298章 三組織合同会議、開始
「…よし、朝かぁっ…!」
道人はゆっくりと上半身を起こし、両目を擦った後に周りを確認した。
「自室で朝を迎えるのは落ち着くな…。」
道人は見慣れている自室をしばらく見渡してぼやけた視界を直した。
「おはよう、道人。よく眠れたか?」
机の上に置いてあるデバイスからジークヴァルの声が聞こえて来た。道人は立ち上がってベッドから離れ、デバイスを手に取った。
「うん、よく眠れたよ。けど、毎度の事だけどやっぱりガイアフレームは接触して来ないや…。」
「もう道人の夢の中に干渉できる程の力がガイアフレームには残ってないのかもしれないな…。」
「だとしたら…ロードの言う通り、早くガイアのデュラハン復活に必要なディサイドを何とかしないといけないね。そのための話し合いが今日の会議だ。」
道人はそう言うと外着に着替え始める。
「そう言えば、ソルワデスたちは?」
道人はソルワデスたちが気になったので窓の外を見た。ちゃんと屋根の上にソルワデス、ヤジリウス、カジートが座っていた。
道人は窓を開けて話し掛ける事にする。
「みんな、おはよう。」
「おはよう、道人」「おう、おはよう!」「お目覚めかい?」
ソルワデス、ヤジリウス、カジートが一斉に挨拶をして来た。
「三人共、ごめんね、外にいさせて…。俺、朝ご飯食べて来るから部屋の中にいてもいいよ?」
「では、遠慮なく。」
ソルワデスたちは窓から道人の部屋に入って座った。
「と言うか、ヤジリウスは食べなくても大丈夫で、キャルベン出身のソルワデスは海藻系を食べるのは知ってるけど…カジートは?ご飯、食べるの?」
道人はカジートの食事関係が気になったので質問してみた。
ソルワデスはどこからともなく海苔のケースを取り出して食べ始めた。
「いや、俺たちレング・ザ・ダイのデュラハンは鎧に魂を宿している形なんだ。だから、エネルギー補給は必要ないのさ。」
「そ、そうなんだ…。何気に永久機関なんだね…。」
「いやぁっ、そう言われると照れるなぁっ…!」
「誉めて…るのかな?ないのかな?と、とにかくゆっくりしてて。」
道人は窓から離れ、机に置いてあるデバイスに映っているジークヴァルを見た。
「ジークヴァルはどうする?ソルワデスたちと一緒にいる?それとも母さんと話す?」
「そうだな…。せっかくだから、カジートともっと話して親睦を深めておきたいな。」
「そっか、わかった。じゃあ、待ってて。」
道人は自室を後にし、階段を降りた。リビングでは秋子が朝ご飯を作っていた。
「母さん、おはよう。朝ご飯、作ってるの?大丈夫?」
「おはよう、道人。簡単な料理だけど、少しずつ日常を取り戻したいからね。冷蔵庫の中身も整理しないと…。」
「俺も手伝うよ、ちょっと待ってて。」
道人は洗顔し終えた後、秋子の調理の手伝いに入った。テーブルにパンと目玉焼き、ソーセージを並べていく。
「「いただきます。」」
道人と秋子は手を合わせた後、三日ぶりに一緒に朝ご飯を食べた。テレビを付けても何も映らないので電源は入れなかった。
「ニュースが見られないのは不便ね…。天気予報もわからない…。」
「まだ人が戻って来てないからね…。魔月さんが言うには多分、今日から人がちょくちょく戻って来られるとは思う。」
「そう、まだまだ元通りの街に戻るのは時間が掛かりそうね…。」
「だ、大丈夫!すぐに街に活気は戻るよ、きっと!さて、目玉焼きに何掛けようかな?」
道人は暗い話題を避けるために目玉焼きの話題にシフトした。量が少ないのですぐに食べ終えてしまったが、少しは秋子と家族らしい会話をする事ができた。
「道人、今からパークに行くの?」
「うん、今日は大事な会議があるんだ。」
「ふふっ、そう言うとまるで会社員みたいね、道人。」
「確かに…。」
道人は秋子の笑う姿を見た後、階段を駆け上がって自室に向かった。
