294章Side:ディアス① ダジーラクたちとの出会い
惑星ネミケー。そこは自然が少なく、育たず、鉱石が多くある大地。
紫の空の下、頭部のない金属生命体たちによる争いが絶えない治安悪き星だった。
この惑星で神として讃えられているヴァエンペラがそんなネミケーの在り方を是としているからだ。
ヴァエンペラの姿を見た事がある者はこの星にはいない。しかし、この星に生きる者たちは神がそう言うのであればそうなのであろう、と自分たちの歪な弱肉強食世界に対して疑問を抱く者は少なかった。
自分たちを取り巻く環境に疑問を抱かない。その姿はまるで人形だった。
ディアスはその中では数少なく、この星の在り方に疑問を抱くタイプのデュラハンだった。
「大丈夫か?怪我はないか?」
ディアスは狭い路地裏で戦いに巻き込まれたデュラハンの親子を荒くれ者から助けた。
しかし、助けられたと言うのに反応が薄かった。
「…敗者はただ死に行くのみ…。」
娘を抱いて守っている母親は静かにそう言うだけだった。
「しっかりしろ。敗者は死に行くのみだと思っているのなら、あなたは何故娘を抱き締めて守っている?それは死にたくない、殺させたくないという意思の表れから来るものなのではないか?」
「…敗者はただ死に行くのみ…。」
「…お母さんの言う通り、だよ…。私たちは敗者…。敗者はただ死に行くのみ…だから…。」
「お、おい…。」
母親と娘の胸についた顔はまるで死者のような顔をしていた。
母親と娘は静かに立ち上がり、ディアスの元から去って行った。
「…私のやっている事は無駄なのだろうか…?」
ディアスは自己嫌悪に陥った。
ディアスはこれまでも何度か危ない目に遭ったデュラハンたちを助けていた。
この星に生きている者たちは決して生に対して執着がない訳ではない。ただ、生に価値観を見出しにくいように造られている。
この世界はデュラハン製造プラントによって民たちが日夜製造され続けている。
なので、人口が減る事は一切なく、争いが絶えない星であっても問題はなかった。
「この世界の在り方に疑問を抱いている私の方がイレギュラーなのだろうか…?」
ディアスには自分と同じ時期に製造された友たちがいた。
だが、今はもういない。戦いに敗れて灰燼に帰したからだ。
その時に抱いた何とも言えない感情。その事がきっかけとなり、今のディアスの考えに至らせた。
「こ、こんなところに間抜けがいやがったぜ…!へ、へへっ…!」
「…!?」
ディアスは背後から聞こえた声に急いで振り向いた。
そこにはたくさんの背負い物をした身体にたくさんの棘を付けたデュラハンがいた。
この星に安息の場所はない。
「お、お前も俺のパーツの一部にしてやるよ…!へ、へへっ…!」
「くっ…!」
棘付きデュラハンは身体に付けたたくさんのミサイルポッドからミサイルをディアスに向かって発射した。
「こんな狭い路地裏で平気でミサイルを撃つ…!」
ディアスはウイングをキャノン砲に変形させて紫のビームで出来たコウモリをばら撒き、向かって来るミサイルを誘爆させた。
「な、なかなか良い武器持ってんじゃねぇか…!欲しいぜ…!へ、へへっ…!」
ディアスは生き残るために死した友たちのパーツを使って自分を改造した。
ディアスはこのビームコウモリ射出機能の防御性能のおかげで今まで生きて来られたと言ってもいい。
「こ、今度は防げるような弾幕じゃねぇぜ…!へ、へへっ…!」
棘付きデュラハンは両手にバズーカを持って発射し、同時にミサイルも放って来た。
「ちぃっ!」
ディアスは鎌を出現させ、三枚の刃の内二枚を着脱して三本の鎌にした。
ビーム死神二体を作り出して鎌を持たせた。
「私を守ってくれ、友たちよ…!」
無数のビームコウモリを発射しつつ、ビーム死神二体と協力して鎌を振り回し、向かって来るミサイルやバズーカの弾を撃ち落としながらディアスは後退した。
「な、なかなかの防御性能じゃねぇか…!ちょうど防御性能を高めたいところだったんだ…!へ、へへっ…!」
ディアスは路地裏を抜け、開けた場所に出る事ができた。
「奴は無駄に弾を撃ち過ぎている…。次第に弾切れとなるだろう…。」
このまま弾切れを待った後、まともに相手はせずに去ろうとディアスは思った。
その時、さっき助けた娘デュラハンが駆け寄って来た。
「…!? いけない、来るな!」
「へ、へへっ、新たな強化パーツ見っけぇっ!」
棘付きデュラハンはディアスと娘デュラハンに向かってミサイルを放った。
「ちぃっ!」
ディアスはビーム死神二体にミサイルの撃ち落としを任せ、娘デュラハンに駆け寄った。
「くっ、間に合え…!」
ビーム死神二体で捌き切れなかったミサイルが娘デュラハンに向かう。
ディアスは咄嗟に振り返って二つのウイングブーメランを投げてミサイルをいくつか爆破させた。
ディアスは何とか娘デュラハンを抱き抱えて地面に倒れた。
