294章Side:ディアス③ 始まりのバドスン・アータス
ディアスがバドスン・アータスに入った後、ほとんど毎日ダジーラクやアルウス、レイドルクらと協力して力なきデュラハンたちを助け、荒くれ者のデュラハンたちを倒して行った。
今もダジーラクが空を飛ぶ女性デュラハンと闘っていた。
「こ、こいつ、何て強さなんだい…!?」
空を飛ぶ女性デュラハンは鞭を振り回してダジーラクが近寄って来るのを妨害しようとするが、ダジーラクは問題なく突き進んでいく。
「ふんっ!」
ダジーラクの剣の一閃により、空飛ぶデュラハンの右羽を斬り落とした。
「し、しまった…!?」
空を飛ぶデュラハンが地面に落ちそうになった時、ダジーラクが剣を地面に刺し、空を飛ぶ女性デュラハンを抱えてキャッチした。
「あ、あんた…?何で敵であるあたいを…?」
「手合わせしてみてわかった。空を飛べる能力、なかなか見込みのあるデュラハンだ。」
「は、はん!情けは無用だよ!あたいをパーツにするんなら、さっさとすればいいさね!」
「いや、是非お前を同志に迎えたい。折れた羽を修復した折にはわしたちに協力してはくれぬか?」
「あんた、それって…。それって…。」
空を飛ぶ女性デュラハンは下を向き、両手を絡めて身体を震わせ始めた。
「すごく情熱的な申し出じゃないのさぁ〜っん…!♡♡♡」
空を飛ぶ女性デュラハンはダジーラクに抱えられながら目をハートマークにし、周りにもハートを飛び散らした。
「…落ちたか?」
「うん、落ちたね。」
観戦していたディアスとアルウスは互いに見つめ合って頷き合った。
「やれやれ、また騒がしい同志が増えるな…。」
ディアスはそう言いながらも日に日に増員されていくバドスン・アータスに内心期待感を募らせて行った。
空を飛ぶ女性デュラハン、ダーバラを同志に加えた後、次の日もダジーラクは青い獣のデュラハンと闘った。
「ほう、やるな!この俺相手にここまで闘える奴は初めてだぜ!」
「お前もなかなかのものだ。」
青い獣のデュラハンは両手の爪で襲い掛かり、ダジーラクはそれを剣で弾いていく。
「取った!」
「ぐおっ!?」
ダジーラクは青い獣のデュラハンの隙を見て腰を少し斬った。
青い獣のデュラハンは地面に倒れ、ダジーラクは剣の切っ先を向けた。
「へっ、まさかこの俺が負けるとはな…!さぁ、トドメを刺せ…!」
「いや、刺さん。」
ダジーラクは剣を鞘に納め、剣の切っ先ではなく、右手を差し伸べた。
「お前の素早さ、なかなかの者だった。わしらの同志に迎えたい。」
「あん?何の真似だ?」
「わしらには野望がある。お前にはその手助けをしてもらいたい。」
「野望ねぇっ…。」
青い獣のデュラハンはダジーラクの手は取らずに自分で立ち上がった。
「この俺に生き恥を晒させるんだ、それなりの野望なんだろうな?」
「あぁ、わしらの大願だ。」
「ほう、大願とは大きく出たな?俺を負かせる程のあんたの原動力、気になって来た。共に見させてもらおうか?」
青い獣のデュラハンはそう言うとダジーラクの右手を掴んで握手した。
「ふふっ、また増えたねぇ。」
「あぁ、増えたな。」
アルウスとディアスは互いに喜び合った。
こうして青い獣のデュラハン、ライガが加わった。
六人の強者たちが集ったバドスン・アータスはどんどんと名を馳せて行った。
「グッ、マケン…!」
「ラクベス兄ちゃん…!」
ある日、ラクベスと呼ばれているデュラハンが荒くれデュラハン三人から子供型デュラハンを守っている場面に遭遇した。
「行こう、ダジーラク!アルウス!」
「うむ!」
「任せて!」
見かねたディアスとダジーラク、アルウスは加勢し、あっという間に荒くれデュラハン三人を倒してラクベスを助けた。
「オマエタチ、イガイトヤル!」
「お前もなかなかの頑丈さだ。」
ラクベスの装甲はかなり厚く、荒くれデュラハン三人から総攻撃を受けてもダメージはそこまで負っていなかった。
「その子はお前の大事なデュラハンなのか?」
「イヤ、マダアッタバカリダ。ナンダカ、ホウッテオケナクテナ…。」
ラクベスはそう言うと子供型デュラハンの胸の顔を撫でた。
「優しいのだな、お前は…。ダジーラク?」
「うむ。その心と身体の頑丈さ、気に入った。わしらの同志にならぬか?」
「オレモ、イガイトヤル!」
ラクベスもバドスン・アータスに迎える事になり、これで七人となった。
その日の夜、ディアスはダジーラクとアルウスと共に丘の上で夜空を見ていた。
「何だか良い感じじゃない、ボクたち?」
「あぁ、順調だな。そうだろう、ダジーラク?」
ディアスはあまりライガやダーバラ、レイドルクと話す事はなかったが、アルウスとダジーラクには心を許しており、よく夜空の下で語らうくらいの仲になっていた。
