317章 ちょっと前は敵だった人たち
「よし…まぁ、こんなものかな。」
道人は司令と話をした後、亜空間移動で傀魔階堕へと戻って来た。
魔月のフクロウ人形は建物修理をする必要がなくなった、地上世界に連れて行ってもいい首無し鎧武者たちを並べさせた。
「結構多いですね…。」
道人は魔月のフクロウ人形のとなりに立って五列にずらっと並んだ首無し鎧武者たちを眺めているがざっと三百人くらいはいそうに見えた。
「やっぱり水晶化から解かれた人たちから見たら首無し鎧武者たちの見た目は怖いようでね…。攫った張本人たちだしね、無理もない。あまり帰還作業には向いてないんだ。だから、こっちに人を割けるって訳さ。」
「なるほど…。」
首無し鎧武者たちは話す事もできず、簡単な作業しかできないために動きも不気味なもの。無理もないと道人は納得した。
「あ、でも仮装とかさせたら割と誤魔化せると思いますよ?キャルベンの兵士たちもそれでいけましたから。」
傀魔階堕が侵攻して来た際にソルワデスの発案でキャルベンの兵士たちをご当地ヒーローと市民たちに認識させて避難誘導させた事を道人は思い出して魔月のフクロウ人形に話した。
「そうか、生き物はどうしても第一印象に引っ張られちゃうものだからねぇっ…。仮装か、なるほどね。参考にするよ。そうだ、Dレボリューションとやらの置き土産、二人の首あり鎧武者も連れていっていいよ。大丈夫、もう頭パーツは解析済みでスパイなんかはしたりしないから。」
「わかりました。それじゃ、首無し鎧武者たちはお借りしますね。」
「うん、お貸しする。鎖縛丸、失礼のないようにね。」
「任されよ、魔月よ!」
右拳を自分の胸の顔に当てて張り切る鎖縛丸の前まで道人は歩いた。
「えっと、司令からの指示だとパークには結界が張ってあるから君たちがパークの中に現れる事は…あ、でも、敵だったはずのキャルベンの兵士たちはもう結界内に入れてるんだよな…。ひょっとしたら、味方になった首無し鎧武者たちももう入れるのかも…。」
「確かに、あの結界はガイアフレームの意思が作用しているのかもしれないな。」
「ガイアフレームはこっちに話し掛ける事はできないけど、こっちの行いは常に見て把握しているって事なのかな…?」
道人はデバイス越しにガイア・ジークヴァルと話し合ったが、やはりガイアのデュラハンに関してはまだわからない事が多い。とりあえず、首無し鎧武者たちはパークの外のモノレール乗り場近くに出現させる事にした。
道人はスマホで鎖縛丸に出現する場所を指定した。
「どう?わかった?」
「うむ、心得た!問題なく行けるであろう!」
鎖縛丸は首無し鎧武者たちに指示し、移動を開始させた。
「じゃあ、俺は先に移動して待ってるからね。」
「うむ、またすぐに会おうではないか。」
道人は一瞬でオリハルコンの鎧を身に纏った。
「えっと、カジートはもうモノレール乗り場の場所はわかるよね?」
「おう、もちよ!」
カジートはブレード形態になり、宙を斬って亜空間の裂け目を作った。
道人はカジートブレードを右手に持ち、亜空間の裂け目に飛び込んだ。
ちゃんとモノレール乗り場前に転移でき、道人は鎧を解いて制服姿に戻った。
「えっと、即連絡連絡っと…。」
道人はデバイスを取り出し、司令に連絡を取る事にした。
「もしもし、司令?えっと…今から首無し鎧武者たちが駅前に現れます。」
道人は一瞬何と言ったらいいかわからなかったがとりあえず説明してみた。
司令が真剣な表情でキーボードを叩いている姿がちらついたので何だか邪魔して申し訳ない感じが発した言葉に混ざってしまった。
我ながら変な言い回しをしたかな、と道人は思った。
今は街中には人は少ないが、一応周りを確認した。キャルベンの兵士たちが見回りをしているのが目に入った。
「そうか、わかった。とりあえず実験エリアに集めてくれるか?博士的には強襲艦の開発の手伝いをしてもらいたいそうだ。キャルベンの小型船が迎えに来るから待っていてくれ。」
「わかりました。あ、出始めた。」
道人の近くの地面から次々と首無し鎧武者たちが現れ始めた。
「…少し前は敵同士だったから異様な光景に見えてたはずなんだけど…。今だと頼もしくは思うけれど…それでも何だか複雑な感じだ…。」
