275章 残滓を喰らうビースト
新たな姿となったふた振りの剣、ディサイドヴァルムンクとディサイドレーヴァテインの光が収まった後、道人とジークヴァルは交差させていた剣を互いに下ろした。
「ジークヴァル、みんな、ありがとう…!俺、何だか自分の存在に自信が持てたよ!」
道人は後ろを振り向いて柔らかな笑みを浮かべている愛歌たちにお礼を言った後、ジークヴァルの方を向き直した。
「改めてこれからもよろしくね、ジークヴァル!」
「あぁ、道人!」
道人はディサイドヴァルムンクを逆手に持ち直し、ジークヴァルに手渡した。
「ロード、ごめん…。俺…。」
(気にしないでいいよ。言っただろう?君は僕の生まれ変わりとは言っても、君の人格には影響が出ないように力だけを継承させたって。君は君なんだから。ね?)
ロードは道人に優しい笑みを見せてくれた。
「うん。ありがとう、ロード…。」
ロードは頷いた後、身体から光の粒が辺りに散らばり始めた。
「「ロード!?」」
(もう時間切れみたいだ…。この地に残る大部分の残滓はレーヴァテインに集っていたからね…。)
ロードは自分の右手を寂しそうに見た。ロードの身体から出る光の粒は道人の身体に集まっていく。
(道人、僕が昔住んでいた日本の村にも行ってみるといい。場所は書物に記されているはずだ。そこにも微かだが、僕の残滓が残っているはずだから…。役に立つはずだ。)
「わかったよ、行ってみる。ロード、本当にありがとう。」
ロードは頷くと更に身体が薄くなっていく。
(後は頼んだよ、道人、ジークヴァル、みんな…。君たちなら今度こそ、ガイアのデュラハンを復活させて、ゴッド・ディサイドを使いこなして、ヴァエンペラを倒せるはずだ…!僕もこのまま消えるつもりはない…!だから、さよならは言わない…。また会おう、我が友たちよ!)
「ロード…!」
「ロード、ありがとう…!俺、あなたがくれたこの力でみんなを守ってみせるから…!頑張るよ…!」
ロードはジークヴァルとロードの言葉を聞いて笑みを浮かべ、消滅した。
「ロード、また…!」
道人とジークヴァルは新たな決心を胸に共に振り向き、愛歌たちの元まで歩いた。
ハーライムは光の玉に戻り、道人のスマホに戻った。
レーヴァテインをジークヴァルが手にした影響で城が消え始めていた。
「よし、日本に戻ろうか。やるべき事をやるために!」
「へぇっ、随分ご機嫌じゃないか。何か良い事でもあったのか、道人?」
「…!?」
道人たちはこの場にいないはずの者の声を聞いて慌てて周りを見渡した。
「…! ウェント…!?」
城の天井はもう消えていて、空には蝶の羽を生やしたウェントが腕を組んで浮いていた。
「あんた、何でここにいるのよ!?」
愛歌がウェントに向かって右手で指差した。
「何、ちょっと探し物をしていてね。そうしたら…何って言うのかな、親近感って言うか…いや、共鳴って言うのかな?それを近くに感じたから来てみたら、道人たちとばったりって訳さ。それで今までこの城に近寄れないで困ってたんだけど、ご覧の通り穴が開いちゃったからさ。」
恐らくウェントもロードの子孫として城に引き寄せられたのかもしれない。
道人たちは警戒し、戦闘態勢を取った。
「おっと、せっかく来たのにこのままじゃまずいな。ほら、さっさと食いな、Verzweifeln=ドラッヘ。」
ウェントがそう言うと背後から三つ首の刺々しい黒い機械竜が姿を現した。
「何だ、あれは…!?」
フィアツヴァイフェルン=ドラッヘは三つ首の大口を開け、まだ消えていない城の部分を荒々しく食べ始めた。
「こいつ、ロードの残滓を…!?」
道人はフィアツヴァイフェルン=ドラッヘの禍々しい姿につい冷や汗を掻いた。
「何を企んでいるかはわからんが!」
「食い止めないといけないのは確かだねぇっ!」
キャプテン・雷牙は上着を脱ぎ捨て両手の爪を立てて跳び、ダーバラも共に飛んでフィアツヴァイフェルン=ドラッヘに鞭で攻撃を仕掛けようとする。
「おっと、元シチゴウセンの裏切りの先輩方。邪魔はさせないよ?」
ウェントはキャプテン・雷牙とダーバラの前に瞬時に移動し、蝶の羽から鱗粉を散らしながら両手に光の槍を出現させて攻撃した。
「随分と生意気な後輩だねぇっ!」
ダーバラは羽を羽ばたかせて向かって来る光の鱗粉を散らして見せた。
キャプテン・雷牙は両手の爪でウェントに襲い掛かる。
「トワマリー!」
「OK、ジークヴァル!」
トワマリーは小型リング五つを操作し、即興の足場を作った。
ジークヴァルはそれを足場にして跳ね、フィアツヴァイフェルン=ドラッヘにディサイドレーヴァテインとディサイドヴァルムンクで横一閃した。
