294章Side:ディアス⑤ 救世の箱舟
ディアスたちはシユーザーに案内され、大きな倉庫のような場所に案内された。
倉庫には何か巨大な物体があるのはすぐにわかった。
「さぁ、これがあなたたち、勇敢なる闘士たちのための銀河を駆ける宇宙要塞です!」
「これは…?」
シユーザーが芝居がかった言葉を言うと同時にライトが照らされ、巨大な宇宙要塞が照らされた。
「何だよ、まだこんな大きな宇宙要塞を造れる程、資材に余裕はあんのかよ?」
「違いますよ。この艦は以前からあった物を何とか仕立て上げたもの…。言わば、中古品みたいなものです。」
「おいおい、いきなりケチっぽいな?」
「ぼやかない、ぼやかない。中古品が奇跡の箱舟になるなんて何とも劇的で、ロマンチックではありませんか。今日からこの艦は我らのアジトであり、この星を救うための救護艦となる訳です。さ、中に入りましょう。」
ライガの疑問にシユーザーが答えた後、艦の中に入っていく。ディアスたちもついて行った。
「どうです?古い作りではありますが、中は豪華で広いものでしょう?」
「ほう…。」
シユーザーの言う通り、艦内は薄暗くはあるが広い通路で、フロアもたくさんあるようだった。
「この先の大広間に行きますよ。」
シユーザーがそう言うとしばらく沈黙し、通路を歩いた。ディアスたちはきょろきょろしながら歩くと外の様子が見えるガラス張りの通路を通り過ぎた後、大きな扉がある場所まで辿り着いた。
「さ、開けますよ。」
シユーザーはそう言うと両手で扉を押して開いた。大広間と呼ばれる場所は真っ暗な空間に赤いライトが照らされた部屋で小さな滝や柱がいくつかあった。奥に椅子も一つ置いてある。
「さぁ、これよりヴァエンペラ様と通信です。各自、柱に寄っ掛かって下さい。」
「うむ、わかった。」
ディアスたちはシユーザーの言う通りにし、柱に寄っ掛かった。
「それでは、ヴァエンペラ様!どうか、我らにそのお姿を!」
シユーザーがそう言うと椅子の近くに通信用の黒い炎が出現した。
「…よくぞ、決断してくれた、ダジーラクたちよ…。…今日程、嬉しい事はない…。…これで我が母星は救われるだろう…。…さぁ、我が闘士たちよ、これより儀式を行おう…。…シユーザー…。」
「はい…。」
シユーザーが取り出したスイッチを押すと地面から真っ白な七つのヘッドを乗せたテーブルが出現した。
「これは…?」
「ヴァエンペラ様の闘士である証、ヘッドです。これを付ければ単純にデュラハンとしての視界が広がるだけでなく、戦闘能力も向上します。このヘッドにはヴァエンペラ様の情報が含まれていますから説明する手間も省けるという優れものです。」
「すごいもんだってのはわかったよ。けど、何だか全員同じデザインで美しさに欠けるねぇっ。」
そう言うとダーバラは柱に寄っ掛かりながら七つのヘッドを不満そうに見ていた。
「ご安心を。ヘッドを付けた途端に使用者の情報を読み込んで形状が変化するようになっています。それでも気に入らなかったら私が調整してあげますよ。」
「…どうする、ダジーラク?」
「ふむ…。」
ディアスは置かれたヘッドを警戒し、ダジーラクに意見を求めた。
「どれ、誰も付けないなら私が先に付けて実践してみせましょう。」
そう言うとシユーザーはヘッドの一つを手に取り、自分の身体の上に装着した。シユーザーの言う通り、ヘッドはみるみる内に変化し、シユーザーの紫色の身体と同じ色の頭になった。
「ね、何ともないでしょ?」
「いや、仲間じゃないキミが先に付けて何ともないと言われてもな…。」
「あ、ひどい。今日から仲間じゃないですか。」
