293章 なかなか戻らない日常
道人たちは会社エリアの食堂で晩ご飯を食べていた。
秋子には予め、今日はデュラハン・パークで晩ご飯を食べていく事を連絡しておいた。
道人は三日ぶりに秋子の手料理を食べたいところだったが、家の中は首無し鎧武者たちに荒らされていて片付けが大変だと思われるのでそんな状態で料理をさせるのも何だか気が引けた。
それを聞いた秋子も今日の晩御飯はレンジでチンで済ますと言っていた。
「潤奈は変身できてあたしたちはできない理由…。う〜ん…。」
「食事時くらいそこから頭離そうね…。」
愛歌たちはまだ自分たちが変身できない理由を考え込んでいた。
さすがに食事時に行儀が悪いのでみんなデバイスは手に持ってない。
ガイア・ジークヴァルのボディは格納庫に戻し、意思データもデバイスに戻したので今はデバイスの中にいる。
「仕方ねぇよ、今度から俺たちも道人みたいに変身してパートナーのデュラハンたちと一緒に戦う事ができるんだ!やれる事が純粋に増えたからな!」
「おう、腕が鳴るぞい!」
深也と大樹も今後の期待感の増加に合わせて食欲も上がっているようでたくさんご飯を食べていた。
「やっぱり変身ポーズとかあった方がいいのかしら?」
「いや…俺、変身ポーズなしでもなれてますし…。そこは別に…。」
道人はグルーナにツッコミを入れながらうどんを啜った。
「潤奈、変身した時の感覚!感覚を教えて!」
「…か、感覚と言われても…。」
潤奈も愛歌に変身の事を聞かれて困っているようだった。
変身に関しての話題で騒がしい中、道人たちは食事を終えてそろそろ家に帰ろうかという話になった。
「よし、三日ぶりに家に帰れるぞい…!爺ちゃんの手伝いをせんといかんな!」
「そう言えば、愛歌。仮面の件で途中で呼び出しちゃったけど…。」
「大丈夫、安心して。もう報告書は書いておいたわよ。会議は明日の朝やるって司令が言ってたよ?」
道人は報告書を書いている最中に愛歌を呼び出してしまったのでまだ書き終わってないのではないかと心配したがそれは杞憂な事だった。
「道人よ。すまぬが、我はぱーくに寝泊まりじゃ。魔月から連絡が来るかも知れんしの。すぐに雷紙丸で地上世界と傀魔怪堕とを行き来する作業に取り掛かれるようにしたいからの。」
明日から水晶化が解かれた人たちを運ぶ作業があるので姫はパークに残ると道人に伝えて来た。
「あ、そっか…。ごめんね、姫。俺がカジートを持って手伝えればいいんだけど…。」
「いや、さすがに一人ずつ連れて行き来するのは難しいぜ、道人の方の主。」
カジートが亜空間移動できるのは使い手ともう一人を連れる事が限界でさすがに効率が悪過ぎるので手伝うのは難しそうだった。
「なので、道人よ。其方と母上殿との一つ屋根の下生活はお預けという訳じゃ…。許せよ、よよよ…。」
「いえ、姫は寝泊まりするとしたら恐らく私と同じで愛歌の家に寝泊まりする事になるかと…。」
「なぬっ!?」
ユーラの言葉を聞いて姫は瞬時に泣くのをやめて愛歌の方を向いた。
「当たり前でしょ。あなたたち、意外と肉食系女子は放っておくと何をやらかすかわからないし…。」
「そんな事はない!道人と我の愛は実にぷらとにっくならぶというやつじゃ!心配には及ばぬ!」
「何て説得力のなさなんだ…。」
道人は張り切る姫に即座にツッコミを入れた。
「今の聞いたら余計に阻止するわ。」
「おのれ、障壁の愛歌!覚えておれよ!道人よ、またいつか必ずじゃ!」
「はいはい、その時ね。」
姫は右手で愛歌を指差し、愛歌は姫の伸ばした腕を下ろさせた。
「…道人、私もお父さんやマーシャルがいるし…。ここに残るよ。」
潤奈も自分の宇宙船には帰らないと道人に伝えに来た。
「なら、私も残ろうかしら?キャルベンの人たちがパークを防衛してくれてるけどさ。守りはなるべく多い方がいいかもしれないしね。」
グルーナもパークに残ると言ってきた。
「さて、俺もパークに寝泊まりなんだが…その前に、と。」
真輝はリュックを地面に置き、デュエル・デュラハンのカードパックを2BOXを取り出した。
「ほら、道人。やるよ。」
「えっ?あ、ありがとうございます…?」
道人は真輝からの突然のプレゼントに驚きながらも受け取った。
「それとメールも送っておいたぜ。俺が今日ジークヴァルとカジートの戦いを見て思った事や感じた事を書いといた。ジークヴァルは単体の敵が相手の時はすぐにオリハルコン化できないのが難点だからな。その対策に関する事をたくさん書いといたぜ。」
「真輝さん…!」
道人は真輝に対して笑みを浮かべると真輝は歯を輝かせてサムズアップで返して来た。
「いいわよ、真ちゃん!今の真ちゃん、最高にデュエル・デュラハンのチャンピオンらしい事してる!」