「それでこの主人公がな…。」
「へぇっ、なるほどなるほど…。」
自室に戻るとヤジリウスがカジートに漫画を読み聞かせていた。
ソルワデスはジークヴァルのデバイスを両手に持って話をしていた。
「おう、道人の方の主!もう食事を終えたのかい?」
「うん。カジート、漫画に興味があるの?」
「まぁな。いざ手に持ってみたら何だかどっから読んでいいかわかんなくてな…。ヤジリウスの方の主に読み方を学んでいるところだ。」
「あははっ、楽しそうで何より…。」
道人は机の上にリュックを置き、荷物をまとめ始める。
「道人、もうスマホにカードは読み込んだのか?」
「うん、ばっちり!レアフレーム六枚ともちゃんと読み込んどいたよ!これで戦力アップだ!」
「そうか、早く試してみたいものだな。」
道人はデバイス越しでジークヴァルと会話しながらリュックのチャックを閉め、背負った。
「よし、そろそろ整備士のお兄さんが来ると思うから外で待ってようか。みんなは先に外で待ってて。」
「わかった!」「えぇ。」
ソルワデスとカジートは窓の外から外に出た。ヤジリウスは歯車付きの布に戻って道人はそれを手に取ってポケットに入れた。
ジークヴァルのデバイスをリュックのホルダーに付けた後、再び階段を下りた。
「それじゃあ、母さん!行って来まぁ~す!」
「気を付けて行ってくるのよ、道人?」
道人は玄関で靴を履いた後、扉を開けて外に出た。秋子に手を振って扉を閉めた後、家の前の道路まで走った。
「おっす、道人!」
「おはようございます、道人!」
愛歌とユーラも愛歌の家の中から出てきて挨拶して来た。
「おはよう、二人共。よく眠れた?」
「それがさ、ユーラが手間の掛かる子だってのを忘れてただわよ。」
「ふふっ…。でも、ぐっすり眠っておられましたよ?道人の言う通り、寝相が悪かったですね。お腹を丸出しにしておられて…。」
「そうそウ。ひどい時はブラまデ…。」
「こ、こらっ!余計な事言わないの!」
愛歌が赤面しながらユーラとトワマリーに注意していると整備士のお兄さんの操縦したトラックがちょうど到着した。
「よう!おはよう、諸君!」
「整備士のお兄さん!」
「遭遇頻度的に何だかそろそろ名前を知りたくなって来たわね…。」
「俺?渋川晃だけど?」
「「名乗った…。」」
「まぁ、そのようなお名前で…。」
道人たちが整備士のお兄さん改め、渋川と話した後、道人たちはトラックのコンテナに乗り込んだ。
ソルワデスは飛行形態でトラックについて行く事になる。
「おっす、道人たち。」
「おはようぞい!」
「おはよう、二人共。」
トラックにはもう深也と大樹が先に乗っていた。道人たちは座席に座った。
「で、どうよ?俺のアドバイスの手応えは?」
「深也だけじゃなくて真輝さんのアドバイスもじゃろ?」
「うん、ばっちし!」
「どれ、見せてみろよ。俺がチェックしてやるぜ。」
トラックがパークに向かっている道中、道人は深也たちに昨日作ったヘッドカードを見せた。何だかみんなでデュエル・デュラハンの話をできているのが道人には楽しく思えた。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、トラックは会社エリアの駐車場に到着した。
「渋川さん、ありがとうございました!」
「おう、何だったら今日も送ってやるからな!」
渋川は右目でウインクしてサムズアップした後、トラックは開発エリアに走って行った。
道人たちは普段通りにボディチェックを受けた後、司令室に向かった。
フリーパスとパスワードを入力すると扉が開き、いつも通りに腕を組んだ司令の後ろ姿が見えた。
「おはようございます、司令!」
「うむ。おはよう、諸君。」