フィアツヴァイフェルン=ドラッヘは地面に落ちた。
「…!? へぇっ、おニューの剣か。やるね。」
フィアツヴァイフェルン=ドラッヘはすぐに起き上がり、ジークヴァルたちを無視して残滓を食べ始めた。
「何、あいつ…?食べるの優先って事…?」
愛歌が顔を引き攣らせてフィアツヴァイフェルン=ドラッヘを気味悪がった。
「ソル嬢、行くぜ!」
「えぇ!」
ヤジリウスは抜刀の構えを取り、ソルワデスは両肩のシールドを両手に付けて大きな爪に変えて攻撃を仕掛ける。
フィアツヴァイフェルン=ドラッヘはまるで邪魔をするなと言わんばかりに三つ首の大口からショックウェーブを発した。
「なっ…!?」
「身体が、軋む…!?」
ショックウェーブを受けたヤジリウスとソルワデスはその場でしゃがんでしまった。
フィアツヴァイフェルン=ドラッヘはショックウェーブを発したままヤジリウスとソルワデスに牙を向いた。
「危ない、二人共!」
道人はメタリー・ルナブーメランを出現させ、すぐに投げた。が、ショックウェーブのせいで地面に落ちてしまった。
「くっ…!」
「私に任せろ、道人!」
ジークヴァルはディサイドヴァルムンクとディサイドレーヴァテインを交差させて刃に光を纏わせた。
「シュナイデンッ!」
ジークヴァルは交差させたふた振りの剣を勢いよく横に振って罰の字の斬撃を飛ばした。
罰の字の斬撃はショックウェーブを斬り裂き進んでフィアツヴァイフェルン=ドラッヘに直撃させた。
「今だ、ソル嬢!」
「えぇ!」
ショックウェーブが止んだのでヤジリウスとソルワデスはすぐに立ち上がり、フィアツヴァイフェルン=ドラッヘに斬撃とニードル弾を飛ばした。
土煙が舞う中、フィアツヴァイフェルン=ドラッヘは立ち上がってまた残滓を食べ始めた。
「野郎、何て固さだ…!?」
「任せておけ!」
ジークヴァルは前に跳び、ふた振りの剣をフィアツヴァイフェルン=ドラッヘに向かって振り下ろした。
フィアツヴァイフェルン=ドラッヘは左右の首でふた振りの剣を噛んで止めた。
「この剣には私や道人、みんなのディサイドが込められている…!容易く噛み砕けると思うなよ…!」
ジークヴァルはふた振りの剣の刀身を輝かせ、フィアツヴァイフェルン=ドラッヘを噛み付かせたまま持ち上げた。
「…!? 噛み付くのをやめろ、フィアツヴァイフェルン=ドラッヘ!」
キャプテン・雷牙とダーバラと戦っている最中のウェントがそう叫ぶとフィアツヴァイフェルン=ドラッヘは言う事を聞いて噛み付きを辞めて空を飛ぶ。
「もう遅い!二刀、両断!!」
ジークヴァルはトワマリーの配置した小型リングを足場にして跳んでふた振りの剣を振り下ろした。
フィアツヴァイフェルン=ドラッヘは地面に叩きつけられた。
「ちっ!いくら固いとは言え、やっぱりビーストヘッド単体だと話にならないか…!」
「…! 名前からしてそうだと思ってたけど、やっぱり…!」
「その通りだ、道人!こいつはアレウリアスのビーストヘッド!希望のHoffnungに対して絶望のVerzweifelnって訳だ!なかなか洒落てるだろ?」
ウェントはそう言うとフィアツヴァイフェルン=ドラッヘの元まで飛び、跨って見せた。
「よし、もう十分に喰ったな?さすがに向こうの数が多いし、今日はとっととずらかるとするか!」
ウェントがそう言うとフィアツヴァイフェルン=ドラッヘは羽を羽ばたかせて飛んだ。
「待て、ウェント!アレウリアスのビーストヘッドって事はまさか…!?」
「そのまさかさ!俺とアレウリアスはディサイドしたのさ!だが、まだアレウリアスは本調子じゃない…!次に会った時を楽しみにしてるんだな、道人!それじゃあ、Bye!」
ウェントは蝶の羽から光の鱗粉を出し、フィアツヴァイフェルン=ドラッヘはショックウェーブを発生させながら物凄い勢いで飛び去って行った。
「ちっ、あれじゃ追いかけられないか…!」
ダーバラは飛んで追いかけようとしたが断念した。もう既にウェントたちは見えなくなってしまった。
「ウェントとアレウリアスがディサイドした…?」
道人たちは戦闘態勢を解き、武器を下ろした。
「ちっ、あのキザ野郎が更に厄介になったって訳かよ…!」
ヤジリウスが気に入らなさそうに地面を蹴った。
「大丈夫だ、みんな。例えアレウリアスがどんな力を付けたとしても…!」
「うん、俺たちは負けたりはしない!絶対に…!」
ジークヴァルと道人は共にウェントとフィアツヴァイフェルン=ドラッヘが飛び去って行った方向を見て絶対打倒の誓いを立てて見せた。




