294章Side:ディアスFin 破壊者バドスン・アータス
バドスン・アータスの宇宙要塞は惑星ジャイスの近くに位置していたが、観察は思いの外すぐに終わった。
最初に提示された惑星なだけあって、危険な惑星だと言う事がすぐにわかったからだ。
惑星ジャイスの民たちは二つの勢力に分かれており、死力を尽くして戦っていた。
バドスン・アータスが間に入らなくても勝手に自滅しそうだったが、彼らは環境破壊兵器も使っていた。
それでは採掘星に変える都合上、困るのでバドスン・アータスが介入する事にした。
「へへっ、これがヘッドの力か!なるほど、こいつは良いや!」
ライガは両手の爪と光弾を放ちながらジャイスの兵たちを次々と倒していく。
「ふん!」
ダジーラクも剣で次々と兵を薙ぎ払っていった。
ダジーラクはこの惑星の将の意味で『ダーリ』と名付けられたヘッドを付けて戦っていた。
ヴァエンペラが激励のために与えてくれたヘッドだ。
ヴァエンペラは今後、惑星攻略の度にダジーラクに将のヘッドを与えてくれる、とヘッドの情報でディアスにもわかっていた。
念のため、ダジーラクに身体に異変はないかを尋ねたが、何ともないようだった。
「い、いきなり現れて何なんだ、お前たちは!?」
「我らはバドスン・アータス!自らの住む惑星をその手で汚す者たちよ、我が星を救うための贄となれ!」
シチゴウセンはあっという間にジャイスの民たちを殲滅し、最初の採掘星に変える事ができた。
「素晴らしい!この星にはかなりの量のラックシルベが入手できそうですよ!後はヴァエンペラ様の採掘用ロボット部隊に任せて、我らは次の惑星の観察に向かいましょう。」
シユーザーがそう言うとディアスたちは宇宙要塞に戻る事にした。
「…アルウス?」
アルウスが一人しゃがんで枯れた植物を見ていた。
「どうした?」
「う、ううん…。何でもないよ…。」
アルウスはディアスを通り過ぎて歩いていき、ディアスもアルウスの後について行った。
バドスン・アータスは邪な惑星を採掘星に変えるため、決して後ろを振り返らない。我らはそうインプットされている。
その後もバドスン・アータスは次々と惑星を採掘星へと変えていった。
どれもこれも低俗な争いをしている惑星で採掘星に変える候補に選ばれる事はあった星だった。
「アルウス?」
アルウスが次の採掘星に変える惑星を窓ガラスから眺めていたのでディアスは話し掛けた。
「あ、ディアス…。」
「どうした?何か困り事か?」
「…いや、前に滅ぼした惑星…。綺麗な自然がある場所だったからさ…。」
「そうか、アルウスは自然や鉱石などを観察する事が好きだからな…。私も好きさ。確かに綺麗な星だった。だが、その綺麗な自然を原住民たちは汚していた…。もう採掘星に変えた後だから、今後は汚される事はないだろう。」
「…そうだね…。」
アルウスはそう言うとディアスから離れていく。
「…ねぇ、ディアス?」
アルウスはディアスに背を向けたまま立ち止まり、話し掛けた。
「何だ、アルウス?」
「…ううん、何でもないよ…。ボクらは自分たちの故郷を救うためのヴァエンペラの闘士…。これからも頑張ろう!」
「あぁ。」
惑星を次々と採掘星に変えていき、順調に事が進んでいたかと思われたバドスン・アータスだったが、惑星リフドーの観察中に事件が起こった。
アルウスが突然死んだのだ。遺体は分解され、新たなデュラハンたちのためのパーツとなった。
シチゴウセンたちは緊急のゴウ=カイを開いた。
「アルウス、一体どうして…?」
アルウスの突然の死はディアスの心を深く傷付けた。
「ふん、自ら命を絶つとは愚かな…。」
「…!? ダジーラク…!?」
アルウスとは古くの付き合いのはずのダジーラクから予想もつかない言葉が出て来てディアスは困惑した。
「ま、待ってくれ!何故自殺と断定できる!?」
「ほう、ディアス?それだと我らの誰かが同志であるアルウスを殺害したと疑う事になりますが?」
「そ、それは…。」
ディアスはシユーザーの言葉を聞いた後、他のシチゴウセンたちを見て下を向いた。
