300章 力そのものに善悪なし
深也が提案して来たガイアヘッド浄化作戦。それはガイアヘッドと繋がりがあるデュラハンたちがわざと力を発揮し、ガイアヘッドをおびき寄せるという内容だった。
「そんな!?それは危険なんじゃないのか?」
道人たちは深也の作戦を聞いて思わず席から立ち上がった。
「そうよ、あの力をわざと発現させようって言うの!?」
愛歌はランドレイクがイルーダとの戦いでデストロイ・ディサイドした時、その場に一緒にいたのでその危険性を理解していた。
「あの時だって、スランやトワマリーたちのおかげで何とかランドレイクは元に戻れたって言うのに…。」
「それだよ、愛歌。例えランドレイクがまた暴走したとしてもよ。スランのミラクルテイマーや、トワマリーのイモータルティアの力で元に戻れる。ガイアヘッドもだ。ガイアヘッドにスランとトワマリーの癒しの力を与えて元の綺麗なガイアヘッドに戻す、って寸法だ。」
「もーっ!何よ、そのあたしや海音さんたち頼みぃっ!」
愛歌は前屈みになり、両拳を下に伸ばしてぷんぷんと怒っていた。
「そう怒んなよ、愛歌。」
「深也、でも…。」
道人が深也を心配すると、深也は少し笑みを浮かべて行儀悪く椅子に座り直した。
「これはよ、俺なりのリベンジでもあるんだ…。あの時、俺はガイアヘッドの誘惑に負けちまって、ランドレイクをまたデストロイ化させちまった…。」
深也はそう言うと寂しそうに自分の右手を見た。
「けどよ、ディアスたちやキャルベンの連中が仲間になったりして俺…改めて思ったんだ。力そのものに善悪はないんじゃねぇか…ってよ。あの力が役立てる機会があるのなら…俺は今度こそ、それを使いこなしてぇんだ。最初は道人たちと敵対して、向ける事になったあの力を…今度は道人たちの役に立ててみてぇって思うんだ。償い、って訳じゃねぇけどよ。」
「深也…。」
深也はまるで今度こそ力を正しく物にして見せると言わんばかりに見つめていた右手で握り拳を作った。
「いいじゃない、深也ん!その話、乗った!」
グルーナが席から勢いよく立ち上がり、両手を腰に当てて威風堂々として見せた。
「私も最初は道とんや潤奈たちと敵対して迷惑掛けちゃったし…。その気持ち、わかるわ!深也んのそのピュアな気持ちに私のハートもバーニング!付き合おうじゃない?」
「だ、誰がピュアだ!誰が!」
グルーナの言葉を聞いて深也は照れ臭そうにしていた。
「ま、俺たちがその気でもよ。ランドレイクやルレンデスたちが了承するかは…。」
「何言ってんだ、大船長!俺はもうとっくにその気だぜ!」
格納庫が映っているスクリーンにランドレイクとルレンデスが姿を見せた。
「大船長が決めた事なんだ、俺はそれにとことん付き合うぜ!」
「ランドレイク…。」
「僕もグルーナに永遠に付き添うパートナーだ!君の決めた事に全く異論はないさ!」
「ルレンデス…。」
深也とグルーナはスクリーン越しでも問題なく、ランドレイクとルレンデスと見つめ合った。
「ま、あたいたちもヴァエンペラの良いようにされてた人形のままじゃ癪さね。」
「あぁ、ダジーラクたちの野望を侮辱したヴァエンペラに一泡吹かせるのも悪くはない。」
格納庫に入るダーバラとディアスもやる気十分だった。
「お!乗り気だねぇ、二人共!なら、俺も…。」
「キャプテンは我と共に雷紙丸で人々を運ぶのが優先じゃから駄目じゃ!」
「へぇ~い、姫さん…。ま、それも大事な仕事だよな…。おっと、それに俺はキャプテン・雷牙だしな。ライガじゃねぇし。」
姫に止められたキャプテン・雷牙はガイアヘッド浄化作戦には不参加の流れとなった。
「深也…。」
「…!? 海音?」
会議には参加していなかった海音がパジャマ姿でスクリーンに映った。スランとクラちゃんも一緒にいる。イジャネラも海音の登場に驚いていた。
