276章 予期せぬ来訪者
ウェントとフィアツヴァイフェルン=ドラッヘが去った後、城は完全になくなって平地になった。
「終わってみれば、念のための命綱は必要なかったの。良い事じゃ。」
姫はそう言うと木に巻き付けた糸を回収した。
「うん。良い人だったな、ロード…。」
道人は改めてロードに感謝した。
道人たちは首無し鎧武者二人について行き、来た際に通ったドイツと傀魔怪堕を繋ぐ場所まで歩いていた。
「ねぇ、道人。ロードが言っていた事なんだけど…。日本に微かに残ってるロードの残滓は大丈夫なのかな?放置してるとまたウェントのビーストヘッドに食べられる可能性が…。」
愛歌が日本にあると言うロードの残滓が無事なのかどうかの心配をして来た。
「いや、俺考えたんだけど…。あれってもしかしたら、ウェントにとってのビーストヘッドの試練なんじゃないかな?」
「なるほど、確かにな。ロードの残滓を食べたというよりはこの地に残るアレウリアスの過去に関するものを食べた、という事か。ロードとアレウリアスは最後に戦ったくらいしか繋がりがないはずだからな。」
ジークヴァルが道人が言った事の補足説明をしてくれた。
「だから、日本に残ってるロードの残滓は大丈夫だとは思うけど…。確証はないからね…。どの道、急いだ方がいいのは確かだけど…。」
「よし、ぱーくに戻ったらまた資料室に行こうではないか!」
姫が気合十分に両手で握り拳を作った。
しばらくすると首無し鎧武者二人が立ち止まった。
「なるほど、帰りは槍を地面に刺してぐるぐるする必要はないのね。」
愛歌の言う通り、今まで道人たちが見てきた傀魔怪堕の者たちは帰る際は普通に地面に沈んで行っていた。
「高いところから雷紙丸で降りるのが嫌なら、鎧武者たちについて行くべきなんだけど…。」
愛歌はそう言うと道人に抱きついているユーラを見た。
「いや、やっぱりあたしも雷紙丸で帰るわ!」
「ぬぅっ、其方ら…!我が雷紙丸の操作で手が離せぬと言うのにぃ〜っ…!」
「仲良く、仲良くね…。」
結果、道人はまた愛歌とユーラにしがみ付かれながら雷紙丸に乗って傀魔怪堕に戻って来た。
魔月のフクロウ人形にまた挨拶する事にした。
「やぁ、道人君たち!早かったね。用は済んだのかい?」
道人はドイツであった事を魔月に説明した。
「なるほどね、そんな事が…。ロードは裏技的な方法で守護者になって、更に道人君に生まれ変わった訳か。なるほど、わからん。」
魔月が素直な感想を道人たちに言って来た。
「まぁ、地球の意思ガイアフレームが許可したようなものならいいか…。私はその場にはいなかったけれど、道人君の魂は道人君のものだって、私も間違いなく言っていただろうね、間違いなく!」
「ありがとうございます、魔月さん…。」
道人は傀魔怪堕の管理者である魔月からも認められて嬉しかった。
魔月も両羽を腰に当てて胸を張って見せた。
「わかった。そのロードの残滓の場所次第ではまた来るかも知れないんだね。構わないよ、自由に使いたまえ!」
「何だか傀魔怪堕がすっかりターミナル駅みたいになってるわね…。」
愛歌のツッコミに対して道人は乾いた笑いで対応した。
「すまない、人間たちの水晶化はまだ溶けそうにない…。でも、明日にはできると思うから!その時は伝書鎧武者で伝えるよ。」
「いえ、魔月さんたちの頑張りを頼りにしてますから!頑張って!」
道人は魔月とそう約束した後、別れて雷紙丸に乗って飛行し、異次元ホールを通って十糸の森まで戻って来た。
時刻を確認すると午後四時過ぎ。整備士のお兄さんに連絡を取り、トラックが来るまでその場で待機した。
「明日から我ときゃぷてんは傀魔怪堕を行ったり来たりになりそうじゃな。じゃから、今日中に書物に目を通しておかねばな。」
「ごめんね、姫。手間取らせちゃって…。」
「何を言うか、道人よ!我は其方の役に立てて大喜びじゃ!もっと褒めても良いのだぞ?」
「あ、姫!」
「ずるいです!」
姫は道人に抱きつき、対抗して愛歌とユーラも抱きついて来た。
「仲良く、仲良くね…。」
道人はしばらく愛歌たちによる全方位ハグ状態のままいると整備士のお兄さんが操縦するトラックが到着した。
「お待たせ、道人君たち!すまない、遅くなって!さぁ、パークに帰ろうか!」
道人たちが全員トラックに乗り込んだ後、トラックは発車した。
「道人君たち、外を見てみるといいよ。」
「えっ?外ですか?」
道人たちは椅子から立ち上がり、トラックのコンテナにある小窓から外を覗いた。
街に人がたくさんいて、楽しそうに話している姿が見えた。
「そっか、避難民たちの解放が始まったんだ…!」
「あぁ、そうさ。深也君たちも誘導役に駆り出されてね。大樹君も勉強から解放されて喜んでたよ。」
「何だか想像に難しくないわね…。」
愛歌の言う通り、勉強から解放されてうきうきで避難民たちを誘導している大樹の姿を想像するのは難しくなかった。
「そろそろパークに着くよ。…ん?」
整備士のお兄さんは急に窓の外を見た。
「どうかしましたか?」
「実験エリアの方角で…また!」
整備士のお兄さんの言う通り、実験エリアの外で光と爆発が起こっていた。
「戦闘…!?まさか、バドスン・アータスが攻めて来たのか…!?」
「あたし、大神さんたちに連絡してみる!」
愛歌は急いでスマホで司令室に連絡を取った。
「ありゃぁっ、一体は馬に乗って戦ってるな。」
「…! キャプテン、ここから見えるの!?」
道人は小窓から外を見ているキャプテン・雷牙とダーバラを見た。
「どっちも美しくない飛び方だねぇっ。一体は飛んでるって言うより空を駆けてるって感じだね。もう一人も浮いてるって感じさ。」
「それって…?」
「おう、シルエット大将軍って奴だな、あれは。もう一人はそれを追ってた赤い奴だな。」
「それって、レング・ザ・ダイの…!?」
道人は理解した上で改めて戦っている二体を見直した。
「道人、あの二体は今さっき姿を現したばかりなんだって!今大神さんたちも確認してるって!」
愛歌が道人にスマホの通話内容を教えてくれた。
「お兄さん!」
「わかってる、急いで戻ろう!」
お兄さんは前を向いてハンドルを握り直し、トラックはデュラハン・パークの実験エリアへと急いだ。




