292章 マスクドスライド
突然鎧を纏った姿となった潤奈に驚いた道人たちはまるで時が止まったように未だに机の上のフォンフェルのデバイスを見ていた。
「急に光が見えたから来てみれば、一体何が起こったんじゃ…?」
資料室にいた姫も潤奈が発した光に驚いたからか、資料室の入口から上半身を出して恐る恐る見ていた。
「じゅ、潤奈、いきなり姿が変わっちゃったけど大丈夫?」
道人は潤奈の両肩に手を置いて自分の方に向かせて身体を確認した。
「…う、うん。何ともないよ?ありがとう、心配してくれて…。」
「とにかく、今の仮面の事、書物に何か書いてあるかもしれません。調べてみましょう!」
ユーラがそう言うとみんなで資料室に向かった。
潤奈は机に置いたデバイスとデュラハン・ハートを手に持ってから道人たちを追いかける。
みんなで手分けして書物や巻き物を確認し始めた。
「あ!それっぽいのありましたよ?」
ユーラがそう言うと巻き物を置いて広げてみせてくれた。
確かに仮面の絵が描いてあったのでそれっぽかった。
「よし、早速我が読んでみよう!」
姫が真剣な表情で読み始め、道人たちはそんな姫を見守っていた。
「…ふむ。どうやら、ロードはある日、カサエルという旅人と出会ったそうじゃ。」
「カ、カサエル?」
道人はカサエルの名前が出て来たので少し混乱した。
「前世のカサエルでしょうか…?」
「いや、確か前に大樹とカサエルの報告で聞いた事がある…。俺たちの知っているカサエルは名前をもらった形であって、カサエル本人ではないんだ。」
「続けるぞ?そのカサエルは村に泊めてくれたお礼として芸を披露したり、仮面を作ってあげたりしたようじゃ。村が荒くれ者たちや首無し鎧武者たちに襲われたりした際の防衛手段としてな。ロードはこれは後にも役に立つかもしれないといくつか残しておいてくれたみたいじゃ。」
「…それが、あの仮面…。」
潤奈はそう言うと手に持ったデバイスを見た。
「…そう言えば、フォンフェルも前世で仮面を付けて戦ってた…。あの仮面はそれと同じ…。」
「これは愛歌ちゃんたちも呼んだ方が良さそうじゃの…!急いで連絡しよう!」
「うん!お願い、博士!」
式地博士は急いで会社エリアにいる愛歌たちに連絡を取ってくれた。
二十分程で愛歌たちは研究室にやって来た。
格納庫にいるランドレイクにも来てもらった。シルエット大将軍とキルバは開発エリアにいて、ダーバラは格納庫に戻っていた。
「間違いねぇっ、これは前世の海賊の俺が集めていた竜人の仮面だ。」
「おう、俺が見たランドレイクの前世の映像でもこれを付けて戦ってたぜ。」
ランドレイクと深也からも仮面について確認が取れた。
「トワマリーはどう?」
愛歌はデバイスに映るトワマリーに仮面を見せた。
「うン、デバイス越しだトなんともだけド…。女王だった私とお姉ちゃんガ付けてたのト同じものだと思ウ。」
「みんな、すまないさぁ。あっしにも先生の事はよくわからないさぁ。」
デバイス越しにカサエルが話し掛けて来た。
「竜人カサエルは言葉が話せなかったからの。無理もないぞい。」
「まぁ、とにかく。この仮面を使えば私たちも道とんみたいに鎧を纏えちゃう訳ね。」
グルーナは箱に入った仮面を覗いた。
「今度から他のみんなが道人と同じように鎧を纏えるのなら、我らにとっては大分戦力の強化になるな。」
「そうだネ、ジークヴァル。制服バリアと合わせる事もできるのかナ?」
ガイア・ジークヴァルとトワマリーも仮面による戦力強化を望めて嬉しそうだった。
「実は俺、道人のオリハルコンスライドに憧れておったんじゃ…!誰だってヒーローへの変身願望はあるからの!」
「俺もだぜ、何だかワクワクするな…!」
「でもさ、あたしたちが来ても仮面反応しなくない?」
大樹と深也がワクワクする中、愛歌は箱に入っている仮面を見た。
「…私の時はフォンフェルのデバイスとデュラハン・ハートに反応したんだけど…。」
「デバイス…。」
潤奈の言葉を聞いた後、愛歌がトワマリーのデバイスを見ると箱の中の仮面の一つがピンク色に光り、宙に浮いた。
「おぉっ!?何?こんな感じ?」
「…そう、こんな感じ!」
愛歌が宙に浮いた仮面を左手で指差して潤奈に確認した。
仮面はデバイスの中に入って行った。
「…あれ?私の時は変身できたのに…?」
「どういうこっちゃっ?」
