274章 「お前はお前だ、道人」
道人たちは目の前の地面に突き刺さった、赤きオーラを漂わせているレーヴァテインを見ていた。
「あれ?でも、何だかボロボロだけど…?」
愛歌がレーヴァテインがボロボロになっている事に先に言及した。
(千年以上前の剣だからね。でも、能力は健在だよ。僕の霊力の残滓がこの地に維持できたのもこの剣の力によるものが大きい。)
「そうだったのか…。我が友をこの地に繋ぎ止めてくれて感謝するぞ、我が愛剣よ。」
「しかし、それでは今までジークヴァルが合体した際に使えていたレーヴァテインは…?」
ソルワデスがロードに質問した。
(それはジークヴァルのイメージがディサイドの力によって実体化した再現体でこっちがオリジナルのレーヴァテインなんだ。さぁ、この剣もメタリー・ルナブレードのように君たちの力で近代化するんだ。)
「わかった。」
ジークヴァルはレーヴァテインの前まで歩こうとするが途中で立ち止まり、道人とソルワデスの方を見た。
「道人?」
道人は下を向いていたが、ジークヴァルに話し掛けられて前を向いた。
ソルワデスも右手を胸に当てて下を向いていた。
「…な、何?ジークヴァル…?」
ジークヴァルはレーヴァテインに背を向け、道人の前まで歩いた。
「道人、お前は今迷っているな?」
「えっ…?」
道人はジークヴァルの言葉を聞いて動揺した。
「無理もない。いきなり生まれ変わりなど、子孫などの話を聞かされたのだからな…。心の整理がつかないだろう。君にもわかるだろう、ソルワデス?」
「ジークヴァル…。えぇ、まるで我が胸中に道人の不安な気持ちが流れ込んで来るようだ…。」
ソルワデスは胸に当てた右手で握り拳を作った。
「…二人にはお見通しか…。ロードにはさ、感謝しているんだ…。この力のおかげで俺は今まで戦って来られたし、仲間たちも守る事ができた…。ロードもさっき言ってくれてたけど、ロードは俺に力だけを継承してくれて記憶には、意思には影響を与えてない…。元はロードの守護者の力ではあるけれど…この力はもう俺の力として独自の開花をしているのも頷けたんだ…。」
「道人…?」
愛歌は道人を心配し、ユーラと姫も悲しそうにしていた。
「でもさ、ジークヴァルとの出会いがガイアフレームたちによる作為的なものだと聞いてから…作られた命だと聞いてから…!何だか心の整理がつかなくて…!いや、ジークヴァルと出会わせてくれて感謝はしてるんだけどさ…!」
「そうか…。」
ジークヴァルは道人の言葉を聞いた後、ロードの方を向いた。
「…すまない、ロード。今から私が言う言葉は君を傷つけてしまうかもしれない…。だから…。」
ジークヴァルがそう言うとロードは目を瞑り、ゆっくりと首を横に振った。
(いくらヴァエンペラに対抗するためとは言え、僕や地球の意思がやってしまった事は彼の命を弄んだようなものだ…。だから…気にしないで、ジークヴァル…。)
「ありがとう、ロード…。」
ジークヴァルはそう言うと道人の前でしゃがんで見せた。
「道人、確かにお前の言う通り、私たちはヴァエンペラを倒すために出会わされたという形になるかもしれない…。だがな、人生とは出会い方で決まるようなものではないと私は思う。現に私は良い出会い方をしても、リムルトを守る事は出来なかったからな…。」
「ジークヴァル…。」
「道人、大事なのは過程なのではないか?私はそう思う…。だからこそ、私たちのディサイドは多くの思い出という繋がりで強くなる事ができたんだ…。」
「………。」
「私はお前と一緒に学校に行けて楽しかった…。それがきっかけで愛歌やトワマリーとも仲良くなって、そこから潤奈やフォンフェル、深也やランドレイク、大樹やカサエル、グルーナやルレンデス、海音やスラン…司令、博士、大神、虎城、流咲…。ははっ、すぐには全員分、名前を読み上げきれないくらいだ。たくさんの出会いが広がっていった…。」
「………。」
「本当に今までたくさんの事があった…。戦島でのバドスン・アータスとの死闘…。アトランティスや傀魔怪堕での戦い…おっと、アトランティスでは私は途中参加だったな…。だが、道人たちが私を復活させるために頑張ってくれたのは嬉しかった…。改めてありがとう…。」
「………。」
道人は気づくと両目から涙が出る気配を感じ始めていた。
「記憶は戦いの事ばかりじゃない。私はご飯を食べられない身体だが、お前と秋子と食卓で食事を共にできたのも楽しかった。恥ずかしながら、道人と情報共有ができなくて、私が拗ねてしまった事もあったな…。みんなとパーティができたのも私の大切な思い出だ。」
「「道人!」」
ヤジリウスとソルワデスが道人のところまで走って来た。
道人のスマホとデバイスも発光し始める。
ジークヴァルもその場から立ち上がった。
「俺はお前が姫と出会ったおかげで、お前たちと出会う事ができた…!しかも時が巻き戻る前と後で二回もだ!どんな事があっても必ず優しい人たちに出会えますようにっていうお凛の温かな想いが込められた歯車は確かなものだったと強く誇れるぜ…!」
