294章 シチゴウセンたちの昔話
「結局、大人数で行く事になっちゃったな…。」
道人と愛歌は深也たちに開発エリアに行ってディアスたちと話をしに行くと話すと全員がついて行く事になった。
「仕方ねぇさ。帰りの車の用意ができるまで暇だしな。」
「みんなで情報共有する事は大事だしの。」
深也と大樹にそう言われながら道人たちは開発エリア行きのモノレールに乗った。
ガラガラなので全員座席に座る事ができた。
「我らが今日開発エリアに行くのはこれで三回目じゃの。」
「…うん、遊園地エリア以外には全部行ったね…。」
「一番楽しい場所に一度も行ってないって言うの…。」
「まだ人が戻って来てないんだから、そもそも行っても開演してないでしょ…。」
姫、潤奈、大樹、愛歌が順に会話をした。
「へぇっ、夜景を眺めながらの移動ってのも悪くないな。」
カジートが外の流れる風景を見て感想を述べた。
「だな、夜空と一緒に海も真っ暗でまるで夜空が空と地上で二つあるみたいだぜ。」
「意外と詩的な事言うのだな、お前は…。」
キャプテン・雷牙の風景を見た感想を聞いたソルワデスは意外そうにしていた。
「まさかこんなに賑やかになるとはな…。」
「すいません、司令。せっかくの休憩時間を…。」
「いや、いいんだ。仲間になったばかりのカジートももう馴染んでいて何よりだよ。」
道人は司令に対して申し訳なさそうにしたが、司令はこの賑やかさを楽しめているようで安心した。
「そう言えば、司令。晩ご飯は食べたんですか?」
道人は多忙そうな司令の食事面の心配をした。
「いや、まだだよ。仕事が終わってから食べようと思ってね。」
「駄目よん、司令さん?体型を維持したいのなら、夜八時以降にはもう何も食べない方がいいのよん?」
グルーナはそう言うと自分のスタイルの良さを自慢するようにセクシーなポーズを取り、右目でウインクして来た。
「そ、そうなのか…。ファッションデザイナーの君がそう言うのなら、確かなのだろう。肝に銘じておこう。」
「あたしも知らなかった…。気をつけよ。」
「そうよネ。愛歌、よく寝る前ニアイスとか食べてるもんネ。寝相モ悪いシ。」
愛歌はすぐにデバイスを取り出して画面にデコピンを喰らわした。
「え〜ン…。」
「あたしのプライベートをゲリラ的に明かしたトワマリーが悪い。」
「確かに、俺が愛歌の隣で寝てた時によく蹴りやパンチ喰らってたなぁっ…。」
道人が懐かしさでつい口を滑らせると愛歌がデコピンの構えを取った。
「ま、待って…!つい、懐かしさで…!」
「と言うか、愛歌と一緒に寝てたとは一体どういう流れで…?」
ユーラと姫が道人をじっと見る。
「…二人は幼馴染だし、多分昔の話なんじゃないかな?」
「少なくとも、私が道人と出会ってからは一度も愛歌とは寝ていないな。よし、今回は道人を擁護できたぞ…!」
潤奈とデバイス内のガイア・ジークヴァルが道人を擁護してくれた。
「潤奈とジークヴァルの言う通り!だから懐かしいって…!ちっちゃい頃!ね?昔!昔の話だからね!」
道人は慌ててユーラと姫に説明した。
「くぅっ、小さい頃とは羨ましいぞ、道人…!あれか、幼馴染の特権というやつか…!」
大樹が右腕を両目に当てて涙を拭っていた。
「幼馴染同士ってそんなもんじゃねぇのかい?俺も小さい頃に春香と一緒に寝てたぜ?」
「くっ、真輝さんまで…!」
「幼馴染じゃねぇけど、俺も幼い芽依を寝かしつけてたなぁ…。」
「深也、お前もか…!俺の周りは羨ましい男たちばかりじゃ…!」
「た、大樹にもその内、きっと良い人が現れるさぁ。」
悲しむ大樹に対してデバイス越しにカサエルが励ましていた。
「これこれ!何て言うのか、お前たちのそのボケが連鎖する流れが何か聞き心地がいいんだよな!そこが気に入った!」
「まぁ、それはツッコミ役が少ないって意味でもあるんだけどね…。」
楽しそうにしているカジートに道人はツッコミを入れた。
道人たちが何だかんだ楽しそうに会話をしているとモノレールは開発エリアに到着した。