「ボ、ボーナスデュラハンを守るとはおかしな奴だ!お前は生まれた時にインプットされてなかったのか?そいつはこの戦いのルール上、俺たちに備わっている同情機能を誘発させるようにわざと小さい姿にされているだけだってのに…!所詮はパーツに変えられるだけの存在だってのによ…!へ、へへっ…!」
棘付きデュラハンの言う事は合っている。
この星では元々デュラハンに備わっている感情機能をいかに自力で無効化できるかどうかが強さに関わっている。
それで生まれた冷徹なデュラハンこそがヴァエンペラの考える理想の闘士なのだとされている。
何故ヴァエンペラがそんな闘士を求めているのかはディアスにもわからない。
「確かにその通り、私にもそうインプットされている…。だが、何故だか気に入らない…!それだけだ…!」
「だったらぁっ、俺に大人しく負けとけぇっ!」
棘付きデュラハンはミサイルの発射準備に掛かる。
「ちっ!」
ディアスは起き上がり、ビーム死神二体と共に鎌を構え、ビームコウモリを周りに散らばせた。
「ボクのずるいところ、見せてあげる!」
その時、赤、青、緑、黄色のカラフルな炎の魔人を連れた女性騎士型デュラハンが棘付きデュラハンの背後から現れ、燃える剣で右肩に背負っているミサイルポッドの一つを斬って壊し、爆発させた。
「ごわぁっ!?」
棘付きデュラハンは右肩が爆発し、地面に倒れた。
「な、何だ…?」
「助太刀だよ!」
女性騎士型デュラハンはそう言うとディアスの前に立った。
「お、俺のミサイルがぁっ!?くぅっ…!」
棘付きデュラハンはすぐに起き上がり、左肩のミサイルポッドを発射しようとする。
「ふん!」
今度は別の黒騎士デュラハンが姿を現し、剣で一閃。
残ったミサイルポッドも爆発した。
「死ぬか?」
「ひ、ひぃっ…!?」
黒騎士デュラハンが棘付きデュラハンに剣の切っ先を向けると棘付きデュラハンは恐れて去って行った。
「に、逃がすのか…?」
「うん、キリがないしね。」
女性騎士型デュラハンと黒騎士型デュラハンは剣を鞘に入れ、ディアスの元に近寄った。
「大丈夫?キミも、その子も?」
「あ、あぁ…。」
ディアスはこの二人に敵意を感じなかったのでビーム死神とビームコウモリを消し、鎌を片付けた。
「そうだ…。お前、何で戻って来たんだ?」
「これ…。」
娘型デュラハンは実を渡して来た。この星のデュラハンたちの食糧に当たる実だ。
「これを私に…?」
「何故だかわからないけど、お礼をしたくなって…。」
「…ありがとう。」
ディアスはその場で胸の顔の口に実を放り投げた。
「うむ、美味しかった…。」
娘型デュラハンは嬉しそうに頷いた。
「ねぇ、キミ。何でこの子を助けたんだい?」
「そうだ、今は助けられたとしてもこの星の在り方では明日をも知れぬ身だ。無駄かも知れぬ。」
女性騎士型デュラハンと黒騎士型デュラハンはディアスに娘デュラハンを助けた理由を尋ねて来た。
「…おかしな事を聞くな。それなら、何故お前たちも私とあの子を助けた?私もお前たちも明日には死ぬかも知れない身なのは同じだ。」
「ふふっ、ボクたちはね。今みたいな光景に不思議と惹かれる部分があったんだ。お礼を嬉しそうにもらうキミの姿をね。」
「何…?」
「確かに助けた意味はないかもしれない…。けれども、何だかそれが気になる。ボクたちはそれを知るために戦っているところがあるかな?ね?」
女性騎士型デュラハンは黒騎士型デュラハンに反応を求めた。
「わしには野望があってな…。それを叶えるために今は同志を集っている…。」
「野望…?」
「お前はあの小さきデュラハンをこの星の戦いに定められたルール上の、ボーナスデュラハンという存在とは捉えずに別の存在として扱おうとした…。わしはそれを評価したい。わしと共に来ないか?」
黒騎士型デュラハンはそう言うとディアスに右手を差し伸べた。
「き、君たちは…?」
「ボクはアルウス!そして、こっちが…。」
「ダジーラクだ。」
「アルウス、ダジーラク…。」
ディアスはこの二人と出会った事で、今まで自分がして来た救助活動は意味があったものだったと思える気がして来た。
「…私はディアス。」
「ディアスか。よろしく頼む。」
「あぁ!」
ディアスはダジーラクと握手をした。
「へへっ、これでやっと同志が増えたね!」
アルウスも握手をしているダジーラクとディアスの手に両手を乗せた。
「いや、まだお前たちの同志になると決めた訳では…。」
「えーっ…、そうなの?」
「ならば、わしらの事をよく知ってもらう必要があるな。よし、わしらのアジトに連れて行こう。」
「ちょうどいいからさ、その子も連れて行こうよ。連れは他にいるのかい?」
「あぁ、母親がいる。な?」
娘型デュラハンは元気に頷くとアルウスを母親型デュラハンの元へ案内して行った。
「どれ、迎えに行くとするか。行くぞ、ディアス。」
「あ、あぁ…。」
ディアスはそう返事をするとダジーラクについて行った。




