289章 人間たちの移動手段
道人たちは実験エリアの複雑な通路を通り抜け、ようやく外に出られた。現時刻は夕方五時過ぎだった。
「どうやら俺たちが戦っている間に避難民たちの解放はほとんど終わったようじゃの…。」
虎城と通話をしている大樹が道人たちがレング・ザ・ダイと戦っている間の事を教えてくれた。
道人たちが戦っている間に辰治たちが頑張っていてくれたようだ。
「道人よ、我は明日から地上と傀魔怪堕を行き来する事になる。じゃから、今から開発えりあに行かぬか?我が書物を解読して、ロードの残滓が残っているという村の場所を教えてやろう。」
「あ、そっか。いけない、レング・ザ・ダイ絡みで大事な事が頭からすっぽ抜けるところだった…。」
道人はロードに日本にも自分の残滓が少し残っているから行ってみるといいと言われた事を思い出した。
「ウェントにロードの残滓を取られる訳にもいかないし…。今日中に行った方がいいだろうね。いくらウェントでもドイツから日本まで戻って来るのは時間が掛かるはずだろうし…。」
「でも、今から行くと大分遅くなっちゃうわよ?その、道人も今日も色々と大変だったし…。」
愛歌は寂しそうにし、道人の精神状態を心配してくれた。
「大丈夫、俺は平気だから…。まだジークヴァルもオリハルコン状態だしね。今日行っておきたいな。ありがとう、愛歌。心配してくれて。」
「そっか…。よし!ドイツであった事の報告書はあたしが書いといてあげるから!早く行って来なよ?それからさ、今日は家に帰って道人のお母さんを安心させてあげよう?」
「うん、そうだね。ありがとう、愛歌。」
「ふふっ、ありがとう二回も行ってるよ?道人…。」
愛歌とそんな会話をしていると道人は少し見つめ合ってしまった。
「こほん。さて、ウェントと遭遇した事も考えて護衛役も必要な訳じゃが?」
姫が道人と愛歌の間に急に入って来たので二人して慌ててしまった。
道人と愛歌は姿勢を正した。
「そ、そうだね。姫の陰陽術が必要だろうから、姫とキャプテン・雷牙は確定かな?」
「どっか行くんならよ、俺もついて行っていいか?道人の方の主。」
カジートが同行したいと申し出て来た。
「地球の事をもっと知りたいしな。」
「別にいいけど…。じゃあ、お願いできるかな?」
「よし、来た!」
カジートは自分の胸の顔に右拳をポンっと叩いた。
「そう言えばさ、カジートの亜空間移動って君の身体に引っ付く形なら、何人か連れて移動する事ってできるの?」
道人はカジートの亜空間移動について質問した。
「そうよね…。惑星リフドーから地球まで一瞬で来られる程のワープ航法なんだから、活かさない手はないわよね…。」
グルーナはそう言うとカジートをじろじろと観察し始めた。
「期待させて悪いんだけどよ、亜空間移動はできても俺と使い手、後もう一人くらいが限度だな。それに行き先がある程度わかってねぇと移動はできねぇんだ。さっきもキルバのいる場所を感知して移動して来た訳だからな。それに人間の身体だとかなり負担が掛かるから、何度も移動するのはおすすめできねぇな。」
カジートはそう言うとキルバを見た。
「…じゃあ、回数や距離に違いはあるけど、私の持っているワープヘッドと大体性能は同じだね。知り合いを感知した場所にも跳べるのはワープヘッドにはできない事だけど…。」
潤奈かカジートとワープヘッドの違いに関して教えてくれた。
「じゃあ、俺と姫とジークヴァル、ソルワデス、キャプテン・雷牙で行って来るよ。」
「…気をつけてね、道人?」
「うん!」
道人は潤奈とシルエット大将軍の方を向いて力強く頷いた。
「あまり足を引っ張るなよ、カジート?」
「お前もあまり場の空気を凍らせずに馴染めよ?」
「喧嘩は駄目さぁ。」
カジートとキルバが互いに挑発し合う中、カサエルが仲裁に入った。
