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ディサイド・デュラハン  作者: 星川レオ
第5部 銀河侵食帝王神ネガ・ディサイドヴァエンペラ
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267章 空野家の秘密のロード

 道人たちが開発エリアのビル内に入ると研究員たちが忙しそうにうろうろしていた。

 姫とユーラは研究員たちの邪魔にならないように道人と手を繋ぐのを止めた。

 道人の両手はやっと解放された。


「さて、博士の研究室は、と…。」


 道人たちは研究員たちにぶつからないように通路を歩く。しばらくすると式地博士の研究室に辿り着いた。

 フリーパスを使ってパスワードを入力した後にノックした。


「博士、道人ですけど…。」

「おぉっ、道人君たちか。入って良いぞ?」


 扉が開くと式地博士の背中が早速見えた。周りにも白衣を着た人が何人かいた。


「すいません、博士。忙しい時に…。」

「何、いいんじゃよ。よく来てくれたの。」

「…! マーシャル…!」


 潤奈が小走りし、ガラス越しにマーシャルがいるのを発見したのでガラスに両手を触れて見た。


「うむ、潤奈君。ちょうど新型フォンフェルの制作に取り掛かっているところじゃ。」


 式地博士はそう言うとリモコンを手に取り、近くのモニターに新型フォンフェルの設計図を映した。

 道人たちは全員その映像に注目した。


「早っ!さすが博士ね。」

「何、わしだけの力ではないわい、愛歌君。横島博士や矢張博士、兜博士の助力があってこそじゃよ。」

「いいじゃない。あの三博士、もうすっかり馴染んでるわね。」


 グルーナはそう言うと親指と人差し指を立てて顎に当てた。

 マーシャルの近くには横島博士と矢張博士がいて、共にフォンフェルのメインフレームを作っていた。

 下半身はないが、現時点でもう人の形になっている。


「あの…。」

「ん?」


 グルーナに白衣を着た女性が話し掛けて来た。

 長い茶髪のキャリアウーマンっぽい人だった。


「あなた、松島かなめ!?どうしてここに!?」


 ディールマーシャルにディサイド・デュラハンに関する知恵を無理矢理流し込まれた後、パークで保護していたのを連れ去られてしまい、超晴王の体内に取り込まれていたのを無事に救出できた松島かなめがそこに立っていた。

 そのかなめを見てグルーナは驚き、潤奈も気づいて駆け寄って来た。


「あの、ありがとうございます…。何だか、二度も助けてもらったみたいで…。」

「別にいいのよ、気にしないで!ね、潤奈?」

「…うん、無事で良かった…。」


 グルーナと潤奈は共に松島かなめが元気そうでほっとしたのか柔らかな笑顔を見せていた。


「ふむ、そのかなめさんとやらが何故ここにおるのじゃ?」

「はい、白衣まで来ておられて。」


 姫とユーラが松島かなめに質問をした。松島かなめは人見知りなのか困っていた。


「うむ、彼女は助けてくれたお礼に協力させて欲しいと申し出てくれたのじゃ。今回の騒ぎで彼女もディサイド・デュラハンに関する知恵が開花させられてしまっての…。元の会社に戻す事ができなくなってしまったんじゃ…。」

「そうなんですか…。」


 道人は松島かなめを巻き込んでしまい、彼女の振り回され具合に対して何だか申し訳ない気持ちになった。


「…ごめんなさい、私たちが不甲斐ないばかりに連れ去られてしまって…。」

「き、気にしないで…!いいのよ、こうして命があってこの場にいられる事ができたのだから…!本当に、ありがとう…!」


 松島かなめは申し訳なさそうにしている潤奈を精一杯励ましてくれた。


「私、皆さんの事情は聞かせてもらいました…。私に植え付けられたデュラハンの知識がお役に立てるのなら、恩を返すためにも頑張りたいと思います…!お父さんとお母さんのためにも…!」

「…この街に住んでおる松島君のご両親は避難民リストに載っておらんかったんじゃ…。恐らく、傀魔怪堕(かいまかいだ)に連れ去られたのじゃろう…。」


 ただでさえ、自身が不運な目に遭っていると言うのにご両親まで水晶化されていると知った道人たちは松島かなめの置かれた境遇に更に申し訳なく思った。


「だ、大丈夫!お父さんやお母さんだって、あなた方が全力で守ってくれたんです!だから、大丈夫…!」

「そう、あなた…強いわね…。じゃあ、あなたは今日から私たちの仲間ね。よろしくね、かなめ?」


 グルーナは右手で握手を求めた。


「はい…!すごい、私…!あのファッションデザイナーのグルーナ・フリーベルと…!」


 松島かなめはグルーナの右手を両手で持って激しく上下させた。


「あ、あなた、私のファンだったの…。なるほど、それなら逞しいかも…。」


 グルーナが左手で頬を擦っている間もかなめは激しい握手を続けた。


「おっと、話の途中だったの…。新型フォンフェルはアディション・デュラハン三機分のデータや、マーシャルのデストロイ・デュラハンの知識のおかげで大分完成度が高いものに仕上がりそうじゃ。動力部の発作は間違いなくなくなるじゃろう。」

