291章 不思議な仮面
道人たちは森の中に入り、今は坂道を登っていた。
ガイア・ジークヴァルたちが先に歩いて道人たちが歩きやすいように石や草などの通行に邪魔なものをどけていてくれた。
もう日が落ち始めているが、ガイア・ジークヴァルたちの目の光のおかげであまり暗くはない。
「道人、待たせたな。」
空を飛んで先行してくれていたソルワデスが戻って来た。
飛行形態から人型に戻って着地する。
「私が先に目的地の様子を見て来たが、ぼやけた小屋のようなものがあった。」
「それって…。」
「うむ、独逸の時と同じじゃな。後で我が触れてみよう。」
「お願いね、姫。」
「うむ、お願いされたぞ!」
姫は嬉しそうに道人の右腕を頬ですりすりする。
ユーラも左腕にしがみ付きながら歩いているので道人は両腕が塞がっている状態で歩いていた。
道人ももうしがみ付かれるのに慣れ始めていた。
「あ、もう見えて来た!」
道人たちの前に小屋が姿を現した。ソルワデスの言う通り、小屋は何だかぼやけている。
道人たちは小屋の前で立ち止まった。
「へぇっ、木でできた家か。さっきの道人の婆ちゃんちと比べると何だか脆そうだな…。」
「これでも雨風を防げて頑丈な方なんだぜ?」
「へぇ〜っ…。」
カジートが実体化したヤジリウスの説明を聞いて興味深そうに小屋を見ていた。
「ウェントたちが来た形跡はなさそうだね…。」
道人は周りを見渡すが、特に荒らされた形跡などはなかった。
「よし、早速触れてみよう。」
姫が霊力を発した右手で小屋に触れると道人の身体も発光し出す。
乱れた映像のロードが姿を現した。
「ロード?でも、服装が…?」
道人たちの前に現れた今回のロードは騎士甲冑ではなく、少しボレた村人のような服装をしていた。
「うむ、恐らく日本にいた頃の郎戸の姿なのじゃろう。」
ロードは頷いた後、もう消えそうになっていた。
「ロード?もう身体が…?」
「ドイツの時は我が愛剣レーヴァテインがあったからな…。今回はそういった強く霊力を残せるものがないのかもしれないな…。」
「ならば、早く中に入ろうではないか!」
姫に催促された道人たちは小屋の中に早速入った。
「何もない…。」
小屋に入って周りを見る道人たちだったが、小屋の中には何もなかった。
ロードが床を何度も指差していた。
「床?床に何かあるの?」
ロードは頷くともう消滅してしまった。
「…! ロード!」
光の粒になったロードは道人の身体に入って行った。
道人は自分の胸に右手を当てた。
「ふむ、どうやら床が開くようになっておるようじゃ…。」
「よし、開けてみよう。」
ガイア・ジークヴァルとヤジリウスが床の一部を持ち上げてみせた。
「箱がある…。結構大きいな…。」
床の下には紐で頑丈に結ばれた大きな箱が置いてあった。道人は手に持って床に置いた。
「よし、開けてみよう…。」
道人は紐を解き、箱の蓋を開けた。
「…仮面?」
箱の中にはたくさんの仮面が入っていた。暗闇の小屋の中なので道人には不気味なものに感じられてしまった。
仮面を見つけた後、小屋は消滅し始めた。
「おっと、早く外に出よう!」
「よし、私が箱を持とう!」
道人が箱の蓋を閉じた後、ガイア・ジークヴァルが持ち上げて小屋の中から外に出た。
小屋は光の粒になってなくなってしまった。
「消えちゃった…。何だろう、この仮面…?」
道人は記憶を巡らせると心当たりが一つあった。
「もしかして、イギリスまでランドレイクの試練を受けに行った際に深也の報告にあった竜人カサエルが作った仮面…?」
前世の海賊だったランドレイクは竜人カサエルが作った仮面をコレクションしていた、という話だった。
それを踏まえて道人は改めてガイア・ジークヴァルが持っている箱を見た。
