277章 シルエット大将軍の正体
道人たちを乗せたトラックはデュラハン・パークに到着した。
解放された避難民たちも実験エリアでの爆発音が気になって騒いでいた。
トラックは道路を走って実験エリアを目指し、駐車場でトラックを止めた。
「みんな、急ごう!」
道人がそう言うとみんなは頷いて走り出した。
「もう!今くらいセキュリティの厳重さはは緩和してよ!」
愛歌が実験エリアのセキュリティの厳しさに苦言を呈したが、無理もないは愛歌自身にもわかっている。
道人たちは仕方なく、入り組んだ通路とカードキーやパスワードを入力して進み続ける。
「道人、司令たちから連絡!とりあえず、シルエット大将軍って人たちをドローンで誘導して実験エリアのフィールド内に入れるって!」
愛歌が通話で聞いた話を道人たちに伝えてくれた。
どうやら司令たちはかつてジークヴァルとライガが二度戦った場所にシルエット大将軍たちを入れる事にしたようだ。
外にいる避難民たちの目に止まらないようにするためだろう。
「わかった、俺たちもそこに向かおう!」
実験エリアは元々通路が入り組んでいるので進路変更する必要はなく、道人たちはそのまま進み続ける。
「…道人!」「道とん!」
「潤奈、グルーナさん!」
潤奈とグルーナも開発エリアの博士の研究室からこちらに向かって来たようだ。
道人たちはそのまま合流して目的地を目指す。
「深也たちも今、向かってるって!」
「わかった!」
愛歌が司令室からの続報を伝えてくれている中、道人たちは突き進んで目的地に辿り着いた。
大きい防犯ガラスから広大な大地のフィールドを見た。
すぐにドローンが二機飛んでいるのが目に入った。開発エリアにいる博士たちと司令室にいる司令たちに状況を伝えるためのドローンだろう。
「すまない、騒がせてしまったな…!」
シルエット大将軍が入って来て、シルエリオンと共に地面に着地した。
シルエット大将軍の声は室内マイクに拾われて道人たちの部屋でも問題なく聞こえた。
「なるべくなら、奴を撒いてからここに来たかったのだが…!」
シルエット大将軍の目線の先に大きな盾を持った赤い鎧のデュラハンが静かに着地した。
「無駄だ。お前が我が世界レング・ザ・ダイにとって禁忌を犯している以上、私はお前を裁く義務がある。」
「くっ!」
赤い鎧のデュラハンはゆっくり右手を前に出すと追尾用の槍を二本出現させ、シルエット大将軍に向かって飛ばした。
シルエット大将軍は鞘から槍を抜き、フィールドを駆け回る。槍を回転させて向かって来る追尾用の槍を弾いていく。
「レング・ザ・ダイの鎧を勝手に持ち出した上に改造するなどあまりにも罪深い。恥を知れ。」
「ふっ、これも全てはヴァエンペラを倒すためなのでな…!」
シルエット大将軍はシルエリオンと共に空を駆け、追尾用の槍から逃げ回る。
「死人の身でありながら、更に他の惑星に干渉するとは…。全く、呆れ果てるな。」
「何故そこまで掟に拘る!?ヴァエンペラはお前たちにとっても無関係な存在ではないのだぞ!?」
シルエット大将軍は赤い鎧のデュラハン の頭上を通り過ぎ、追尾用の槍を赤い鎧のデュラハンにぶつけるように仕向けた。
「私はそんな間抜けではない。」
赤い鎧のデュラハンは盾を地面に刺した後、向かって来た槍をキャッチして合体させて長槍に変えた。
その場から跳躍してシルエット大将軍と槍をぶつけ合い始めた。
「やれ。」
赤い鎧のデュラハンは地面に刺した盾から赤いビームを発射した。
「何っ!?」
「今までお前に見せていなかった奥の手だ。」
シルエット大将軍は咄嗟にバリアを展開してビームを防いでみせた。
「我が槍はバリアなど容易く貫く!」