「ははっ、無理もないさ。毎度ながら、我らの状況変化の頻度は凄まじいな。」
「ほんとにね…。」
道人はデバイス越しでガイア・ジークヴァルと味方となった首無し鎧武者たちについて話した。
「へぇっ、地球の死の世界ってのはこういう形で地上世界を行き来するのか。」
「えっと、レング・ザ・ダイだと違うの?」
「おう。俺の場合は亜空間移動だとかキルバにはキルバの、マリグアにはマリグアで独自に移動手段を持ってる感じだな。」
「なるほど、個性があるのだな。」
「そう、個性がある。」
カジートとレング・ザ・ダイの話をしていると鎖縛丸が道人とカジートの近くの地面から現れた。
「ほう、これがデュラハン・パークとやらか!お前たちの本拠地は悪極必帝苦悶城と比べて縦長ではないのだな!」
「まぁ、あれは和風の城みたいなものに近い感じだし…。」
鎖縛丸はデュラハン・パークを見た感想を言った後、ちゃんと首無し鎧武者たちが全員いるか確認。全員問題なくいる事がわかった。
キャルベンの小型船も近くの船乗り場に姿を見せた。
「じゃあ、あれに乗って実験エリアに行こうか。俺も亜空間移動連発して何だか疲れたから乗ろうかな…。」
「じゃあ、俺も。海中の短き旅というのも興味があるしな。」
道人とカジートは先にキャルベンの小型船に乗り込んだ。
「道人さん、ご苦労様です!」
「うん、ご苦労様。」
キャルベンの小型艇の操舵主が挨拶をして来たので道人も返事し返した。
道人とカジート、鎖縛丸はキャルベンの操舵主の後ろの席に座った。
首無し鎧武者たちを席が埋まるくらいに乗せると小型船は海中に潜った。
「へぇっ、これはすごいな。辺り一面真っ青じゃねぇか。」
「うむ、このような光景は傀魔階堕では見られんな。」
カジートと鎖縛丸は興味深そうに窓から海中を泳ぐ魚を見ていた。
「私ももう何度かこの海を見せさてもらってますがね。キャルベンに負けないくらい綺麗な海ですよ。」
「そうなんですか?」
「えぇ、近くに人工島が四つもあるのにこの綺麗さには驚かされます。」
キャルベンの操舵主がデュラハン・パークの環境を褒めてくれたので道人もつい自分の事のように思えて嬉しくなった。
「うむ、我が部下たちつい見入っておるわ!」
鎖縛丸がそう言うと道人は後ろを向いて首無し鎧武者たちを見た。
首無し鎧武者たちは言葉は発せないが、窓に映る海を静かに眺めていた。
「…こうして見ると何だか本当に不思議だな…。同じ空間に人間や地球、キャルベン、傀魔階堕、レング・ザ・ダイのデュラハンたちが一緒にいるなんてさ…。」
「あぁ、この光景は我々が今まで頑張って勝ち得てきた貴重なものだな。」
「そうだね。守らないとな、この光景を…。」
今まで戦って来て得られたもの。それを確認して認識する事も大事な事だ。
後一週間後にやって来るヴァエンペラからこの手に入れられた光景を守って見せる。道人は改めてそう思った。
キャルベンの小型艇は実験エリアの格納庫に到着した。
「よし、到着だな!」
鎖縛丸が先に小型艇から下船した。
道人は外に出た鎖縛丸に異常がないか確認した。
「結界の影響は…どうやらなさそうだね。やっぱりガイアフレームはもう傀魔階堕を味方だと認識してるって事なのかな…?」
道人たち全員がキャルベンの宇宙船から降り終えた後、キャルベンの小型艇は海へと戻っていった。
「道人君、ご苦労様。後は私たち整備班に任せて。」
「わかりました。じゃあ、鎖縛丸。何か困った事があったら遠慮なく俺に連絡してね?」
「うむ!この鎖縛丸、建設は得意中の得意である!一週間以内とは言わず、二日三日でお主らの船とやらを完成させてみせようではないか!」
「おっ、何だか粋が良いのが来たな!頼りにさせてもらうぜ!」
整備班の方々は前まで敵だったはずの鎖縛丸を歓迎してくれた。
整備班の人たちにとってはデュラハンはもう見慣れているというのが良い方向に働いているのかもしれない。
「よし、じゃあ俺たちは会社エリアに戻ろうか。俺たちがいなかった間にどれくらい事が動いたか把握しないとね。」
道人は楽しそうにしている鎖縛丸と整備班たちを笑みを浮かべて見ながらその場から退室した。