道人たちは会社エリアに向かう愛歌たちとは一旦別れ、博士たちがいる開発エリアにモノレールで向かった。
「用があるのは隣の島か。なら、まだいいか。」
「…?」
カジートが何か含みがある言い方をしたのが気になったが、道人たちは開発エリア行きモノレールに乗った。
道人は座席に座り、当たり前のようにユーラが道人の右腕に、姫が左腕に寄っ掛かる。
「何だ、この乗り物?やけにトロいな?乗る意味あるのか?」
カジートは物珍しそうにモノレールの車内をきょろきょろし出した。
「そうか、カジートの目にはモノレールは珍しく映るか。」
「まぁ、確かに遅いよな。」
「飛んだ方が速いな。」
ガイア・ジークヴァルとキャプテン・雷牙、ソルワデスはカジートと並んで会話をしていた。
「人は多くの移動手段を持っているんだ。車や電車、飛行機…。人の数だけ乗り物も多く存在している。だが、全員が乗り物を操縦できる訳ではない。人によっては乗り物を扱える者に頼らなければならないんだ。そんな中で各々がスピードを出して勝手に移動していたら、調和が乱れて事故などが多発してしまうからな。」
「なるほどな、所有する者の責任やチームワークが大事な訳か。」
ガイア・ジークヴァルがカジートに説明してくれた。
「考えてみるとこの中で電車慣れしてるのは俺だけか。」
道人の言う通り、今いるメンバーはあまり電車に馴染みがないメンバーだった。
「ってか、ジークヴァル、乗り物の説明上手だったね…。」
「ははっ、そうか?こう見えて現代知識はだいぶ学べているのさ。」
道人に褒められてガイア・ジークヴァルは機嫌を良くした。
「我もこのような鉄箱に身を揺らされるのは未だ馴染めぬの…。」
「はい、私もアトランティスでもこのような乗り物はなかったですし…。」
姫とユーラもあまり乗り物に乗った経験がない。
道人の腕にしがみ付いてるのは乗り物に対して不安に思っているところもあるかもしれない。
「ま、トロいのは確かだがよ。その内慣れるさ。ほら、景色を見ながら移動するのもなかなか乙なもんだぜ?」
道人たちはキャプテン・雷牙が指差した方向を一斉に見ると夕日に染まった海を見る事ができた。
「確かに何度見ても地球の海も綺麗なものだ…。」
ソルワデスもつい海を見て感想を述べた。
「なるほど、運転を人に委ねれば景色を楽しみながら移動できるって寸法かい。」
「そういう事だな。」
カジートはモノレールの良さがわかったみたいでガイア・ジークヴァルも嬉しそうだった。
道人たちが景色を眺めているとモノレールは開発エリアに到着した。
ガイア・ジークヴァルたちが同行してくれているのでほとんど顔パス状態でスムーズに式地博士の開発室まで来られた。
「おぉ、道人君たち。何じゃ?会社エリアに行ったのではなかったのか?」
道人は式地博士にロードから聞いた話を話した。
「なるほど、それは急いだ方が良さそうじゃな。もう日が暮れておるし、気をつけて行って来るんじゃぞ?」
「はい!わかりました、博士!」
道人たちはそう言うと早速資料室に入った。
みんなで資料を探し始めた。
「あった、これだ!」
しばらくすると道人は地図が描かれた巻き物を見つけ、すぐに机に置いて姫に見せた。
「ふむ、ここからそんなに離れてはおらぬの…。」
「ロードがいた村は後に空野家の家系になる者だから、それは近いだろうね。よし、早く行こう!」
道人がそう言うと巻き物を持って資料室を出ようとする。
「おっと待ちな、道人の方の主!さっき風景を見ながら移動するのもなかなか乙なもんだ、って話を聞いといて何なんだが…せっかくだ、俺の斬れ味を試してみないか?」
「えっ?」
道人は立ち止まり、振り返って得意げに両手を腰に当てているカジートを見た。