赤い鎧のデュラハンは槍による強烈な突きを繰り出した。
「ぬかった!?」
シルエット大将軍は吹っ飛び、シルエリオンと共に地面に倒れた。
「終わりだ、その鎧は返してもらう。」
赤い鎧のデュラハンは槍を二本に分離し、シルエット大将軍に向かって投げた。
「させないさぁっ!」
カサエルが姿を現し、シルエット大将軍の前に立った。三つの三度笠を展開して飛んで来た槍からシルエット大将軍を守った。
「ふん。」
赤い鎧のデュラハンは投げた追尾式の槍を一旦手元に戻して一本に合体させて右手に持つ。
左手を横に伸ばすと地面に刺さった盾が飛んで来てキャッチした。
「助太刀に参ったさぁっ!」
「おぉっ、かたじけない!法師殿!」
「カサエル、大樹!」
大樹がカサエルの近くに立ち、道人たちに向かってサムズアップした。
「やれやれ、ランドレイクたちにも避難民の解放作業を手伝わせていて良かったぜ。」
「へへっ、だな!」
深也と真輝が会話をするとランドレイクとエッジヴァハムートもシルエット大将軍の前に立った。
「深也と真輝さんたちも!」
「さぁて、これでこっちはデュラハンが四体だ。どうするよ?」
深也はそう言うと拳をポキポキと鳴らし始めた。
深也らしいが側から見たらこっちが悪役みたいである。
「数など問題ではない。」
「ほう?随分な自信だな?」
「そう言う意味ではない。私はお前たちと戦うつもりはない。戦ったら私もレング・ザ・ダイの掟を破る事になってしまうからな…。」
赤い鎧のデュラハンは槍を消して立ち上がったシルエット大将軍をゆっくりと指差した。
「私はその男、イチ・マノンシアを裁ければそれでいい。」
「…えっ?」
潤奈が真っ先に声を出し、道人たちは一斉に潤奈の方を見た。
「マノンシアって…。」
道人は口に出して確認した。
潤奈の本名はジュンナ・マノンシア。イチ・マノンシアは潤奈やマーシャルの父親の名前だった。
「…やっぱり…!お父さん!!」
潤奈は防犯ガラスに両手を当てて叫んだ。
「バラされては仕方がない…。如何にも!私は惑星リフドーの死者の世界レング・ザ・ダイからやって来たイチ・マノンシア!ヴァエンペラの許されない愚行の数々を見兼ねていても立ってもいられなかったのでな!禁忌を犯し、チキュウへとやって来た!」
「あなたが、父ですって…?」
「…! マーシャル!」
博士の研究室で新型フォンフェルを造っていたマーシャルがドローン越しで話を聞きつけたのかワープして来た。
マーシャルはガラス越しで潤奈の近くに浮いた。
「ジュンナ、マーシャル…。」
「その男は死人で肉体がない身にも関わらず、レング・ザ・ダイの鎧を盗み出して憑依し、ここまでやって来た訳だ。」
赤い鎧のデュラハンが説明してくれた。
「頼む!わかってくれ、キルバ殿!咎なら後で必ず受ける!ヴァエンペラはそれ程の事を犯してでも倒さなければならない相手なのだ!」
赤い鎧のデュラハンの名がキルバという事がわかった。
シルエット大将軍は右手を胸に当ててキルバに訴え掛ける。
「ならん。レング・ザ・ダイの掟は絶対なのだ。」
「待って下さい!!」
道人がガラス越しでキルバに向かって叫んだ。
「なら、まず俺たちにレング・ザ・ダイの事を教えて下さい!それで納得できるかどうかを判断したいんです!だから、潤奈とマーシャルのお父さんに手を出さないで下さい!」
「…! 道人…。私からもお願いします!話を…!」
「………。」
キルバは道人と潤奈の言葉を聞いて思考に入った。
「…いいだろう、このままではこの場にいるデュラハンたちが納得できずに一斉に襲い掛かって来そうだからな…。話してやろう、我が世界レング・ザ・ダイに関してな…。」