「それじゃあ、格納庫まで行こうか。」
司令がそう言うと駅から出て、開発エリアのビル内に入った。
警備員がちゃんと本人確認しているとは言え、司令が先頭を歩くとほとんど顔パス状態でスムーズに格納庫まで行く事ができた。
「司令、お疲れ様です!」
「うむ、遅くまでご苦労。」
整備士たちが作業を一旦やめて敬礼すると司令も労いの言葉と一緒に敬礼した。
道人たちも敬礼する。カジートも真似して敬礼した。
「そうだ、この子たちが帰宅手段に困っていてね。誰か、この後に手が空く者はいないか?」
「なら、俺に任せて下さいよ、司令。」
整備士の一人が名乗り出てくれた。
今朝にドイツに行く際にトラックを用意してくれた人と同じ人だった。
「整備士のお兄さん!」
「もう少しで仕事が一区切りできそうだから、俺がまたトラックで送ってあげよう!」
「すまないな、助かる。」
「何、司令たちとオペレーターガールたちの頑張りに比べたら、俺なんてまだまだですよ。」
「そんな事はない。君たちの頑張りも掛け替えのないものだ。謙遜しなくていいよ。」
「嬉しい事言ってくれますね、司令…!よし、もうひと頑張りと行こうか…!」
整備士のお兄さんはそう言うとカサエルのボディのメンテナンス作業に戻った。
「さて、ディアスたちは…。」
「いた、あそこ!」
司令が周りを見ると愛歌がディアスたちを見つけて指差した。
ディアス、ダーバラ、ランドレイク、ルレンデスがフィールドトラッカーとバイパーウイング、フィールドウイング零型と一緒に話していた。
「あ、グルーナだ!僕に会いに来てくれたの?」
「まぁね、私の愛しのルレンデス!」
走って来たルレンデスはグルーナと抱き締め合った。
「何だい、ほとんど全員で来たのかい。これは賑やかになるねぇ。」
「うん。ダーバラたちはアディション・デュラハンたちと会話してたの?」
「まぁね、今日あった出来事を話してたところさ。」
ダーバラは愛歌にそう言うと三体のアディション・デュラハンたちを右腕の親指で指差した。
「話はダーバラ隊員たちから聞きました。今日も色々あったようですね。」
「道人隊員はもう大丈夫なのですか?」
バイパーウイングとフィールドトラッカーが道人に心配をして来た。
二人もドイツの遺跡で意思を飛ばして来てくれていた。
「道人隊員、私たちもまだ生まれたばかりで自身の存在について考える事はあります。答えがなかなか出ない事も。」
「しかし、こう言った悩むという過程も自身の自我を構築する大事な工程だとも思います。私たちにはこうして弟も出来ました。」
バイパーウイングとフィールドトラッカーがそう言うと喋れないフィールドウイング零型を見た。
「私たちは弟にも自身が学んだ事を教えて行きたい。自身は何者なのか?自分は何故存在するのか?その答えはあらゆる場所に秘められている。私はそう思います。」
「なので、道人隊員も落ち込む必要はありません。あなたが今まで得て来た事は間違いなく自身を構築するのに大事なピースたちです。この世界は立ち直れるきっかけで満ち溢れている。私はそう信じたい。」
「…うん、わかった。ドイツの時は俺のために意思を飛ばして来てくれてありがとうね、バイパーウイング、フィールドトラッカー、フィールドウイング零型。」
道人のお礼を聞いたアディション・デュラハンたちは頷いた。
「道とんをこんなに励ましてくれるなんて、目覚ましい成長ぶりじゃない?アディション・デュラハンたち。」
「はい、頼りになります…!」
グルーナが道人の背後に立ち、道人の両肩に両手を乗せた。
「あの…ディアス。」
「何だ?」
道人はあまりディアスに話し掛けた事がなかったので緊張した。
道人の気のせいじゃなければ、ドイツの遺跡でみんなの意思が現れた際、ディアスは見掛けなかった気がした。
「俺たち、今日は君たちシチゴウセンからバドスン・アータスの話を聞きに来たんだ。」
「………。」