「ヤジリウス…。」
「私もだ、道人…!私も二度も君に助けられた…!それは受け継いだ力によるものではなく、今を生きる道人の優しさから来るものだと私は思う…!助けてくれて、ありがとう…!」
「ソルワデス…。」
その時、道人のスマホからハーライムが実体化した。
「ハーライム…!?」
「すまない、このタイミングは意地でも自分の意思で実体化したかった…!君と付き合いが長きデュラハン…いや、掛け替えのない友として…!私もそうだ、道人!私も間違いなく、君にデザインされたデュラハンだ!それは君のセンスによる唯一無二ものだ…!」
「ハーライム…。」
「「「道人ぉっ!」」」
愛歌、ユーラ、姫も駆け寄って来た。
「アトランティスを救ってくれたのは皆さんの頑張りのおかげであり、そこには間違いなく、道人の意思もあります…!私が物ではなく、一人の生きる人だと認めてくれたのも道人、あなたじゃないですか…!」
「ユーラ…。」
「我もじゃ!我が永遠に生きる式神だと知って美しき涙を流したのは紛れもなく其方じゃぞ、愛しき道人よ!」
「姫…。」
「あ、あたしも道人の幼馴染だし…!ずっと幼馴染だし…!年数の長さなんて関係ない!道人はあたしの…大好きな道人なんだからっ!」
「愛歌…。」
道人はもう両目から涙を流していた。愛歌たちも涙を流している。
「ま、俺もお前らとは宿命のライバルだしな。姫さんと出会えたのもお前らと関われたからだ。感謝してるぜ?」
「愛歌の美しさは道人との関わりから来ているもんだろうしねぇ。あたいも関係なくはないさ。」
「ジークヴァルは私の弟みたいナもんだシ?愛歌の愛する者ハ、私の愛するものデもあル!」
キャプテン・雷牙、ダーバラ、トワマリーも道人の存在を認めてくれた。
その時、勝手にD-DUNAMISカードが実体化し、ソルワデスのデバイスにスラッシュされた。
(大丈夫、道人はたくさんの人に想われてるんだ…。ボクとしても誇らしいよ…。Solve the caseだよ?)
道人の背後から聞いた事がないはずなのにどこか懐かしさを感じる声が聞こえた気がした。
「アル…!?」
道人は急いで振り向いて誰かの名前を言おうとしたが、すぐに忘れてしまった。
道人の後ろには無数の光が散らばった。光は人型の形をしていた気がした。
「道人ぉっ!てめぇっ、何うじうじしてやがる!」
「俺らに黙ってドイツに行くなんて水臭いぞ、道人ぉ〜っ…!」
「二人共、まぁ、落ち着けってよ…。」
「し、深也!?大樹!?真輝さんまで!?」
この場にいないはずの深也と大樹、真輝が無数の散らばった光から見えて道人は驚いた。
「デバイスから道とんの気持ちは伝わって来たわよん!」
「道人君、君の頑張りは間違いなく君のものだ!」
「…故郷が滅んで落ち込んでた私を変えてくれたのは間違いなく道人だよ!私の大好きな道人で間違いないよ…!」
「グルーナさん、司令、潤奈…!」
道人は光の玉に映っている今まで出会えた人たちを見渡した。
「道人さん!」「道人、ぶいっ!」「「「道人君!」」」「「道人隊員。」」「やれやれ、妾が喋る暇はなさそうじゃな…。」「へっ、イジャネラ様に同じく。」
道人は色んな人たちの姿を見て、流れる涙を両手で拭いた。
「道人、これだけお前の存在を認めてくれる人たちがいるんだ。例えお前が何者であろうと、私たちにとっては大事な仲間である空野道人なんだ。決して損得感情だけではない。みんな、お前の事が大好きだから一緒にいるんだ。お前はお前なんだ、道人…!」
「ジークヴァル、みんな、ありがとう…!俺、変に落ち込んじゃってた…!そうだ、俺は俺なんだ…!例え地球だろうと神様であろうとそこは絶対に譲らない…!この俺の命、意思は俺だけのものだ…!みんなとの強いディサイドがその証明なんだ…!」
道人とジークヴァルの強い意思に反応し、レーヴァテインだけでなく、ヴァルムンクも姿を現した。
(ジークヴァル様、道人様…。)
「…! リムルト…!…ふっ、道人。誇っていいぞ…!このふた振りの剣は間違いなくヴァエンペラを打倒できる心強き剣となる…!」
「一緒に掴もう、ジークヴァル!必ずヴァエンペラを倒すために!」
「あぁ!」
道人はレーヴァテインを、ジークヴァルはヴァルムンクを掴んだ。
掴んだ瞬間にふた振りの剣は発光し、宝石や金属などの装飾品が足された神々しき剣『ディサイドヴァルムンク』と『ディサイドレーヴァテイン』に形を変えた。
「おぉっ…!?」
「ジークヴァル!」
「あぁ、道人!」
道人とジークヴァルは互いにディサイドヴァルムンクとディサイドレーヴァテインを交差させた。
「このふた振りの剣はみんなのディサイドが込められた剣だ…!」
「この剣で必ず運命を変えて見せよう、ジークヴァル!みんな!」
ふた振りの剣は強く緑色に発光し、道人たちの流した涙はもうすっかり乾いていて、光に負けない笑みを浮かべていた。




