271章 いつか見た懐かしき城
首無し鎧武者二体の後をついて行く形で道人たちが乗る雷紙丸は真っ暗な空間を下降していた。
その間に道人は愛歌とユーラに抱きつかれ、それに対して姫がやきもきしていた。
しばらくすると真っ暗な空間を抜け、青空と緑の大地が広がった。
愛歌が絶叫する中、雷紙丸は無事に到着した。
「な、何であたしたちは空から着地するのに首無し鎧武者は地面から出て来る訳?」
ふらつく愛歌の言う通り、首無し鎧武者二体は地面から姿を現した。
「鎧武者たちと雷紙丸とではめかにずむ…異次元ほーるから外に出る仕組みが異なるのであろうな。」
「なら、あたし…首無し鎧武者にしがみ付いてた方が良かったかしら…?」
「ふふん、それでは道人は私が独り占めという事に…。」
ユーラはジト目で道人を強く抱き締める。
「…! 今のなし!だったら、怖いの我慢するし!」
愛歌も慌てて道人を強く抱き締めた。
「ふ、二人…仲良くね。仲良く…。」
道人は赤面しながら愛歌とユーラを落ち着かせた。
「そうであるぞ!これより道人は我がすきんしっぷするのじゃ!二人共、控えおろう!」
「俺に発言の権利はなさそうだ…。」
道人は姫と左手で手を繋ぐ。何故かソルワデスも右手で手を繋いで来た。
「ジークヴァル、どう?この場所に見覚えは?」
「私の前世から千年近くは経ってはいるが…この森林地帯には懐かしさを感じるな…。」
道人たちはジークヴァルと共に森林を眺めた。愛歌はスマホで調べ始めた。
「日本とドイツの時差は…大体七時間か。あたしたちは昼の二時くらいに出発したから…今は大体朝七時くらいかな?」
「よし、またあたいが飛んで様子を見てやろうじゃないか。」
「うん、お願いね。」
ダーバラはそう言うと高く飛び、少しすると戻って来た。
「どう、ダーバラ?」
「遠くに建物…城みたいなのがあるよ。結構古い作りだ。しかも何だかぼやけてる。」
「ぼやけた城か…。まさか、私がかつていた城か?しかし、千年以上経っているからな…。」
道人たちが見たジークヴァルの前世の記憶。そこでジークヴァルはロードと共に王国の騎士をやっていた。
「けどねぇっ…。」
「どうしたの、ダーバラ?」
「いやね、その城さ。あたいが飛んだ途端に急に現れたように見えたんだよね…。」
「急に…?」
ダーバラの妙な言葉を聞いて道人たちは思考した。
「見間違いじゃねぇか?お前ももう歳だからな。」
「何か言ったかい、ノンデリカシーワンコ?」
キャプテン・雷牙とダーバラは睨み合いながらバチバチと視線を合わせた。
「トワマリーとフォンフェルのビーストヘッドの試練の時は城の跡地だったけど…。」
「うン、そうだったネ…。でモ…。」
「今回はビーストヘッドの試練とは違うからな…。とりあえず、城に行ってみよう。」
道人がそう言うと愛歌たちは頷き、城を目指して歩いた。
ダーバラは飛行して周りを警戒してくれていた。
歩いている途中、城が見え始めた。
「間違いない、私がかつていた城だ。」
ジークヴァルからの確証が得られ、道人たちは城の前まで到着した。
「ホントだ、何かぼやけてる…。」
「み、道人!これを!」
「ユーラ?」
ユーラの右腕は城の壁をすり抜けていた。ユーラは道人たちにわかるように右手わ上下に振る。
「この城、やっぱり実体がないのか…?」
「なるほどなぁっ。だから、ダーバラが突然現れたって言った訳か。良かったな、歳じゃなくて。」
道人の言葉に続いてキャプテン・雷牙が話した。
ダーバラの鉄扇がキャプテン・雷牙に襲い掛かる。
道人と愛歌も城の壁に触れようとするが、ユーラと同じく腕が通り抜けた。
「ふむ、道人よ。この城は式神に近いものかもしれん。」
「えっ?本当、姫?」
「うむ、この城は霊力によって作られたものじゃな…。」
姫も城の壁に触れようとすると道人の腕が発光し、壁も発光し始めた。
「…!? 我の霊力に反応を…!」
「俺もだ…。」
道人はこの現象に見覚えがあった。式地博士の資料室で起こった現象と同じだった。
(よく来たね、ジークヴァル。待っていたよ。)
「…!? ロード!」
道人から出た光と姫の霊力が一点に集まり、ロードが透けた姿で出現した。
(良かった、この場所なら君たちとちゃんと言葉を交わせそうだ。)
ロードの言う通り、資料室で会った時は言葉が途切れ途切れだったが、今回ははっきりと聞こえる。
(さ、ヴァエンペラたちに察知されてはまずい…。城の中に入ってくれ。積もる話はそこでしよう。)
「わ、わかった…。」
ジークヴァルが返事をするとロードは後ろを向き、城に入って行った。
「…罠…じゃないよね?」
愛歌はロードに対して警戒心を見せた。
「大丈夫だ、愛歌の姉さん。俺が警戒しといてやる。」
ヤジリウスが実体化し、ユーラの背中にいたヤジリウスのヘッドを掴んで装着した。
「いざって時は俺が歯車の虹彩刀であいつの魂を斬ってやる。構わないな、ジークヴァル?」
「我が友ロードの事を疑うのは気が引けるが…。同じく我が友である愛歌やヤジリウスの意見も大事なものだ。よろしく頼む。」
「へっ、嬉しい事言ってくれるじゃねぇの!」
「よし、我も木に糸を結んでおこう。いざと言う時はこれを手繰って外に出れば良い。」
姫はそう言うと近くの木に命綱となる糸を結びつけた。
ジークヴァルの意見も聞けたので道人たちはロードを警戒しながら城の中に入った。
城の中は真っ白な霧のようになっていた。
道人たちははぐれないようにまとまって歩いた。
愛歌、ユーラ、姫は道人に抱きつきながら歩く。
「…! 霧が晴れて来た…。」
道人たちが進んでいると白い水晶でできた地下室のような場所に辿り着いた。
「ここって、まるで狸たちのビーストヘッドの試練と似たような場所だ…?」
道人は潤奈と再会し、ハーライムが実体化するきっかけとなった十糸姫の糸を見つけた場所の事を思い出した。
(その通り。同じガイアの力によるものだからね。似たような作りになるんだよ。)
道人たちの前に透けたロードが姿を現した。
「ロード、まさかこんな形で君とまた話ができるとはな…。」
(確かに…。不思議なものだね、人の縁というものは…。さて、何から話そうか…。)
ロードはそう言うと顎に手を当てて思考し始めた。
「ロード、まずは前世の私の死後に君がどうしていたのかを教えてくれないか?」
(そうだね、そこから順を追って話していった方が話しやすいかもしれない…。わかった、話そう。僕があの後どうしたのかを…。長話になる。みんな、楽な姿勢でいてくれていいよ。)
謎多きロードの秘密が遂にわかる時が来た。
道人たちはその場に座り、ロードに視線を集めた。