「アルウスの事はこの際、仕方あるまい。」
「仕方ない、だって…?」
何時からか、ダジーラクは冷たい態度をよく取るようになった。
ヘッドによる影響かと考えてディアスは調べた事があったが特に洗脳装置らしきものはなかった。
「それでシユーザーよ。シチゴウセンは一人減ってしまったが…。」
「ご安心下さい、ダジーラク様。そのために出発時に何体か素体をこの艦に積み込んだのです。まだ未熟なので時間を要しますが、今現在だと『スラン』と言う個体が補充要員足り得るかと…。」
「よし、頼んだぞ、シユーザーよ。これにてゴウ=カイは終了とする。」
ダジーラクがそう言うとライガたちは退室し始める。
「ま、待ってくれ、ダジーラク!アルウスに何か弔いの言葉は…!?」
「我らにそんな感傷に浸っている暇はない。全てはヴァエンペラのため…。」
ダジーラクはそう言うと去っていく。
「今、ヴァエンペラのためと言った…?君はネミケーの在り方を変えるんじゃなかったのか、ダジーラク…!?」
「おっと、そこまでですよ、ディアス?」
ディアスがダジーラクを追いかけようとするとシユーザーが通せんぼした。
「邪魔をするな、シユーザー!」
「邪魔?邪魔をしているというのなら、むしろそれはあなたの方でしょう!」
「なっ…!?」
「ダジーラクは惑星を採掘星に変えていく戦いを経て、将としての貫禄が出始めたのです。ははっ、実に喜ばしい事じゃないですか。」
シユーザーはディアスにそう言うと退室して行った。
「それじゃあ、ネミケーの荒くれデュラハンたちと変わらないじゃないか…。」
ディアスがアルウスの死を引き摺っている間、惑星リフドーの観察を終了して採掘星に変える事になった。
「悪魔の手先、バドスン・アータス!」
「くたばれ、バドスン・アータス!」
今まで採掘星に変えて来た惑星には宇宙間を移動する術がある星もあった。
それで他星に危機を知らせるために故郷から脱出した者たちが瞬く間にバドスン・アータスの存在を広め回ったようだ。
バドスン・アータスは過激派武闘組織と呼ばれるようになった。シチゴウセンは現在、一人欠けている状態なのだが、それは広まっていないようで未だにシチゴウセンと呼ばれていた。
「ダジーラク、君がバドスン・アータスに持たせたい意味とはこんなものだったのか…?なぁ、アルウス…。」
ディアスは疑心を己の胸の顔に抱き始めていたが、もう今更引き返せない。ここまでに多くの惑星を採掘星に変えて来た。全ては故郷ネミケーのため、そう思いながらひたすらに戦い続けた。
リフドー侵攻の際、シユーザーは一人の少女マーシャルを同志に迎え入れた。マーシャルは故郷を捨て、バドスン・アータスに科学面で協力する事になった。
その後もバドスン・アータスは次々と惑星を採掘星に変えていき、チキュウへとやって来た。
「チキュウか…。青いな…。」
「うん、きれい…。」
ディアスは宇宙要塞の窓からチキュウ観察のタイミングで新たにシチゴウセンに選ばれたスランと一緒にチキュウを眺めていた。
スランの明るく、好奇心旺盛なところはアルウスによく似ているように思えた。
「わたし、ちきゅうにおりたい!きっと、おりてみたらもっときれいだよ!」
「どうだかな…。」
ディアスは今まで色んな惑星を採掘星に変えていく中でそこに住む者たちの醜さも見ていた。このチキュウに住むニンゲンたちも恐らく同じだろうと考えていた。
「そんなこといわずにいわずに!いこうよ、ね?」
「お、おい…。」
スランはそう言ってチキュウに降りる事になり、ディアスもスランと一緒に降りる事にした。
もうアルウスのような事はごめんだからだ。せめて、まだ自分の手を汚していないスランには元気でいてもらいたい、ディアスはそう考えていた。
「眩しいな…。」
「ん?なにかいった?」
「なんでもない…。ほら、行くんだろ?」
「うん!」
ディアスはスランを連れて格納庫に向かった。
アルウスの突然の死。しかし…?
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