290章 亜空間跳躍の一太刀
「えっと、斬れ味を試すって言うのはカジートを使って目的地まで行くって事?」
道人はカジートの申し出を改めて確認した。
「おう、行き場所は知ってる場所から近かったんだろ?なら、俺を使って行った方が手っ取り早いぜ?」
カジートは右手の親指で自分を指差した。
「道人の方の主が俺を使って移動したらよ、俺もその場所を把握できる。それからは二人ずつ俺が行ったり来たりで運べばいい訳だ。」
カジートは両手の人差し指を立て、両腕を交差したり離したりする。
「ただ、この移動方法は人間の生身の身体にはかなり負担が掛かるんだよな…。」
「そうか、だからカジートは実験エリアから開発エリアまで来る間にはそのやり方を言い出さなかったのだな?」
「確かに、短距離移動で体力を消耗するのは割に合わないな。」
ガイア・ジークヴァルとソルワデスがカジートの気遣いを代弁してくれた。
「その通り、俺を使って移動するには隣の島…かなりの近場だったしな。」
「我は式神じゃし、ユーラはおりはるこんじゃから平気だとは思うが…道人、其方は大丈夫か?今日も大変だったであろう?」
姫が道人の体調を心配して来た。
「心配してくれてありがとう、姫。大丈夫、あまり疲れは感じてないよ。自分の事もわかったし、逆に漲って元気なくらいだよ。」
道人は姫に元気である事を証明するために右手でガッツポーズを取って見せた。
「いいじゃねぇか、試してみろよ。何、うまくできなかったらできなかったで、帰りは帰りで何かあったらでよ。トラックを呼んだり、俺が雷紙丸で運んだりで色々と手はあるさ。」
キャプテン・雷牙が道人と姫に帰りに何かあった際の考えを述べて来た。
「こんな状況で戦闘以外で新たな技が試せる機会なんてなかなかねぇしな。それに道人とジークヴァルたちが更に強くなるのを間近で見られるってのはそれはそれで見てみたいしな…!」
「ほう?燃えておるな、きゃぷてん。」
「おう!俺は強敵が強くなればなる程、闘志が燃えるからな…!」
キャプテン・雷牙は楽しそうに両手の爪でグーパーを繰り返した。
「よし、早速実体験だ。どっか開けた場所に行こうぜ。なるべく集中できる静かな場所がいいな。」
「それなら…屋上なんてどうだろう?」
屋上なら人は滅多に来ないはずだ、と道人は考えた。
道人たちはエレベーターで開発エリアの屋上までやって来られた。
道人の思った通り、人気はなかった。
「よし、オリハルコンスライド!」
道人は制服姿からオリハルコンの鎧の姿に変わった。
まだジークヴァルはガイア化したままなので問題なく鎧姿になれる。
「よし、行くぜ!」
カジートは高く跳び、大剣に姿を変えた。
道人は剣形態になったカジートを両手に掴んだ。
「カ、カジートブレェェェード!!」
道人は両手に持ったカジートの刃を真っ直ぐ前に向けた。
ロボットアニメなどでよく見る事が多いポーズだ。
「何だ、その名前?」
「な、何となく言ってみたくて…。」
「ま、その方が道人の方の主が気合が入るってんなら、それでいいか!よし、今日からこの姿の俺はカジートブレードだ!」
カジートはノリが良くてカジートブレードという名前を受け入れてくれた。
「よし、まずは目を瞑って剣を構えるんだ。」
「う、うん。」
道人は両手に持ったカジートブレードを両手で握り直し、剣道のように中段構えのポーズを取った。
「大丈夫か?重くないか?」
「うん、大丈夫。ガントレットの力で余裕で持てるよ。」
「そりゃ良かった。次に行くぜ?目を瞑って行きたい場所を強くイメージするんだ。」
「イメージ…。」
道人は目を瞑って集中し、目的地を頭に思い浮かべた。
「いいぜ、その調子だ。まるで俺に行き場所が伝えるかのように念じてみるんだ。」
道人は無心になり、両手に持ったカジートブレードを上に上げた。