道人が代表して挨拶をした。司令は何だかお疲れ気味だった。多忙だろうから無理はない、と道人は思った。大神たちオペレーター陣も遠目で見て疲れが見えた。
司令たちの心遣いだったとは言え、家でゆっくりできた事が何だか申し訳ないような気持ちが道人にはした。
「…おはよう、道人たち。」「おはよう、道とん!」「おはよう、道人よ!」
潤奈、グルーナ、姫、シルエット大将軍、キルバも既に指令室にいた。スクリーンにもイジャネラや格納庫にいるディアスたちが映っていた。
「よし、それでは会議を始めようか。」
「あれ?博士はどうしたんですか?」
道人はスクリーンに式地博士が映っていないので捜した。
「新型フォンフェルが完成間近でな。そっちを優先してもらっている。博士には後でここでの話を伝えておこう。」
「そっか、フォンフェルが…。良かったね、潤奈。」
「…うん!」
道人がそう言うと潤奈が嬉しそうに返事をした。道人たちは近くの椅子に座り、会議は始まった。
「それではキルバ君、ダイデュード殿を呼んでもらえるか?」
「わかった。」
キルバはそう言うと盾を上空に投げた。指令室は一瞬の内に紫色の神殿内に変わり、玉座に座ったダイデュードと近くに立つマリグアが姿を見せた。
「よ!昨日ぶり、マリグア!」
「カジート、あんた地球の皆さんに迷惑掛けてないでしょうね?」
マリグアは両手を腰に当てて前屈みになってカジートを見た。
「大丈夫、俺はお前が知らないだけで社交的なのさ。」
「へぇ~っ…。ふぅ~ん、そう…。」
マリグアは疑いの眼差しで余裕そうなカジートを見た。
「卒間殿、ヴァエンペラの分身体がいないかどうかをこちらで調べて見たのだが…それらしき人物は見当たらなかった。しかし、油断はできない。なので、警戒して昨日とは別の場所で諸君らと話をしている。」
「そっか、だから神殿の色が違うんだ…。」
昨日は全体が緑色の神殿で、今日は紫色の神殿な理由が道人にはわかった。
「初めまして、ダイデュード殿。妾はイジャネラ。キャルベンの女王じゃ。」
イジャネラがそう言うとキルバが両手を動かして投影を調整し、スクリーンが出現してイジャネラが映った。
「ほう、キャルベン…。わしはダイデュードだ。よろしく頼む。」
「イジャネラ様、海音やグゲンダルは…?」
ソルワデスが姿が見えない海音やグゲンダルの事をイジャネラに尋ねた。
「何、妾が会議に参加するのでな。グゲンダルはパークの守りについてもらっておる。海音はまだ眠っておる。」
「そうでしたか。」
イジャネラがそう返事をするとソルワデスは納得した。
「さて、まずは情報共有からだ。流咲君。」
「はい、司令!」
「レング・ザ・ダイの人たちにこれまでの事を一から教えると時間が掛かりそうじゃぞい…。」
「大丈夫ですよ、大樹君。会議前にキルバさんに報告書のコピーを渡しておいて予めダイデュードさんに伝えておいてもらいましたから。じゃないと、一から話すと時間が掛かってしまいますから。スムーズに進行しないといけませんからね。」
「それなら良かったぞい…。手際が良いの、流咲さんたち。」
大樹が安心した後、流咲はこれまであった出来事や昨日のロードの事、道人の正体などを説明した。
愛歌と流咲が書いた報告書はちゃんとまとまっていた。
司令が伝えたのか、昨日のディアスたちの話もまとめられていた。
「ふむ、改めて聞いても凄まじい戦いぶりだ…。驚かされる…。」
ダイデュードは予めこちらの出来事を伝えておいたとは言え、それでもこれまでの戦いの事を聞いて驚いていた。
「さて、ここからが本題だ。ロードが話したというガイアのデュラハン復活計画についての話…そして、シルエット大将軍が調べたという情報の話をしよう。」
おさらいを終えていよいよ今後についての重大な話をする事になった。道人たちは気を引き締め、真剣な表情となって司令を改めて見た。




