早くチキュウへとやって来た我らの事をどうかお許し願いたい…。」
「許してぇっ、欲しいぃっ…!」
「どる。」
三体のデュラハンはガイアヘッドの前でしゃがみ、忠誠を誓った。
「ヴァエンペラ様、彼らは?」
『彼らは確か、えっと…そうそう、僕の所有するデュラハン製造プラント第三惑星ゴニラドアで生き残ったデュラハンたちさ。戦島の時にダジーラクに聞いただろう?増援は必要かってさ。彼らはその候補の一つさ。』
「あぁ、そういう…。」
「何がそういう?」
納得したジェネラル・シユーザーに対し、エイプリルは不機嫌そうに疑問を投げて来た。
『ははっ、いいよ。ちゃんと紹介してあげるよ。そこの歯がギザギザで凶悪そうなのがラドード。』
ラドードと呼ばれたデュラハンはガイアヘッドの言う通り、歯がギザギザで両刃の斧のような大きいウイングを背負った濃い緑色のデュラハン。右手と一体化した妙な形の槍が特徴的だ。
『ラドードの右にいるトゲトゲがメフシ。』
メフシと呼ばれたデュラハンはトゲトゲのホットドッグに手足が生えたようなデュラハンで両手が自分の身体よりも大きなハサミになっている茶色いデュラハンだった。
『それでラドードの左にいるのがドルエって訳さ。』
ドルエと呼ばれたデュラハンは頭は小さいが、他二体よりも巨体で、歯車が付いたかなり長い二本の煙突のようなものを背負った黒いデュラハンだった。
「ヴァエンペラ様の召集に応じ、こうしてチキュウに馳せ参じました。」
「直に他の惑星のデュラハンたちもここへやって来るだろうがぁっ、何ぃっ。その前に我らだけでぇっ、チキュウを制圧してみせまさぁっ…!」
「どる。」
三人のデュラハンはそう言うとゆっくりと立ち上がった。
『それは頼もしいね。けど、彼らを侮らない方がいい。結構面倒な相手でね。』
「ほう、ヴァエンペラ様にそこまで言わす相手とは興味深い。」
「決戦の前にぃっ、どんな奴らか是非相手してみたいぃっ…!」
「どる。」
『興味あるかい?そうだなぁっ…。ま、考えておくけど、今日の所は休みなよ。長旅で疲れたろう?』
「はい。では、お言葉に甘えて…。」
ラドード、メフシ、ドルエはガイアヘッドにお辞儀をした後、大広間から去って行った。
「大丈夫なんですか、あいつら?失礼にも、ジェネラルである私に一声もなかったですよ?」
ジェネラル・シユーザーは不機嫌そうに自分を右手で指差してヴァエンペラに話し掛けた。
『まぁ、君の立場的に嫉妬してる面はあるだろうね。彼らは僕が保有する数あるデュラハンたちの中でも僕への忠誠心が強い方だと思うからさ。』
「あ、なるほど。私の立場にですか。なら、納得。」
ガイアヘッドの言葉を聞いて安心したジェネラル・シユーザーは深々と玉座の背もたれに全体重を掛けた。
『この一週間で僕の人ぎ…デュラハンたちがどんどんチキュウに集まっていくだろうね。いやぁっ、楽しみだ。』
そう言うとガイアヘッドは鼻歌交じりで機嫌が良さそうに大広間を退室していった。