ディアスは遠くを眺めているダジーラクに話し掛けた。
「いや、まだまだだ。わしらはもっと上に行けるはずだ。」
ダジーラクはそう言うと夜空に右手を伸ばした。
「わしらの強さは必ず神にも届く…!いや、その先にも…!」
ダジーラクは伸ばした右手で握り拳を作った。
「やれやれ、相変わらず欲深いな、ダジーラクは。」
「抜かせ。ほら、アジトに戻るぞ?」
「あ、待って。さっき向こうに珍しい鉱石があったんだ。観察してから帰りたいな。」
「アルウスの観察好きにもやれやれだな。」
「ディアスのやれやれぶりにもやれやれですよ。」
「何を言ってるんだか…。」
ディアスはいつの間にかバドスン・アータスに居心地の良さを感じるようになった。
バドスン・アータスのメンバーと全員と仲が良い訳じゃない。
同志に迎えようとしたら自爆したり、襲い掛かって来るデュラハンたちもいて全部がうまく行っていた訳じゃない。
けれども、ダジーラクとアルウスと一緒にいたらそんな悲しい事も乗り越えられる。ディアスにはそう思えた。
しかし、後日。問題が起き始めた。非戦闘員のデュラハンたちの様子がおかしくなって来たのだ。
「○×△◻︎〜っ…!?」
「ど、どうしたんだ、おい…!?」
非戦闘員のデュラハンたちが次々と言葉を発せなくなっては爆発して行った。
ラクベスが急いで近寄った。
「カワイソウニ…。ナンダッテコンナ…。」
「ディアスの…お兄ちゃん…。」
「…!? 君は…!?」
ディアスがかつて助けた子供型デュラハンだった。
「お母さんが…お母さんが…。」
「そんな…!?」
子供型デュラハンの母親は既に爆発した後だった。
「一体何が…?」
「ふむ…。」
ディアスはダジーラク、アルウスと共に今起こっている状況を考察し始めた。
ダーバラとライガ、レイドルクは外に出ていて今はこの場にはいない。
「神に逆らった罰…と言ったところでしょうか?」
「…!? 誰だっ!?」
ディアスは鎌を、ダジーラクとアルウスは剣を謎のデュラハンに向けた。
「おっと、いきなり物騒!」
「何だ、オマエ…?何でこの場所がわかった?」
「あなた方がそれ程名を馳せた…と言ったところでしょうか?」
「答えになってない!」
「うーん、血気盛ん…。私は我らが神、ヴァエンペラの使いですよ。名をシユーザー。」
「シユーザー…?」
ディアスは改めてシユーザーと名乗るデュラハンを見た。
胸の顔に眼鏡を掛けた、紫色の身体をしたデュラハンだった。
「お前がヴァエンペラの使いだと言う証拠は?」
「私について来ればわかりますよ。いかが致します?このまま仲間たちが爆発していく様を黙って見てます?」
「こいつ…。」
ディアスはシユーザーの態度が気に入らなかった。
アルウスも同じく、シユーザーに対してイライラしているようだ。
「待て、二人共。まずはこの爆発の原因を聞かせてもらおうか。」
ダジーラクがそう言うとディアスとアルウスは武器を下げた。
「あなた方も知ってるでしょう?非戦闘員デュラハンたちはこの星の戦いのルール上はボーナスパーツ扱い。パーツ取り前提の存在で元々長生きできる設計ではないのですよ。」
「な、何だって…?」
ディアスはそれを聞いて子供型デュラハンを見た。
「非戦闘員デュラハンを生かすなんて選択を取っていたのはあなた方くらいですからねぇ。わからなかったのも無理はない…。」
「どうにかならないのか?デュラハン製造プラントで再改造をするとか…?」
アルウスはシユーザーに質問した。
「更に最悪な事をお伝えましょう。この星は今までデュラハンを多く製造し過ぎた…。というか、元々資源に限りがあった。破壊行為はしても、誰も資源を作ろうとはしていないのですから、当然の結果です。」
「それは…。」
シユーザーの言う通り、この星は争いの星。何かを生み出す物と言えばデュラハン製造プラントくらいで食料となる実も作られた訳でなく、拾って見つける物だった。
「元々、この星は最強のデュラハンたちを造るための惑星なのですよ、ある目的のために…。そして、この度あなた方がヴァエンペラの目に入り、最強のデュラハンたちに選定された訳です。」
シユーザーはそう言うとダジーラクを指差した。
「この惑星が救われるかどうかはあなた方に掛かっている…!そう、これはあなた方が紡ぐ、輝かしき始まりの英雄譚…!」
「何だか途端に胡散臭くなって来た…。」
「だな…。」
アルウスの突っ込みに対してディアスも思わず頷いた。
「…くくっ、シユーザーよ…。…ここからはわしが話そう…。」
「…!? はっ、ヴァエンペラ様…!」
シユーザーの右に急に黒い炎が出現した。
シユーザーは急にその場にしゃがんで畏まった。
「なっ!?ヴァエンペラだって…?」
ディアスたちは突然現れた黒い炎に対して警戒した。