「今までキャルベンや傀魔怪堕の激しい戦いでなかなか聞く機会がなかったから、改めて君たちの話を聞きたいと思って…。もう俺たちは君たちの事を信用している…。偽りの情報で騙したりなんかしないと信じてるから…。」
道人の言葉を聞いたディアスは少しの間、考えていた。
「…私にはもう一つ話さなかった訳がある…。」
「ディアス?」
キャプテン・雷牙とダーバラは一斉にディアスを見た。
「バドスン・アータスは君たちの敵だ。我々はこうしてディサイドという形で仲間になったが、他のメンバーも仲間になるとは限らない…。これから戦う相手の話を聞いてしまったら同情心が芽生え、戦い辛くなる…。私はそう思ったから話すつもりはなかった。」
「ディアス…。」
道人の気のせいではなかった。元々シチゴウセンは横の繋がりが薄いとは聞いていたが、ディアスは敢えて道人たちと距離を取っていたようだ。
「これから命のやり取りをする相手に関してなど、知らない方がいい。やり辛くなるだけだ。気にした結果、最悪味方が命を落とす可能性があるのだからな。」
「相変わらずトゲっちいな、こいつは…。」
キャプテン・雷牙がついディアスの悪口を言った。
「ま、俺も昔の事を話せって言われても…何だか話しづれぇなぁっ…。」
「あたいもさ。そりゃぁっ、昔のバドスン・アータスの事を聞いたら何か新たに気付く事もあるかもしれないけどさ。ディアスの言う通り、知らないなら知らないでいいともあたいは思うのさ。」
キャプテン・雷牙とダーバラもディアスと同じく話すのに乗り気ではないようだった。
「トゲっちい…いや、ディアスはこちらの事を心配して言ってくれているんだ。そうだろう、ディアス?」
「塔馬…。ふっ、さすがにパートナーにはお見通しか。」
司令の言葉を聞いてディアスは不思議と嬉しそうにした。
「ディアス、君のこちらを心配する気持ちは理解した…。でも、俺はそれでも聞いておきたいんだ。確かにディアスの言う通り、聞いたら同情してしまうかもしれない…。けど…。」
道人はどうしても名前を思い出せないが、本来はここにいたかもしれない『幽霊』の事を想って、右手で胸の上着を掴んだ。
「敵だからって、何も知らないままで戦うのもそれはそれで嫌なんだ…!だから、俺は君たちが住む惑星ネミケーの事情も知っておきたい…!」
「あたしも聞きたい、ダーバラの昔の事!」
「愛歌、あんた…。」
愛歌は道人の右に立ち、ダーバラを見つめた。
「俺たちも聞きたいぞい!」
「せっかくここまで足を運んだんだ。無駄足は勘弁だからな。」
「ったく、ここにも素直じゃない奴がいるなぁ…。」
大樹、深也、真輝もバドスン・アータスの話を聞く事に異論はなかった。
「我はきゃぷてんの事なら何でも知っておきたい!これも縁じゃ!」
「姫さん…。」
姫も道人の左に立ってキャプテン・雷牙を見た。
「どうやら、ここにいるメンバーは全員聞く気満々みたいよ、Mr.ディアス?」
グルーナはそう言うと逆手の右手でディアスを指差した。
「いいのか?特に…。」
ディアスは潤奈を見た。確かに潤奈はこれから自分の故郷を滅ぼした者たちの話を聞く事になる。
「…大丈夫、私も道人たちと一緒に聞く…!」
「ディアス、潤奈は仲間になった君たちを受け入れられている強い子だ。この子はそんなに弱い子じゃないよ。」
「…道人…。」
道人は後ろにいる潤奈に向かって振り向いて頷いた。
「大丈夫!私がついてますからね、潤奈?」
ユーラが潤奈と手を繋いだ。ユーラもアトランティスが滅んでいるので気持ちがわかるのだろう。
「ディアス、この場にいる者たちは我らディサイド・デュラハンの悲惨な前世をも乗り越えられた者たちだ。」
「この場にいるみんなは同じ気持ちなんだ、ディアス!だから…。」
ガイア・ジークヴァルと道人の言葉を聞いてディアスは思考した。
「…君たちの覚悟、確かに聞き入れた。いいだろう、話そう。我ら、始まりのバドスン・アータスの話をな…。」




