273章 幾重もの道を歩む人
「えっと、道人はロードの子孫で…?」
「ロードの生まれ変わり…?」
姫と愛歌がロードが告げた真実を口に出して改めて確認した。
真実を聞かされた道人はただ呆然としていた。
(道人、驚かせてすまない…。二人の言う通り、君は私の子孫であり、私の生まれ変わった姿でもある…。だが、私は主に自分の力を君に継承させる形となった。君の意思は間違いなく君だけのものだ。だから…。)
「…ううん、何だか腑に落ちた気がする…。俺が今まで行使して来た不思議な力の秘密がさ…。話を続けて、ロード…。」
道人がそう言うと、ユーラが道人の両肩に手を置き、後ろから抱き締めて来た。
道人は背中越しでユーラの体温を感じ、ユーラの涙で上着が濡れているのがわかった。
「ちょっと待つのじゃ。ならば、今目の前にいる其方は…?」
(道人となった僕はもう力だけの存在で自我はない…。だけど、残滓に霊力やディサイドの力が宿った場合、僕は擬似的に式神として姿を現す事ができるんだ。一時的なものだけどね。道人、アトランティスで君に話し掛けた事があったね?あれもそうだ。私の残滓であるメタリー・ルナブレードがきっかけで君に少しだけ語りかける事ができたんだ。)
「…! あの時…。」
道人はアトランティスのデュラハンと戦った際にロードの言葉が聞こえて来た事を思い出した。
(話を続けよう。ガイアフレームの力を借りて僕は転生に成功した…。結果的に道人、君は子孫としての、生まれ変わりとしての…。僕の守護者としての強力な力を引き継ぐ事ができた。それだけじゃない。君はかつての私も持ち得なかった力、ディサイドも得る事ができた。君は言わば、ディサイドの申し子。ジークヴァルのパートナーに必ずなれる程の、絶対運命力を手にできたんだ。)
「でも、道人はウェントみたいに光の槍とか蝶の羽を出したりはできないよ?」
少し声を震わせながら愛歌がロードに質問をした。
(道人は道人自身の、守護者の力とディサイドを合わせたオリジナルの力の発現の仕方をしたんだ。今、君が付けているガントレットやレッグがそうだ。)
道人は右手のガントレットを見た。
(君は潤奈の治癒能力や、アトランティスでの経験さえも自分の力を発現させるきっかけとして見せたんだ。)
ロードの言う潤奈の治癒能力とは、道人が潤奈と初めて出会った時。フォンフェルのワープヘッドを使って実験エリアまでワープして来た時の事を言っている。
「じゃあ、俺がメタリー・ルナブレードを扱えたのも…。」
(君が私の子孫であり、生まれ変わりだからだ。君には人を惹き付ける人柄もある。それも生前の僕にはなかったものだ。ひょっとしたら、君のその人を惹き付ける力が身近な人たちをトワマリー、フォンフェル、カサエルのパートナーにしたのかも知れないな…。)
ロードは説明しながら、道人がロードのコピーではない。ちゃんと道人という独自の自我を持った存在なのだと言う事を気を遣いながら話してくれていた。道人にはその気遣いが嬉しかった。
(だが、そんな強大な力を持った君でも一度はヴァエンペラに敗れてしまった…。ヴァエンペラはそれ程に恐ろしい存在だった…!その際にガイアフレームがやった事が地球の自転を逆回転させた時戻し…。)
「それが、オーバータイムリバース…。それと…ゴッド・ディサイド…。」
道人はジークヴァルのデュラハン・ハートが砕け散った後に夢の中でリムルトから聞いた話を思い出した。
(時はガイアフレームの力の限界まで過去に巻き戻った。同時に道人の発動させたゴッド・ディサイドの力は過去の道人にフューチャースライドという形で今までの能力を引き継がせた…。)
「ちょっと待って!それじゃ、今の道人は過去の道人の力と合体して…!」
愛歌は思わず立ち上がった。
