257章Side:大樹 お節介なサンタクロース!あっしは大樹の【鉄絆法師】!
愛歌の開けた小箱から突然現れたサンタクロース。
この場にいる者は皆、驚きを隠せなかった。
「大樹、良かったさぁっ!サンタさん、来てくれたさぁっ!大樹は預言者さぁっ!」
「そ、そうじゃの…!俺も驚いたぞい…。」
大樹は以前、道人たちとサンタクロースやクリスマスパーティーの話題で盛り上がった事があった。その話題の主が今、目の前にいた。
「とてもクリスマスパーティーをやってる場合じゃねぇけどな…!」
深也はそう言いながらランドレイクと共にDR キリンダガーと交戦を続ける。
ダガー・デュラハンたちも突然現れたサンタクロースに混乱しているようだった。
「まさか本物に会えるとは思わなかったぞい…。」
「さて、本物…と言っていいものかな?」
大樹の言葉に対し、サンタクロースは妙な言い回しをして来た。
「えっ?どういう事…?」
「その前に、じゃ…。」
愛歌の疑問に答える前にサンタクロースは右手から聖なる輝きを放ち、辺りに霧散させた。
愛歌たちの身体から白い光のオーラが発せられる。
「…! 身体が…?」
「み、みおん!?」
海音は疲れ果てていたのが嘘だったように急にスランの手から離れ、上半身を起こした。
「な、何だか身体がすごく軽いです…!さっきまでの疲れがまるでなかったように…。」
「そ、そういわれると、わたしも…!」
海音とスランは共に立ち上がり、身体の具合を確かめた。
「ダーバラ、これなら…!」
「あぁ、まだやれるさね…!」
ボロボロだったディアスとダーバラたちも装甲が元に戻り、竜鳥亀虎黄=五征王たちに鎌と鞭で改めて立ち向かう。
「クリスマスにはまだ半年早いが、今はそんな事は言っておられん。わしからの特別なクリスマスプレゼントじゃ。君たちの体力とデュエル・デュラハンの実体化、ヘッドの使用回数を一回分回復させた。」
「…! ヘッドを…!?」
愛歌たちは急いでデバイスを確認すると確かに一回分回復できていた。
「えっ?一体どうやって…?」
「すごいです、デュエル・デュラハンの実体化時間まで…。」
愛歌のルブランも、海音のシーラも実体化が可能になっていた。
「と言うか、何でサンタさんは俺らのデュエル・デュラハンが実体化できる事を知っておるんじゃ…?」
「ほっほっ、サンタは何でもお見通しじゃよ。」
サンタクロースは自慢の白髭を右手で触れた。
ダガー・デュラハンたちはサンタクロースを危険人物と判断したのか、大勢で襲い掛かって来た。
「おぉっ!?サンタさん、危ないぞい!」
「大丈夫じゃ、優しき子よ。サンタは一日で世界中を回るもの…。危機回避能力には長けておる…!」
サンタクロースはダガー・デュラハンたちの攻撃を軽やかな身のこなしで次々と避けていく。
バズーカの弾でさえも軽々と避けてみせた。
「ろ、老体の身で何という身のこなしじゃ…!?」
「羨ましい限りですねぇ。ところで、私マッドサイエンティストなんですがプレゼントもらえますかね?」
「よ、横島博士…。」
フィールドウイング零型から博士たちの会話が聞こえて来た。
フィールドウイング零型も首を傾げる。
「サンタの奇跡の魔法は本来、子供たちを喜ばせるためにあるもの…。わしには戦闘回避能力は合っても、戦闘能力はそこまで高くはない…。じゃが…。」
サンタクロースがダガー・デュラハンたちの攻撃を回避し終えた後、後ろから巨大な角を生やしたトナカイがダガー・デュラハンを蹴散らしていく。
「時にはプレゼントを独り占めしようと襲い掛かって来る者たちもおる…。そのための頼もしきボディーガードであり、共にプレゼントを配るわしの相棒…それがトナカイじゃ。」
トナカイは人型に変形し、首のないトナカイデュラハンとなった。
両肩に大きな角を配置し、ウイングのようにした。
「サ、サンタさんがデュラハンを…!?」
