272章 (君は僕の…!)
霊力で編まれた城の中に入った道人たちはそこでロードから過去の話を聞く事になった。
(ジークヴァル、君は…巨竜と化したリムルトを倒した後、ギリギナの騎士たちに殺された…。そこまでは…いいね?)
「あぁ、私の前世の記憶はそこで途切れている…。」
ジークヴァルはロードに過去の話を聞かれて寂しそうにしていた。
道人、ユーラ、ヤジリウス、ソルワデスもジークヴァルの前世を共に見たので同じく寂しそうにした。
ロードも何だか聞きづらそうだった。
(あれから僕たち騎士団はギリギナの騎士たちと交戦に入ったんだ…。でも、僕たちは追い込まれてしまってね…。崩壊したとは言え、騎士としては城を捨てるのは口惜しかったけど…何とか逃げ出そうとしたんだ。でも、アレウリアスは強敵だった…。)
「アレウリアス…。」
道人たちも前世の映像で姿を見たので前世のアレウリアスの姿を思い浮かべるのは容易かった。
(僕はみんなを逃すためにアレウリアスと戦った。僕の持ち得る守護者の力を全力で発揮してね。その際の残滓のようなものが飛び散って、この地域には残ったんだ。)
「…! それが、この城…?」
道人たちはロードの話を聞いて改めてこの水晶でできた空間を見渡した。
「どういう事じゃ?其方、その頃から霊力を用いていた…陰陽道に明るかったのか?」
姫がロードに質問をした。
姫の言う通り、それだとロードはドイツにいた頃から陰陽道を知っていた事になる。
(僕はジークヴァルと友達になる前は貧しい生活を送っていてね…。それで何度か死に掛けたんだけど、その際に赤い大地と空をした世界に迷い込んだんだ。)
「それって…!?」
「傀魔怪堕…。」
愛歌と道人は互いに確認し合い、頷いた。
(そう、僕は傀魔怪堕に迷い込み、幽体離脱者扱いされてたんだけど、独学で守護者の試練をあっという間に乗り越えちゃったんだ、これが…。)
「幽体離脱って、俺と同じ…!?」
道人はジークヴァルと共に実験エリアでライガと戦った際、幽体離脱して傀魔怪堕に初めて行った。
ロードも似たような経緯で傀魔怪堕で行った事があるようだ。
(道人も身に覚えがあるのかい?それはひょっとしたら、僕の力の影響かもしれないな…。)
「えっ…?それって…?」
(今それを話すとややこしいからね。順を追って話そう。)
「…なるほどの。つまり、其方は幽体離脱状態で守護者となり、そのまま仮死状態から現世に戻って来た訳か…。魔月が調べてもわからん訳じゃな。」
(そう、はみ出し者の守護者…と言った感じだね。おかげで強く生き抜く事ができたけどね。)
魔月がロードの事を究明玉で守護者の事を調べた際に何もわからなかったのはロードが守護者になった後、すぐに現世に戻って来てしまったからだった。
「でも、それだとロードさんは長い事仮死状態だった事になりません?」
ユーラが次に疑問を口にする。
「いや、傀魔怪堕は時間の流れが不安定での。そうじゃろう、道人?」
「うん、俺が姫と傀魔怪堕で初めて会った際も元の世界に戻ったらほとんど時間が止まってたみたいだった…。」
地上世界と傀魔怪堕が混沌巨玉の力で融合していた時は時間の流れがほとんど変わらなかった。
姫が言うにそれ以前は違ったようだ。
「やれやれ、ロード。君は死後も私を驚かせてくれるな…。だから、幼少期に色んな能力が使えた訳か。」
(ふふっ、見直してくれたかい?)
ジークヴァルとロードは互いに姿は以前と異なるが、変わらぬ友情で接して笑い合っていた。
(話を続けよう。アレウリアスは強敵で僕はまるで歯が立たなかった…。追い詰めらた僕はアレウリアスに斬られちゃって、咄嗟に近くの海に落ちて難を逃れたんだ。それから怪我を負いながらも空を飛んだり、通りかかった船やらを利用して何とか祖国に戻ろうとしたんだけど、座標を知る術がなくってね…。なかなか思い通りには行かなくて、流れに流されて日本に来ちゃったんだ…。)
「…! 日本に…?」
(結構居心地の良い村に来られてね。ずっと放置する事になった怪我の手当てもしてくれて、ご飯もご馳走してくれたんだ。それでお礼に僕の守護者の力を発揮して畑とか家の知恵を与えて、用心棒みたいな事もやったなぁ。)
ロードが今話した事は資料室で姫が解読した書物と一致していた。
(その村には陰陽師崩れの人もいたから、お礼に陰陽道も教わったんだ。)
「なるほど、それで其方が触れたものに霊力が多少残っておって、我の霊力にも反応した訳か…。」
姫の説明のおかげで空野家の書物に姫が霊力を送り込んでしまって式神化したから、ロードが資料室に現れた事がわかった。
「む?じゃが、結局日本に来る前に其方が霊力や陰陽術を扱えていた説明にはならぬぞ?」
(そこがややこしいところなんだ。その説明は待っててね。)
ロードは姫の疑問を後回しにした。
「えっと…じゃあ、あなたが空野郎度で俺の…。」
(そう、君のご先祖様って事になるね。)
ジークヴァルたちは一斉に道人を見た。
「道人が、ロードの子孫…!?」
「まぁ、見た目似てるしな。」
「いや、時が経ち過ぎている割には似過ぎているような…?」
ジークヴァル、ヤジリウス、ソルワデスは道人を見ながら思考した。
「なるほどね…。それじゃ、道人のお父さんの豪さんもロードの子孫で、その豪さんを元にしたヒューマン・デュラハンのウェントもロードの子孫扱いだから能力が使えたって訳なのね…。」