「えい!」
道人は開眼し、カジートブレードを勢いよく振り下ろした。
すると、カジートとの戦いで見たものと同じ亜空間の避け目ができた。
「やった?できた?」
道人は自信なさそうに亜空間の裂け目を見る。
「初めてにしては上出来だ!さすが道人の方の主!ほら、早く飛び込まねぇと閉じちまうぜ?」
「う、うん。それじゃぁっ、みんな!お先に!」
道人はカジートを持ったまま亜空間の裂け目に飛び込んだ。
道人は亜空間を漂った。
「大丈夫か?気分悪くねぇか?」
「大丈夫。フォンフェルのワープヘッドで慣れてるからね。」
しばらくすると出口の亜空間の裂け目が見えて来た。
「あれに入ればいいんだね。」
「おう、そうだ!」
道人は亜空間から出て、地面に着地した。
「わっ!?すごい!本当に婆ちゃんの家の前だ!」
道人は右を向くと道人の祖母・小春の家の近くにいた。
「あ、でもイメージした場所とちょっと離れてるかな…?」
道人はそう言いながら周りを見た。
「何、初めてでこれならかなり筋がいいぜ、道人の方の主。落ち着いてたしな、大したもんだ。」
カジートは一度人型形態になって周りを確認した。
「よし、場所は覚えたし、道人の方の主の存在を感知もできる。後は俺が行ったり来たりで十分だ。少し休んで待ってな。」
カジートはそう言うとカジートブレードとなって亜空間の裂け目を作り、この場から消えた。
「…婆ちゃんの家…。」
道人は制服姿に戻り、恐る恐る庭から家に入った。家に人がいる気配はなく、真っ暗だった。
「…やっぱり爺ちゃんと婆ちゃん、傀魔怪堕に連れ去られてたみたいだな…。待っててね、すぐに地上世界に帰してあげるからね…。」
道人はそう言いながら、小春がよく座っていた床に優しく手を置いた。
しばらくするとカジートが往復をしまくり、ガイアグレート・ジークヴァル、キャプテン・雷牙と姫、ソルワデス、と三回往復して戻って来た。
「大丈夫、カジートの方こそ疲れてない?」
道人はカジートに近寄って心配した。
「愛剣の心配をしてくれるとは我が主の鏡だな、道人の方の主!俺にとっちゃ、次元移動は歩くのと変わらない。心配ご無用だ。」
「み、道人よぉ〜っ…!」
姫が涙目になって道人に抱きついて来た。
「わわっ!?姫!?」
「足が地面についてないのがこんなに心許ないとは思わなかったぞぉ〜っ…!あ奴も跳ぶ前に怖い事言うしの!」
姫は涙目になりながらカジートの方を向いた。
「いや、俺から離れると亜空間の狭間に永遠に彷徨う事になるから気をつけなって言っただけだぜ?」
「あんな感じじゃ!」
姫はカジートをビシッと右手で指差した。
「姫さんを泣かすとはふてぇ野郎だな。」
キャプテン・雷牙がカジートの前に立った。
「悪かった、悪かったよ。怖がらせてごめんな?」
「うむ、素直な謝りじゃ!許す!」
「姫さんが許すんなら、許す!」
「よし、許された!」
険悪な感じになるかと思われたが、カジートもキャプテン・雷牙もすぐに仲直りした。
「しまった、人数の事を考えてガイアグレート・ジークヴァルになったので道人に抱きつく機会を失いました…!」
ユーラはそう言うとガイア・ジークヴァルと合体解除し、人間形態に戻ってすぐに落ち込んだ。
「いや、ユーラは往復する事になるカジートの事を気遣ってくれたんだよね?ありがとう、ユーラは優しいね。」
「み、道人ぉ〜っ…!」
ユーラは道人に飛びついて来た。
「結局抱きついてるしね…。」
道人は糸目になってユーラにただ抱きつかれるのをただ良しとした。
「して、道人よ!ここから歩けば目的地なのだな?」
姫は道人とユーラの間に手を入れて離させた。
「う、うん。森の中を歩いて行って、そんなに時間は掛からないと思う。よし、早く行こうか。」
もう少し経てば日も落ちてしまう。道人たちは近くの森に向かう事にした。