「い、一体何が起こっとるんじゃ…!?」
「さすがサプライズの達人さぁ。人を喜ばせる者として見習いたいさぁ。」
サンタクロースが現れた事自体に驚いているのに、サンタクロースは自分たちが知っているサンタのイメージとはかけ離れた行動の数々を見せて来るので愛歌と大樹は驚き過ぎて認識がついて行けず、カサエルはサンタに尊敬の眼差しを向けていた。
「何、わしもまだまだ未熟の身…。根源に存在する数多のサンタクロースたちと比べたら、わしなんて端くれ者じゃよ。」
「こ、根源…?」
大樹たちにはサンタクロースの言う事がよくわからなかった。
「その言葉、確かガイアヘッドの野郎が…。」
深也が話した事で大樹は思い出した。ランドレイクのビーストヘッドの試練を受けに行った際の道人たちの報告で根源という言葉を聞いた覚えがあった。
「行くぞ、トナカイ!ヘッドチェンジじゃ!」
サンタクロースはデバイスを出現させ、クリスマスカードを回転させてキャッチし、デバイスに読み込ませた。
「ヘッドチェンジ!ブリザードホーン!」
トナカイのデュラハンに大きな氷の角が生えた頭が付き、上半身に氷の鎧を着込んだ。
「識別入力!」
サンタクロースは素早い手捌きで画面をタッチする。
トナカイは大きな氷の角から冷気を放ち、ダガー・デュラハンや首無し鎧武者を凍り付かせた。
空を飛んでいるDR バードダガーにも放ち、凍り付かせて落下させる。
「こ、これは…?」
サンタクロースの識別入力のおかげか、大樹たちは無事で凍り付かなかった。
「へっ、こいつはいいぜ!サンタの凄さ、理解!」
グゲンダルは嬉々として凍り付いたダガー・デュラハンたちを殴り壊して突き進む。
「サンタさン、強ッ!ネ、愛歌?」
バイパートワマリーが愛歌の隣に着地すると同時にサンタクロースとトナカイのデュラハンが少し透明化した。
「サンタさん!?」
愛歌は慌ててサンタクロースの背中に向かって叫んだ。
「心配するでない、優しき子よ…。わしは君にあげた箱に込められた奇跡によって、分身体として実体化しておる…。本来、わしの力はクリスマスのみに発揮される力…。常にこの魔法が行使できる訳ではないのじゃよ…。」
サンタクロースは透けた自分の手を見てそう言った。
多くのダガー・デュラハンたちをあっという間に凍てつかせる程の強力な力なので無理もないと聞いてて大樹も思った。
「あまり長くは戦えないが、この奇跡の力が続く限り、君たちのために精一杯戦ってみせよう…!」
サンタクロースはデバイスを構え直し、トナカイのデュラハンを竜鳥亀虎黄=五征王たちの元へと向かわせた。
「サンタさんがくれた奇跡、無駄にはしません!やりますよ、スラン!」
「まかせて、みおん!」
海音は再び高速移動を開始。スランは薙刀を振り回し、宙に出現させた四つのリボンを凍り付いたダガー・デュラハンたちに向かって伸ばす。
「大樹、あっしらも反撃開始さぁっ!」
「おう!頼むぞ、狸!」
「ーうん!」
大樹の右肩に狸が出現し、ビーストヘッドを使う準備をする。
(大樹。)
「えっ?」
大樹が狸に触れようとすると背後から声が聞こえて来た。
その声の事はあまり思い出せないが、それでも不思議と懐かしさを感じる声だった。
大樹は急いで後ろを振り返る。
抱き寄った男性と女性が立っていた。
(大樹…。)
「…と、父ちゃん…?…母ちゃん…?」
(大樹…!)
大樹の母・美紀は涙を流し、父・陸鳳は妻を抱きしめながら大樹に微笑みを見せていた。
父と母の姿は大樹がアルバムで見た姿と変わらず、自分が八歳の時の姿のままだった。
陸鳳は大樹に似て逆立った髪の筋肉質の男。美紀は長い茶髪の細身の身体の女性だった。
「な、何で…?こ、これは夢なんか…?そ、それとも傀魔怪堕かDレボリューションの策略なんか…!?」
(ひどいなぁっ、大樹!久々の家族の再会なんだ、夢でも策でもあってたまるか!)