「よせやい、照れるじゃねぇかい!」
グルーナが真輝の事を褒めると真輝は照れながら右手で後頭部を掻いた。
「むっ!おい、道人!俺も教えてやるからちょっと待ってろ!」
深也はそう言うと近くの椅子に座り、スマホを操作し始めた。
「あらら、準優勝者が対抗意識を燃やし始めたわね…。」
「い、いいんじゃない?嬉しいよ。」
愛歌と道人は真剣にスマホで文章を書いている深也を眺めた。
「助かるぞ、真輝。私の剣技とオリハルコン化に必要な蹴り殴りは噛み合っていないところがあったからな。ちょうど気にしていたところだったんだ。」
ガイア・ジークヴァルもデバイスの中から真輝に感謝した。
「真輝さん、ありがとうございます!必ず役に立ててみせます!」
「おう!」
真輝はそう言うと地面に置いたリュックを背負い直した。
「待たせたな、道人。もう送っといたぜ。」
「あ、ありがとう、深也。」
道人はスマホを取り出し、メールが届いているかどうか確認した。
真輝に負けじとびっしりと書かれている。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか。」
「うん。あ、でもさ。考えてみるとまだ人が戻って来てないから、タクシーやバスが少ないんだよね…。」
「あ、そっか…。」
避難民が解放されたからと言って、まだ完全に日常が戻って来た訳ではない。
当分は買い物などにも支障をきたす事になるだろうと道人は思った。
「道人の方の主、何ならまた俺で移動するかい?」
「いや、そろそろ私のオリハルコン化も解ける頃だ。そうしたら、道人も鎧を纏えなくなる。素の状態で何度もカジートの力で移動するのは危ないだろう。」
カジートの提案に対してガイア・ジークヴァルが道人の身を案じて説明してくれた。
「わかった、ジークヴァルの方の主に従うぜ。」
「うーん、私が車で送って行ってもいいけど…。結構往復する事になるわね…。」
グルーナもみんなが家に帰る手段を考えてくれている。
「忙しくて無理かもしれないけど、大神さんか虎城さん、流咲さん…または整備士のお兄さんに頼んでみるしかないかな…。」
「そうだね。じゃあ、あたし、司令室に行ってお願いして来るよ。」
「あ、俺も行くよ。みんなはちょっと待ってて。」
道人はそう言うと愛歌と共に司令室に向かう。
「あ、司令?」
道人たちが通路を歩いているとちょうど司令が歩いて来た。
「おぉ、道人君に愛歌君。それにユーラ君も。何か用かな?」
道人は司令に帰り道に関する事情を話した。
「なるほどな。だが、我々は仕事が終わりそうもない…。整備士たちもカサエルやジークヴァルのボディのメンテナンスをしているからな…。今すぐというのは難しいかもしれないな。」
「そうですか…。」
「それは仕方ないわね…。」
道人と愛歌は司令から事情を聞いて納得した。
「司令は今からどちらに行くんですか?」
「私は今から一時間だけ休憩時間でね。それでディアスに会いに開発エリアの格納庫に行こうと思ってな。」
「ディアスに?」
「デバイス越しでもいいんだが、せっかくなら対面して話したいからな。」
「そうですか…。」
道人は司令から話を聞いて少し考え始めた。
「…あの、俺も行っていいですか?」
道人は司令にお願いしてみた。
「別に構わないが…。どうしてだい?」
「俺、シチゴウセンたちと一度ゆっくり話してみたいと思ってて…。アトランティスでは一瞬に行動はしてたけど、話してる暇はあまりなかったし…。今回の傀魔階堕との戦いも…。今までは彼らと話せるタイミングがなかなかなかったから…。」
「なるほど、わかった。だが、道人君。君は大丈夫なのか…?」
「はい?」
道人は司令が心配して来たのでついきょとんとなった。
「いや、ドイツから始まってレング・ザ・ダイと、君は今日だけで大分脳に情報を詰め込んでいるからな…。負担が大きいんじゃないかと…。自宅に帰って少しでも休息を取った方が…。」
「あぁ、大丈夫です。確かに自分の存在が揺るがされたりもしましたけど、もう慣れっこですから。」
「しれっとすごい事言うわね、道人…。慣れるもんなの、それ?」
愛歌が思わず道人のメンタル面の強さに突っ込みを入れた。
「そ、そうか、改めて強いのだな、道人君は…。よし、わかった。じゃあ、一緒に来るかい?」
「はい!」
「あたしも行くよ。ダーバラに会いたいしね。他のみんなも暇だろうし、誘ってみよっか。」
「うん、そうだね。」
道人と愛歌は話がまとまり、司令と一緒に開発エリアに行く事になった。
食堂にいるみんなにも声を掛けるため、道人と愛歌、司令は一緒に食堂を目指した。