愛歌はデバイスを操作して確認する。
「と、とにかく!俺たちもデバイスをかざしてみようぜ!」
「おう!」
深也と大樹は一緒に右手に持ったデバイスを前に出した。
二つの仮面が青と黄色に光り、デバイスの中に入って行った。
「どれ、私も。」
「我もじゃ!」
続けてグルーナと姫も右手に持ったデバイスを前に出すと二つの仮面が灰色と虹色に光り、デバイスの中に入って行った。
「よし!真輝、お前も続け!」
「でも、俺デバイス持ってないぜ?」
深也に催促されたが、真輝は自分を右手で指差してきょとんとしていた。
「スマホで一か八かやってみろよ!」
「スマホでいいのかぁっ?」
深也に言われて渋々、真輝が右手に持ったスマホを前に出すと仮面は問題なく宙に浮き、青く光った。
「おぉっ、スマホで大丈夫だった!?」
仮面は真輝のスマホの中に入って行った。
「あっという間に仮面一つだけになっちゃった…。」
道人は潤奈、ユーラと一緒に箱の中を確認すると仮面が一つだけぽつんと残ってしまった。
「後一つだけだと司令さんか海音さんのどちらかしか貰えなくないですか?」
ユーラはそう言いながら残った仮面を指差した。
「海音は自前で鎧持ってるしな…。あいつの事だ、司令に譲りそうな気がする。」
深也の言う通り、司令に仮面を譲る海音の姿は容易に想像できた。
「しかし、デバイスに入ったはいいものの、変身しねぇな?」
「道人みたいに掛け声が必要なんじゃない?」
「何かみんなノリノリだね…。」
楽しそうにしている深也と愛歌を見た後、道人は呟いた。
「へぇっ、そんなに変身できるのが嬉しいものなのか?」
カジートがガイア・ジークヴァルに尋ねてた。
「あぁ、今までは制服バリアという防衛手段はあったが、それでもパートナーが狙われる可能性は完全になくなった訳ではなかったからな…。」
「えぇ、みんな、その点を気にしていたのだろう。」
「なるほどな、そういう事か。」
カジートはガイア・ジークヴァルとソルワデスの説明を聞いて納得した。
「よし、試してみよう…!」
愛歌と深也、大樹は横に並んで目を瞑り、深呼吸をした。その後、一斉に開眼した。
「プリンセススライド!」
「俺様スライドォッ!」
「バラエティスライドじゃぁっ!」
愛歌、深也、大樹がそれぞれ叫んでも何も起きなかった。
「…おい、不発だと何かとてつもなく恥ずかしくねぇか…?」
深也がそう言うと愛歌も大樹も頬を染めていた。
「甘いわね、三人共!まだ恥じらいが残っているわ!ビューティフルスライド!」
グルーナがポーズを決めて叫んだが何も起きなかった。
「よっしゃっ、姫さんも続け!」
「う、うむ!大和撫子すらいど!」
姫もキャプテン・雷牙に応援されながら叫んだが何も起きなかった。
「あ、あの、みんな。多分、俺やユーラみたいに何か条件を満たさないとなれないんじゃないかな?潤奈がさっきなれたのも何か条件を満たせたからなのかも。」
「条件ねぇっ…。」
愛歌たちは真剣な表情で手に持ったデバイスを見ていた。
「潤奈、今は変身できるの?」
「…えっと、やってみる…。」
潤奈は軽く咳払いをした後、デバイスを構えた。
「…シャ、シャドースライド!」
潤奈がそう言うと身体が発光し、鎧姿になれた。
「…あ、なれたね。」
潤奈は自分の身体を不思議そうに見た後、元の姿に戻った。
「な、何で潤奈はなれるの?」
「ふむ…。ひょっとすると、フォンフェルが今いないのが関係しておるのかも知れんな…。」
愛歌の疑問に式地博士が答えた。
「そっか、もしかしたら自分がいない間はこの力で潤奈を守りたい、って言うフォンフェルの想いなのかもしれないね。」
「…フォンフェル…。」
道人の言葉を聞いた後、潤奈はフォンフェルのデバイスの画面に優しく触れた。
「う〜ん…?条件?条件ん〜…?」
愛歌たちは未だに自分が持つデバイスを見て考え込んでいた。
「みんな、今は考えたって仕方ねぇさ。そろそろ晩飯だし、食堂行こうぜ?俺、腹減っちまったよ。」
真輝はそう言うと両手でお腹を押さえた。
「真輝さんの言う通り!ほらほら、みんな!会社エリアに戻ろう!あ、ちゃんと片付けてからね。」
「そうじゃな。よし、残った仮面はわしが管理しておこう。」
道人と式地博士がそう言うと愛歌たちは頷き、資料室の資料を片付けた後、会社エリアの食堂を目指して式地博士の研究室を退室した。