愛歌が豪やウェントに関しても触れてまとめてくれた。
「つまり、ウェントはロードの子孫たちの集合体でもある訳だ…。」
以前、ウェントが自身の正体を明かした際に自分が優秀過ぎて豪以前の空野家の力も継承できたと言っていて、その意味がわかった。
(その後の僕は妻や村人たち、息子と共に暮らしてね。それで寿命が来ちゃったから死んだ…はずだったんだけど…。)
「ど、どうしたんですか…?」
道人たちはロードの次の言葉を待った。
(肉体的には死んだんだけどね、魂はあの世…傀魔怪堕には行けなかったんだよね。)
「それは何ででしょう?」
ユーラは自分の頬に右手の人差し指を当てて?マークを浮かべた。
(僕は幽体離脱という形で守護者になるための試練を乗り越えてしまった。だから、傀魔怪堕的には僕の魂は彷徨える魂を導く案内役、守護者として行動できるようになってしまったんだ。探究心が仇になってしまった訳さ。我ながら自業自得という訳だね、うん。)
ロードは深刻そうな事を軽い感じで話すのであまり悲壮感はなかった。
(その時だった。僕の前に地球の意思、ガイアフレームが現れたのは。)
「ガイアフレームと…?」
(ついて行ったらリムルトもいてね、驚いたよ。元気そうだった。いや、死んでるんだけどね。)
ロードは困り顔で右頬を掻いた。
(それでガイアフレームは来るべき強大な存在、ヴァエンペラと戦うために力を貸して欲しいと言って来たんだ。)
「ヴァエンペラ…!」
「ヴァエンペラって、そんな大昔から地球に来る事がわかってたの…!?」
道人がヴァエンペラの名前を言った後に愛歌が驚いた。
(ヴァエンペラは一度ガイアのデュラハンと戦った事があって、その時は痛み分けだったらしい。互いにダメージを受けて、ガイアは地球の形に戻ったんだ。その時にヴァエンペラは『力を蓄えたら改めてまた来る』と言って去ったらしいんだ。)
「そうか、ヴァエンペラの奴が言ってた…!ガイアのデュラハンの頭の傷を利用して分身体を作ったって…!その時に…!」
ロードの説明のおかげでヴァエンペラがガイアヘッドに自分の分身体を仕込んだタイミングがわかった。
(ガイアフレームはヴァエンペラに対抗するために自身の特別な守護者たちを用意し、地球の記憶に保管していたんだ。未知なる力、ディサイドを扱うに足りえる高貴なる魂を持った多元分岐・転生英雄たち…。それでジークヴァル、トワマリー、フォンフェル、カサエルの四人が選ばれた。)
「その話は以前、俺たちもドラッヘから聞いた。」
道人はそう言うと左肩に乗ったドラッヘデバイスを見た。
(ディサイドは地球の意思すら把握できない未知なる力だったけど、それでもわかっている事がいくつかはあった。このモチーフ・ワールドの元となったデュラハンのぬいぐるみ…。それと同じ形にする事でディサイドの力を扱う事ができた。恐らく、同じ形にする事で受信機のような働きを得られたのかもしれない。それで造られたのがディサイド・デュラハンだ。同時にわかった事はディサイド・デュラハンには共にディサイドを強めていくパートナーが必要だった。)
「それが、俺たち…。」
「あたしに道人、潤奈、大樹…。」
道人と愛歌は互いに見つめ合った。
(互いの繋がりの強さはディサイドを無限大に強めていく…。それは間違いなく、ヴァエンペラに対抗できる十分な力だった。だけど、そのパートナーとの出会いは数奇なる運命によるもの…。ガイアフレームでも人と人の繋がりを作り出す事は出来なかった…。そこで白羽の矢が立ったのが…僕だ。)
「ロード…?」
ロードは右手を胸に当てて真剣な表情で道人たちを見た。
(ディサイドとは強い繋がりで発揮される力…。残念ながら、トワマリーやフォンフェル、カサエルには試せるような人物はいなかったが…。でも、僕なら可能性があった。ジークヴァルと強い繋がりがある強力な力の持ち主…。ディサイド・デュラハンのパートナーに必ずなれる要素…運命を強く持つ僕を利用すれば…少なくとも、ジークヴァルのパートナーだけはガイアフレーム側から作り出す事ができるかもしれないと…!それでも確証はなくて、賭けみたいなものだったけどね…!)
ロードはジークヴァルを見た後、道人を見た。
(ジークヴァルたちがディサイド・デュラハンに転生したように僕も新たな身体を得るために転生の道を選ぶ事にした…。守護者でありながら、転生をも選ぶ…。それは傀魔怪堕的には禁忌だろうね…。ジークヴァル、僕は前世では君の力になれず、悔しい思いをしていた…!そんな君のために、君のパートナーに必ずなるために…!どんな形でも君の力となれるように…!自らの意思を捨てて、守護者としての力だけでガイアフレームの地球の記憶に保管される道を選んだんだ!)
道人は何故かロードの言葉を聞いて胸が高まり始めた。
「「道人…?」」
愛歌とユーラが同時に様子が変な道人を気遣った。
(ヴァエンペラたち、バドスン・アータスが他の惑星を採掘星に変え始めたタイミングで僕はガイアフレームの力を借りて純粋な力から形を変えた!それでまだ現代で生き続けていた僕の血筋を転生先に選び、そこから僕が生まれ変わった姿…!それが…空野道人、君だ!)
「何っ…!?」
ジークヴァルたちは一斉に道人を見た。
「…俺が、ロードの生まれ変わり…?」
道人は驚きを隠せず、自分の震える両手を見た。