「お前、寝てなくて大丈夫なのか?」
「はい、もう十分休みましたし…。それにあなたの言うその作戦にはスランの参加は必要不可欠ではないですか。」
「そ、そりゃっ…そうだけどよ…。」
「自分で言い出した事なのに何今更申し訳なさそうにしてるんですか、もう…。深也、ランドレイクがディサイド・デュラハンになった時、私に言った事を覚えていますか?あなたは両方を救いたいと言った私にこう言ってくれたんです。例え叶わなくても、奇麗事だと言われても、決して諦めるな。二兎追ったからには二兎とも取れ…って。」
海音は目を細め、頬を染めて右手を胸に当てていた。
「私、あなたの言葉が嬉しかった…。今でもあなたの言葉が私の支えになっている程です…。」
「そ、そうかよ…。」
深也も頬を染めて照れていた。道人たちがそんな深也の様子をにやけながら見ていると深也は道人たちを睨んで来た。
「そう言えば言ってたな、俺は難しい難易度に挑む方が燃える…ってよ。」
「はい、今がその時です!私もあの時の感謝を込めて、あなたに改めて言葉を贈ります!ディサイドとデストロイ…二つの力を使いこなして、二兎追って二兎とも取って下さい!」
「おう!」
深也と海音はしばらく見つめ合っていた。
「…ねぇねぇ、やっぱりあれってさ…。」
「…うん、お似合いだよね。」
「へっ、深也の奴も隅に置けねぇなぁ。」
「おい、こらっ!そこのてめぇら、聞こえてんぞ!」
ひそひそ話をしている愛歌、潤奈、真輝に対し、深也は右足を座席に置いて指差した。
「ははっ、卒間殿。あなた方の元には勇気ある者たちが集っておるようだな。」
「はい、頼りになる子たちです…!」
ダイデュードが深也たちを褒めた後、司令も誇らしく返事を返してくれた。
「よし、わかった!深也君やグルーナ君たちの決心、私たちが必ず立派な作戦に仕立てあげてみせよう!」
司令がそう言うとその後も会議は続き、二時間後に会議は一旦終わりとなった。
「それでは卒間殿、また改めて…。」
「はい、その時はよろしくお願いします。」
司令はダイデュードにお辞儀をした後、キルバは盾を回収して神殿の投影を終了した。
「さぁ、みんな。もう昼だ。食事を取って来るといい。その後はとりあえず勉強をして会社エリアで待機だ。」
「は、はい…。」
道人たちがそう返事をすると流咲が教科書を両手に持って目を輝かせていてこちらを見ていた。
大樹は両手で頭を抱えて絶望していた。
「…じゃあ、私、食事の前に開発エリアに行って来るね。」
「あ、そっか。新型フォンフェルの様子を見に行くんだね。俺も行くよ。」
「…うん、いいよ。」
「あたしも!」「我も!」「私も!」
愛歌、姫、ユーラも一斉に手を上げてついて行きたいと言い出した。
「おっと、姫さんはどうやら行けなさそうだぜ?」
「なぬ?」
真輝が指差した方向を道人たちが見ると首無し鎧武者が立っていた。
「こ、これが魔月さんが言っていた伝書首無し鎧武者…?」
「じゃあ、結晶化した人たちを元に戻せる準備ができたのかな?」
道人と愛歌は首無し鎧武者をじろじろと見た。伝書首無し鎧武者は手紙を渡して来たので姫は受け取って中身を見た。
「どうやらそのようじゃの…。よし、世のため人のためじゃ!では、行って来るかの!」
「待つんだ、十糸姫。ならば、デュラハン・シップも出さなければな。キャルベンの宇宙船にも手伝ってもらえないか、イジャネラ殿にも話をしなければならない。」
「うむ、了解じゃ!司令殿!」
姫は司令の言う事を聞いた後、指令室に残る事になった。
道人たちは全員で開発エリアに行った後、会社エリアに戻って来て食事をする事にし、指令室を後にした。