(そう、道人は元々あった力に巻き戻しによる未来の力も加わった。今の道人は僕の守護者の力を二倍にさせたものを持っていると思ってもらって構わない。)
「おいおい…。こりゃっ、大したもんだ…。そりゃぁっ、強ぇはずだぜ…。」
キャプテン・雷牙は右手を自分の頭の後頭部に当てて驚いてみせた。
(そして、そのゴッド・ディサイドの…フューチャースライドの力は僕にも影響を与えたんだ。)
「…! 読めたぞ!じゃからか!じゃから、独逸にいたロードは陰陽道が使えて、この場に霊力が残せた訳か…!」
(その通り。僕もフューチャースライドで陰陽道の力を引き継げていたんだ。でも、その時の僕は陰陽術を使える自覚はなかった。記憶に関しては道人と同じだ。巻き戻る前の地球の出来事は断片的にしか思い出せなかった…。だから、未来を大々的に変えるというのは無理だったんだ。)
道人はたまに脳内に白紙の紙が思い浮かぶ事がある。それはきっかけがあれば現像され、巻き戻る前の記憶を思い出せる。
ロードにもその能力が備わっていたようだ。
(もし覚えていたら、僕はジークヴァルもリムルトも死なせる事はなかっただろうからね…。いや、もしそれを変えてしまったら僕が道人に生まれ変わる未来に支障が出てしまうから…あの時は、それだけは決して思い出せないようにしてあったのかもしれない…。どの道、僕一人の力は微々たるもので、未来を変える事はできない…。)
ロードは悔しそうに握り締めた両手を見た。
(だが、道人。君は違う。君はここまでみんなとの強きディサイドで未来を変える事ができた…!キャルベンと傀魔怪堕、デストロイ・デュラハン 、シチゴウセンのメンバーさえもディサイドして仲間にできた…。君たちが掴めた新たな未来なら、今度こそヴァエンペラに立ち向かう事ができるはずだ…!)
「ロード…。」
道人はロードの熱の入った言葉を聞いて両手を強く握り締めた。
(僕の話はここまでだ。話す事が多いからちゃんと伝わらない部分もあるかもしれないけど…。)
「ううん、説明ももちろん大事な事だけど…。ロードの未来を変えて欲しいっていう、ヴァエンペラを必ず倒して欲しいっていう気持ちが伝わる事が一番大事だと思うから…!ありがとう、ロード…。ここに来て良かった…。)
(道人…。)
道人たちは立ち上がり、ロードを見た。
(道人、ヴァエンペラを倒すためにはガイアのデュラハンを復活させた方がいい。今まで訪れたビーストヘッドの試練の場所を覚えているね?)
「うん、覚えてるけど…?」
今まで訪れたビーストヘッドの試練場所は十糸の森の洞窟、フランス、イギリス、ジークヴァルとルレンデスの心の中だった。
(そこは言わば特異点…。そこから強力なディサイドの力を流し込むんだ。そうすれば、ガイアのデュラハンは力を取り戻し、復活できるはずだ。)
「えっ?でも、それは…。」
(そう、そのためには先にガイアヘッドからヴァエンペラの意思を除去しないといけない…。でないと、ヴァエンペラにも力を与えてしまう事になるからね…。それと、ガイアのデュラハンを復活させられるだけの強力なディサイドの力をどこから得られるかだ…!それさえあれば、ガイアのデュラハンは君たちに力を貸してくれる…!)
「…わかった、ロード。みんなと考えてみるよ。」
ロードがガイアのデュラハンの復活方法を教えてくれたのは道人たちにとってはかなり大きい事だ。道人は改めてロードを頼もしく思った。
(君たちには絶対にヴァエンペラを倒してもらいたい…!だから、僕は更に君たちに力を与えよう…!ジークヴァル、これを…!)
ロードがそう言って全身を緑色に発光させると天から一本の剣が降って来て、地面に刺さった。
「こ、これは…!?」
(そう、君のかつての愛剣…レーヴァテインだ…。)
「レーヴァテイン…!」
道人たちは強い赤いオーラを放つレーヴァテインを驚きながら見つめた。