アルウスの言う通り、シユーザーが付けても別に安全確認にはならないな、とディアスも思った。
「ヨシ、オレガツケル。」
「ラクべス?」
ラクべスがヘッドを手に取り、装着した。ヘッドが変化し、大きな角が生えた頭となった。
「ど、どう?ラクべス…?」
アルウスたちは恐る恐るラクべスに尋ねた。
「ア、スゴイナ…。タシカニ、ジョウホウガ、ナガレコンデクル…。」
「だ、大丈夫なの…?」
「ダイジョウブダ、トクニフカイカンハナイ。」
「ほう。」「どれどれ。」
レイドルクとライガも続いてヘッドを手に取って身体に付けた。レイドルクは胸の顔と似た竜の顔に、ライガは獣の頭になった。
「おぉっ、何だか急に頭が良くなったみたいだぜ…!不思議と力も漲る感じだ…!」
「ふむ、確かにの…。」
「三人が言うなら、大丈夫そうか…?」
「ほらほら、わかったんなら疑ってないで早く付けて下さいよ?」
シユーザーに急かされ、アルウス、ダーバラ、ディアス、ダジーラクも手に取ってヘッドを付けた。アルウスとディアス、ダジーラクは騎士型の、ダーバラは鳥の意匠が組み込まれたヘッドに変わった。
「確かに情報が流れ込んでくるな…。」
ディアスはさっきからラクべスたちが言う情報が流れ込んでくる感覚というのを自らの身体で実感できた。
この宇宙船の内部構造や最初に行くべき惑星の提示、ディアスたち七人の闘士の団体名などが流れて来た。
「『シチゴウセン』…?それが我らの…。」
「…そうだ、それがお前たちの…我が精鋭たちを呼ぶ際の名前だ…。」
ヴァエンペラがそう言うとディアスは右手を新たな頭の耳に当てて更なる情報を読み込んだ。
「小型飛行船や兵士デュラハン…。この兵士デュラハンと言うのが…?」
「そう、ヴァエンペラ様の言う言葉を発せぬ下級デュラハンというやつです。」
「でも、意思のあるデュラハンも何人か連れていくんだね?」
アルウスも情報を検索し、ディアスと一緒にシユーザーに尋ねた。
「えぇ、いくらあなたたちが強者と言っても、たった七人で悪しき星を採掘星に変えていくというのは難しいでしょう。資源がないと言っても、今現在では大体五十近くはデュラハンの基本フレームがあるのでそれで何とか補充メンバーくらいは造れますよ。行く先々で資材を確保できたりもするでしょうしね。当面、人員に困る事はないかと。」
「…こちらからも用意ができ次第、度々補給や増援を宇宙要塞に送ろう…。」
「ありがとうございます、ヴァエンペラ。」
ダジーラクはヴァエンペラの黒い炎に礼を言った。
「へぇっ、トレーニングルームもあるんだな。おい、爺さん!」
「かっかっ、言わんでもわかっとる!相手になってやるわい!」
ライガとレイドルクは新たな頭で互いに睨み合ってバチバチ言わせた。
「二人共、はしゃぎすぎて早速五人になるのは勘弁ですよ?」
「…はっはっはっ、良いではないか…!…血気盛んで頼りがいがある者たちだ…!」
呆れるシユーザーの隣で声しか聞こえないが、ヴァエンペラは機嫌が良さそうだった。
「最初に我らが観察する星の名は…ジャイスか。」
「…うむ、時は一刻を争う…。…早速、向かってもらおうか…。…さぁ、ダジーラクよ…。…本日からこの玉座はお前の座るべき場所だ…。…遠慮せず座すが良い…。」
「ははっ!」
ダジーラクはそう言うと玉座に座って見せた。
「…うむ、様になっておるぞ…。…それでは期待しておるぞ、我が誇り高きシチゴウセンたちよ…!」
「「「ははっ!我らの意思はヴァエンペラと共に!」」」
「…?」
ディアスは無意識に今の言葉が出て来て口にした。皆も一斉に口にした。恐らく、読み込んだ情報によるものであろうが、何故だかディアスはそれに不安と違和感を一斉に感じた。




