270章Side:ジェネラル・シユーザー 増強されるバドスン・アータス
「…遅い。ウェントとアレウリアスの奴、しくじりましたかね…。」
ジェネラル・シユーザーは散らかった大広間の玉座に座りながら足を組んだ右足を何度も上下させた。
「あいつらを行かせたのは失敗だったか…。下手したらせっかく新生したシチゴウセンが早くも六人になってしまいますよ…。」
ジェネラル・シユーザーはそう言いながら液体カプセルの中に入ったデリート・ラクベスとディスラプション・ダジーラクに話し掛けた。
「おい、お前らのリーダー帰って来ないぞ?」
ジェネラル・シユーザーは腕を組んで立っているエイプリルと棒立ちしているハクヤの方を見た。
グレリースとルアンソンも柱に寄っかかっている。
「私、知らない。そもそも私たち寝てたし。ウェントとアレウリアスが出撃してた事自体を知らない。」
「同じく。」
エイプリルとハクヤは共に頷き合った。
「…まぁ、そうなんですけどね。」
「ウェントの元となった人物はどういう状態なのですか?」
グレリースがジェネラル・シユーザーに尋ねた。
「空野豪の事か?変わらず寝たままだよ。」
「ヒューマン・デュラハンと元の人物の命は直結している…。元の人物が何ともないなら少なくともウェントは無事かとミーは思う…。」
ルアンソンも小さな声でジェネラル・シユーザーに意見した。
「まぁ、それもそうなんですけどね。」
『ウェントとアレウリアスの事は気にしなくていいよ。』
「ん…!?」
ジェネラル・シユーザーは急に見覚えのない子供が現れたので玉座から立ち上がった。
「な、何?この子…?」
「急に現れた…?」
エイプリルとハクヤも警戒し、子供から距離を取った。
グレリースとルアンソンも武器を構える。
「…待て、この子供は私だ…。」
子供の隣にシャクヤスが着地した。
「こ、この子供がヴァエンペラですって!?これは失礼を…!おい、お前たち!この方々はヴァエンペラ様だ!武器を下げろ!」
ジェネラル・シユーザーは慌ててエイプリルたちの戦闘態勢を解くように命じた。
「どういう事?シャクヤスがヴァエンペラ…様って…?」
「あ、あの、ヴァエンペラ様…?」
今まで秘密にしていたのにエイプリルたちに教えて良かったのか?とジェネラル・シユーザーはシャクヤスを見て気にした。
「…くくっ、もう気にしなくても良い…。…そろそろ明かし時であろうからな…。」
『改めて自己紹介しようか。僕は地球の意思…ガイアヘッドに寄生したヴァエンペラさ。』
ガイアヘッドはジェネラル・シユーザーに挨拶して見せた。
「お、驚いた…。このような子供がヴァエンペラの分身体とは…。何だか性格や雰囲気が…?」
「…くくっ、このような見た目だからな…。…わしの若い時の側面が強く出てしまっていてな…。…若気の至りというやつだな…。」
「な、なるほど…。それでヴァエンペラ様、先程のウェントとアレウリアスの事は気にしなくていいと言うのは…?」
ジェネラル・シユーザーは分身体と言えど、自分の父親の子供姿に戸惑いながら話題を元に戻した。
これまで採掘星に変えてきた多くの惑星でもヴァエンペラは分身体を作って来たのだが、それでも今回の子供の姿は慣れなかった。
「…何、ちょっとした余興の準備をな…。…奴らは今、とある場所で自身を鍛え直しているところだ…。…わしがそう仕向けた…。…だから、今は放置しておいて良い…。」
『それよりさ、たくさんお土産を持って来たんだ。Dレボリューション。』
ガイアヘッドがそう言うとDレボリューションが姿を現した。
「何?この仮面…?」
『彼もヒューマン・デュラハンなんだ。君たちと同類だから、仲良くしてね。』
「俺たち以外にまだヒューマン・デュラハンが…?」
ハクヤはそう言いながらジェネラルシユーザーを見た。
「あぁ、この仮面男はシャクヤスの方のヴァエンペラ様に命じられて私が造った…。元となった爺さんもこの艦のカプセルに寝かせてある…。それでお土産とは?」
『Dレボリューション。』
「はい。」
Dレボリューションはリモコンを取り出して操作すると突然異次元ホールが出現した。
「こ、これは…!?」
『ダガー・デュラハンさ。』
ジェネラル・シユーザーたちは異次元ホールの中を見た。
異次元ホールの中には上下左右、至るところに配置されたダガー・デュラハンたちが並んでいた。
「…素晴らしい…!驚きましたよ…!?Dレボリューションを造ってからそんなに経っていないはずなのにこれ程の数のダガー・デュラハンを製造できるとは…!?」
『千年以上も前から傀魔怪堕を騙して出来上がった力作…ってところかな?いやぁっ、苦労したよ。』
ジェネラル・シユーザーは感極まってダガー・デュラハンたちを見渡した。
エイプリルたちも驚きながら見ている。
「あなたのやる事には毎度驚かされる…!まるで毎日プレゼントをもらっているようだ…!私はあなたを誇りに思う…!」
ジェネラル・シユーザーは嬉し過ぎて敬愛する父に感謝の気持ちを伝えた。
『喜んでもらえて良かったよ。ねぇ、僕?』
「…くくっ、まぁな…。」
「…? あの水晶は何ですか?」
ジェネラル・シユーザーはダガー・デュラハンたちの他に水晶が置かれているのに気づいた。
ダガー・デュラハンたちに比べると数は少ないが、それでも百近くはある。
「ニンゲンのように見えますが…?」
『彼らは優良人種と呼ばれる人間たちさ。ちょっとやってみたい事があってね…。』
「ほう、まだ見せ物があると?それはそれは…。ならば、後の楽しみにしておきましょう…。」
ジェネラル・シユーザーはガイアヘッドとシャクヤスに対して頭を下げて敬意を見せた。
『ただね、不安材料としては魔月とかいう邪魔な連中がいてね…。まぁ、すぐにはこちらの異次元ホールに繋げはしないだろうけどね。』
ガイアヘッドがそう言うとDレボリューションは装置を操作して一旦異次元ホールを閉じた。
「…それとな、シユーザーよ…。…採掘星からのラックシルベの回収を終えた後になるが…。…近々、わし自らが地球まで出向くつもりだ…。」
「何とっ!?ヴァエンペラ様自らがっ!?つまり、地球の観察期間を終了し、遂に採掘星に変える時が来た訳ですか…!」
『そういう事。まぁ、まだ見たいものがあるからさ。すぐには仕掛けないけどね。』
「これ程の戦力があるのに、まだお仕掛けにならないので…?」
ジェネラル・シユーザーは恐る恐る二人のヴァエンペラに尋ねた。
『せっかくだから、もっと人間たちの足掻くところを見ないとね。ま、それも僕たちの気分次第なんだけどね。』
「と言うと…?」
「…わしはな、近頃は外の世界に関心を抱き始めてな…。」
「外の世界、ですか…?」
ジェネラル・シユーザーはヴァエンペラの言う事がよくわからなかった。
『この世界…ううん、この世界の外にも無限に世界は広がっているんだ…!全く飽きさせないね、この世の森羅万象というやつは…!』
ガイアヘッドは感極まって両手を横に広げて広い天井を見上げた。
「あなたという神は本当に私に無限の楽しみを与えてくれる…!ははっ!楽しみにしていますよ、ヴァエンペラ様!」
ジェネラル・シユーザーはガイアヘッドとシャクヤスと共に並び、近い内に起こるであろう輝かしき未来に胸を躍らせた。