「…! 博士…!」


 潤奈はそれを聞いて安心し、少し涙ぐんで笑みを浮かべた。


「良かったね、潤奈。」

「…うん!」


 潤奈は道人の方を向いて涙を拭った。その姿が色っぽかったので道人はつい頬を染めてしまった。


「どれ、せっかく来たんじゃ。マーシャルに会って行くか?」

「…いえ、やめときます。あの子の頑張りの…償いの邪魔になっちゃうから…。」


 潤奈はそう言うとガラス越しで熱心に横島博士と会話しているマーシャルを眺めた。


「…頑張れ、マーシャル…!お姉ちゃん、待ってるからね…!」


 潤奈は本人には聞こえてないが、マーシャルにエールを送った。


「えっと、博士。以前俺が博士に預けた古い書物や巻き物の事なんだけどさ…。」

「あぁ、すまんの…。預かったはいいものの、全く調べられんかったわい…。そこの扉の奥に置いてあるわい。」


 式地博士が指差した方を道人たちは一斉に向いた。


「仕方ないですよ、多忙でしたし…。今日は俺たちで調べてみようと思って。」

「わかった、元々道人君が持って来たものじゃしの。好きに扱ってよいぞ?」

「ありがとう、博士。」


 道人たちはそう言うと早速、式地博士が指差した部屋に入った。

 紙やファイルなどの資料が多くある場所だった。


「あったあった。わかりやすいところにあって助かるな。」


 道人はダンボールの一つを手に取り、近くの机に置いた。


「では、十糸(といと)姫先生!お読み下さい!」

「うむ、道人よ!後で我を褒めよ!そして、愛でよ!」


 姫はうきうきで書物を手に取って読み始めた。


「ならば、私も!アトランティスの語学力で!」

「…リ、リフドーの語学力で!」

「国語の成績力で!」

「どれどれ、私も。」


 ユーラ、潤奈、愛歌、グルーナも姫と一緒に読み始めた。


「ふむふむ…。どうやら、空野家はある日、不思議な姿をした男を夫として迎え入れたようじゃな…。」

「…!? 姫、読めてる!?」

「ふふん♪もちろんじゃ!」


 驚く道人に対して姫はドヤ顔を見せて来た。


「やるね、これは手応えありと見た!」

「うむ、その通り!今日の道人は我が独占じゃ!」

「いや、そう言う手応えではなくて…。」


 道人はウキウキ状態の姫に突っ込みを入れた。


「くっ、これでは姫の一人勝ちですね…!」

「…不覚…。」

「さすが今を生きる平安女子…!やっぱり国語だけじゃ駄目かぁ〜っ…!やっぱり古文とかじゃないと!」

「ま、こればかりはさすがに武が悪いわね…。」


 ユーラ、潤奈、愛歌が姫の活躍を見て悔しがっていた。

 グルーナは腕を組んで頷く。


「その男は自分を守護者と名乗り、遠くの国からやって来たようじゃ…。名は空野郎戸(ろうど)…。」

「…!? ロードだとっ!?」


 思わずジークヴァルがデバイスから大声を発した。

 道人は気を遣ってデバイスを手に取り、姫に画面を向けてあげた。


「でも、漢字…?違う人の可能性も…?」

「続けるぞ?その郎戸は自分を助けてくれたお礼に村の人たちに多くの知恵を与えたそうじゃ。住処はより強固なものに、畑はより豊かに…。戦闘能力も高く、村が荒くれ者たちに襲われても不思議な能力で追い払ったという…。彼が名乗った守護者の名は瞬く間に名を広げたと言う…。」

「守護者…!やっぱり…!」


 道人は興奮してつい姫の左肩に右肩をくっ付けて見た。

 姫は頬を紅潮させ、両手を光らせた。


(み、道人…。ジークヴァル…。)

「えっ…!?」


 その時、道人と姫の身体と書物から光の粒が出始めた。


「な、何?何っ!?」「何事じゃぁっ!?我の霊力が溢れて…!?」

「「「み、道人!?姫!?」」」


 愛歌たちが心配する中、道人と姫は慌てて自分の身体を見た。

 光は集まり、人の形を成していく。


(…道、人…。ジーク…ヴァル…。)


 現れた人影はかなり途切れ途切れで言葉を発していた。


「お前は…!?私が友の姿を見間違うはずがない…!」

(うん、久…ぶり…ね、ジークヴァル。また、こう…て、君…出会…た…。)

「ロード…!」


 集まった光は道人たちがジークヴァルの前世で見たロードの姿となった。

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