「父ちゃん…!」
(私たち、ある人にここに案内されたの。大樹たちを応援してあげて欲しい、って。)
「母ちゃん!」
大樹の両親は八歳の頃に事故で亡くなっている。大樹の目からは涙が流れ始めた。
「た、大樹のご両親なのさぁっ?」
「ーこの人たちが…大樹の…。」
カサエルと狸にも大樹の両親が見えているようだった。
(ごめんな、大樹…。父ちゃんたち、お前とあんまりいられなかったな…。でも、父さん…おっと、大樹にとっては爺ちゃんだな。爺ちゃんの元で陶芸、頑張ってたな…。)
(私たち、死んだ後もあなたの事を見守ってたのよ?鳥の絵柄のお茶碗、上手に出来てたわね…。)
前に家に来た潤奈たちにも見せた事がある鳥の絵柄の茶碗。
それを両親が知っていてくれるとは思わなかったので、大樹は右腕で流れる涙を必死に拭った。
「な…何じゃ、父ちゃんも母ちゃんも…俺の事、ずっと…!」
(当たり前だ!私たちはずっと家族だ!それは変わらない、ずっと…!)
陸鳳がそう言うと美紀と共に姿が消えそうになる。
「父ちゃん、母ちゃん!?」
(ここまでみたいだな…。大樹、父さんたち傀魔怪堕でずっとお前の事を見守ってるからな…!頑張れ、大樹!)
(大樹、またね…!)
「か…!」
大樹が左手を伸ばすと陸鳳と美紀は笑みながら消えた。
大樹はゆっくりと左手を下ろす。
「大樹…?」
「な、何じゃ…?これも、サンタさんのプレゼントか…?それとも、傀魔怪堕と地上世界が融合している最中の現象か何かか…!?全く…!」
大樹は右腕で目をごしごし拭いた後、カサエルと狸の方を向いた。
「大樹…。」
「少なくともわかったのは…!この世界からいなくなったとしても、父ちゃんと母ちゃんは傀魔怪堕に死者として内包されておったんじゃ…!」
大樹が右手で握っているデバイスが強く発光し始めた。
「父ちゃんと母ちゃんは死んだ後も俺の事を見守ってくれてた…!少なくとも、俺たちのいるこの世界はそう言う仕組みだったんじゃ…!こりゃっ、今度から悪い事は絶対にできんぞい…!父ちゃん母ちゃんがくれたこの命、大事にせんといかんからな…!」
「大樹、ならさぁっ…!」
「あぁ、俺たちは負けない…!道人たちが帰って来るまで、俺たちは絶対に負けないんじゃ!」
『ディサイドディサイドディサイドディサイドディサイド。』
ディサイドデバイスから何度も音声が鳴り出す。
「これは…!? …全く、プレゼントくれ過ぎじゃぞ、サンタさん!これは今年のクリスマスプレゼントはなしじゃな!前借りし過ぎじゃ!」
「じゃあ、大樹ぅっ!その分…!」
「おう!みんなにも分けてやるんじゃぁっ!」
『セカンド・ディサイド、解放。』
大樹の左手に新たなカードが出現した。
「ヘッドチェンジ!【鉄絆法師】!」
『セカンド・ディサイド、承認。』
カサエルに『絆』と白文字で書かれた黒い鋼鉄の三度傘を被った頭がつき、黒いマントと白い装束も新たに装備される。
銀色の唐傘が一本カサエルの前に出現する。
「あ、久しぶりさぁっ!一本の唐傘を…ニ、三、四、新たに五いさぁっ!」
【鉄絆法師】カサエルが両手を左右に振ると一本だった唐傘が五本に増える。
【鉄絆法師】カサエルが人差し指で傘にちょんちょんと触れていくとそれぞれメタリックな赤、青、緑、黄、紫と色づいていく。
「【鉄絆法師】カサエル!あ、推参!」
右手に出現させた傘を右肩に置いた後、唐傘が一斉に開き、カラフルな花びらが雪と混じって【鉄絆法師】カサエルの周りに舞い散る。
「…! この気配は…?」
【鉄絆法師】カサエルは何故か遠くを見た。
「…まさか、大樹の両親を連れて来てくれたのは…?」
「どうしたんじゃ、カサエル?」
【鉄絆法師】カサエルは首を左右に振り、ダガー・デュラハンたちの方を向いた。
「何でもないさぁっ!あっしの事を見守ってくれてる、お節介なサンタさんは他にもいるもんさぁっ!行くぞぉっ、大樹ぅっ!」
「おう!」
【鉄絆法師】カサエルは五つの鉄の唐傘を開き、前に飛び跳ねた。
「…ありがとうさぁっ、先生…!」
突撃した【鉄絆法師】カサエルが何かを言ったが、大樹にはよく聞こえなかった。