「とにかくじゃ。帰ってまた書物を調べれば何かわかるのではないか?」
「そうだね。よし、開発エリアに帰ろう!」
「よし、俺の出番だな!博士とやらのいる場所ならもう俺が記憶してるから、すぐに戻れるぜ。」
カジートはそう言うとカジートブレードになり、亜空間の裂け目を作り出した。
「道人の方の主、俺をしっかりと持ってな!」
「う、うん!」
道人はオリハルコンスライドし、ヤジリウスを歯車付きの布に戻した。
カジートを持った道人は亜空間の裂け目に飛び込んだ。
亜空間をしばらく漂った後、目の前にあった亜空間の裂け目から外に出た。
「おぉっ!?びっくりした!?」
「ご、ごめん、博士…。」
「心臓に悪いぞ…。」
椅子に座ってお茶を飲んでいる式地博士の近くで道人は姿を現した。
「よし、また行って来るぜ。」
カジートはそう言うとまた亜空間の裂け目を作り、入って行った。
「ごめん、博士。ジークヴァルたちが戻って来るまで続くから…。」
「うむ、わかった…。」
「…道人、帰って来たの?」
潤奈も博士の研究室にいた。
「うん。ただいま、潤奈。潤奈一人?」
「…うん、フォンフェルの様子を見に来たの。愛歌たちは報告書を書いてたり、勉強してたり…。お父さんは会社エリアにいてもらってるよ?」
潤奈は他のみんなが今どうしているかを教えてくれた。
何度かカジートが亜空間で行き来を繰り返し、ガイア・ジークヴァルたちは戻って来た。
「よし、道人たちは例の仮面を博士に見せるのじゃ。我はその間に書物を調べてみよう。」
「うん。よろしくね、姫。」
姫はそう言うとやる気満々で資料室へと走って行った。
「博士、見てもらいたいものがあってさ。」
ガイア・ジークヴァルは両手に持った箱を机に置き、箱を開けた。
「この仮面なんだけどさ。」
「ふむ…。うむ?何だか光って…?」
「えっ?」
道人たちが箱の中を見ようとすると黒い仮面が突然浮遊した。
「おぉっ!?」
「ま、また心臓に悪いぞ…。」
式地博士が右手を胸に当てて驚いていると黒い仮面は潤奈の前に浮遊した。
「…わ、私?」
黒い仮面は潤奈がそう言うと頷いた。潤奈は恐る恐る黒い仮面を手に取る。
道人とユーラは潤奈に近寄って一緒に仮面を見る。
「…この仮面、何でだろう…?初めて見たはずなのに…何故だかどこかで見た事がある気もする…。」
潤奈は色んな角度から仮面を見た。
「じ、潤奈、何か光ってますよ?」
「…えっ?」
潤奈はユーラに言われ、光っているフォンフェルのデバイスとフォンフェルのデュラハン・ハートを手に取って見た。
「…フォンフェル?」
潤奈は光っているデバイスとデュラハン ・ハートをしばらく見つめた。
「…この仮面を付けてって言ってるの…?」
潤奈はデバイスとデュラハン・ハートを一旦机に置き、仮面の裏側を見た。
「だ、大丈夫?潤奈…?」
「…うん、フォンフェルが伝えてくれているものだもの。怖くはないよ。じゃあ、付けてみるよ?」
潤奈はゆっくりと仮面を顔に付けた。その時、潤奈の身体が輝き始めた。
「わっ!?じゅ、潤奈!?」
潤奈が顔に付けた途端、古びた仮面は新たな仮面に姿を変えた。
潤奈の身体に黒い鎧が装着されていく。
潤奈は羽が付いた黒騎士の姿となった。
「これって、俺の鎧姿と同じ…?」
潤奈の鎧姿は道人がオリハルコンスライドした時の姿に似ていた。
ただ、道人が見に纏っている鎧とは違って女性的なフォルムをした鎧だった。
「…な、何?一体何が…?」
潤奈は慌ただしく自分の鎧姿となった身体を見始めた。
すると、潤奈はすぐに元の姿に戻った。仮面はデバイスの中に入っていった。
「…な、何だったの、今の…?」
道人たちは驚きながら光が収まり、机に着地したフォンフェルのデバイスをしばらく眺めていた。




