257章Side:愛歌 良い子たちにそれ相応の奇跡を! 季節外れのサンタクロース
時刻は朝七時過ぎ。愛歌はトワマリー、バイパーウイングのメンテナンスが済んだので街中で戦っている深也たちと合流し、バイパートワマリーに運ばれる形で再び戦場に戻った。
すぐに愛歌に護衛のキャルベンの兵士三人が付く。
「げほっ、ごほっ…!?」
「みおん!?」
高速移動を可能にした鎧を着続けた海音。
スランのリズムマーメイドやキューティーパイレーツのヘッドの力で合間合間に海音の身体を癒していたものの、回復してもすぐ高速移動に取り掛かっていたので既に肉体の疲労が限界に来ていた。
「おい、海音!?」
グゲンダルが走って近寄ろうとするが、DR キリンダガーの群れが一斉にムエタイの構えで襲い掛かって来た。
「くっ、てめぇら!どけぇっ!」
グゲンダルももう身体がボロボロだったが、宙に浮いた欠けたボルトを繋げて槍のようにして振り回し、DR キリンダガーたちを遠ざける。
「グ、グゲンダル様…!?」
グゲンダルの周りのキャルベンの兵士たちはDR キリンダガーの蹴りを主軸としたムエタイ戦法に対し、次々とやられていった。
「こいつら、もう兵士たちの動きを完全に読んでやがる…!?おかげで兵士が増産されるよりもやられる速度の方が速ぇっ…!?」
DR ダガー・デュラハンたちはもうかなりラーニングされていた。
グゲンダルの大振りな動きも見切っているのか、グゲンダルの近くには素早いムエタイの動きをするDR キリンダガーたちが群がっている。
「海音、ぼさっとしてんな!」
深也とLFランドレイク、深也の護衛を任されたニ人のキャルベンの兵士が海音の助けに駆け付けた。
「おらぁっ!」
LFランドレイクは海音とスランに襲い掛かるDR タイガーダガーの一体に電流の拳をお見舞いした。
「へっ…!俺たちの奇想天外な動きは真似できねぇだろぉっ…!」
不良王と名を馳せた深也はやられたキャルベンの兵士の槍を拾ってLFランドレイクと共に戦っていた。
それでも深也は息切れしながら戦っている。
「み、みおん…。ほら、深也やランドレイクがたすけにきてくれたよ?」
「………。」
海音は下を向いて妙な呼吸の仕方をしていた。スランの声も聞こえていない。
「えぇい、ぞろぞろとぉっ!美しくないんだよ!」
「あぁ、同感だ…!」
五体の竜鳥亀虎黄=五征王とDR バードダガーの群れがボロボロのディアスとダーバラを襲う。
「ヘッドチェンジなしでも戦えるあたいらがへばる訳にはいかないんだよ…!」
「元シチゴウセンの底力、侮るなよ…!」
ダーバラは鞭を振り回し、ディアスはビーム死神二体とビームコウモリをばら撒いてダガー・デュラハンたちが攻撃する暇を与えず、的確に相手に攻撃をしていた。
が、そんな戦法を取っていても竜鳥亀虎黄=五征王たちもビームコウモリやビーム死神を再現して向かって来る攻撃を捌いていく。
「くっ、まずいな…!この状況は…!?」
「司令!」
司令の背後にDR ドラゴニックダガーが棍棒で襲い掛かるが、博士の操るフィールドウイング零型が飛び蹴りで助けた。
「助かった、博士!」
「何、このフィールドウイング零型はまだ戦場に来たばかり…!ラーニングされておらん分、わしらが頑張らねばな…!」
「ほら、次が来ますよぉっ!」
横島がフィールドウイング零型に襲い掛かる新たなDR ドラゴニックダガーの接近を教え、フィールドウイング零型が右腰に配置したプロトキャノンで応戦に入る。
「あっしらがみんなを守るべきなのに…!」
「目には目を、防御には防御って訳ぞい…!へっ…!こいつら、結構頭が悪いAIかもしれんぞい…!」
カサエルと大樹はDR タートルダガーと首あり鎧武者たちに囲まれていた。
カサエルの防御力は警戒され、逆にDR タートルダガーの甲羅シールドによる包囲網や、甲羅を回転させてのノコギリ攻撃で足止めを喰らっていた。
「くっ、みんな…!」
ダガー・デュラハンたちの脅威の学習能力に対し、もう愛歌たちは満身創痍の状態だった。
地上世界と傀魔怪堕が融合するまで後一日あるが、とてもそれまでは戦い続けられそうになかった。
愛歌は両手で自分の頬を叩いた。
「何、弱気になってんの、愛歌…!私たちが諦めたらパークの結界が破られて、街の人たちが全員内包されちゃう…!休んでたあたしが頑張らないと…!諦めてたまるもんかぁっ!」
「そうヨ、愛歌!私たちハまだ戦えル!」
バイパートワマリーは小型リングを五つ浮遊させて背中のキャノンを両腰に移動させて飛んだ。
「トワマリー、空から粘着弾を連射!奴らの動きを封じてみんなに行動の自由を!」
「合点ッ!」
「バイウイちゃんも…行ける、わよね?」
通信越しの大神も声だけでも疲れているのがわかった。
「…はい、大神隊員!行きましょう、トワマリー隊員!」
「再び合点ッ!」
トワマリーは右目にレーダーアイを表示し、両手で両腰のキャノンを構える。
愛歌もデバイスで小型リングを操作する準備に入る。
「跳弾による砲撃ならラーニングしようがないでしょ!撃って、トワマリー!」
バイパートワマリーは右側のキャノンで粘着弾を発射した。
小型リングを通して無理矢理軌道を変え、グゲンダルに襲い掛かるDR キリンダガー三体をまとめて粘着弾を当てた。
「おっ!?ありがてぇっ!」
グゲンダルは羽子板プレートで粘着弾で纏められたDR キリンダガーをぶっ飛ばした。羽子板プレートには粘着がくっ付かないようにして器用に叩いてみせた。
「次…!海音さんと深也!」
「はイ!」
バイパートワマリーは体勢を整えて今度は左のキャノンで撃とうとする。
「小型リングの位置修正…!これで…!」
愛歌が小型リングを操作し、バイパートワマリーは左のキャノンで粘着弾を放つ。
深也とLFランドレイクと戦っているDR タイガーダガー二体を粘着弾で纏めた。
「次、ダーバラ、ディアス…!」
愛歌とバイパートワマリーは次々と小型リングによる跳弾でこの場で戦っているみんなのサポートをしてみせた。
「す、凄い、愛歌ちゃん…!?一体どうなってるの…!?」
「はい、大神隊員。愛歌隊員が今やっている小型リングによる跳弾や反射のための誤差修正はもはや神業の域に達しています。」
愛歌自身も今自分がやっている事に驚いていた。緊張の糸が切れたらもう出来なさそうな感じがしたのでひたすらやり続ける事にした。
が、危機感を感じたダガー・デュラハンたちはDR バードダガーたちをバイパートワマリーに向かわせた。
「もう、せっかく良い感じだったのに…!トワマリー、応戦!」
バイパートワマリーは飛び回って粘着弾を連射してDR バードダガーたちを撃ち落としていく。
「トワマリーを倒せないんだったら、奴らがやる事は…!」
DR タイガーダガー三体が爪を立てて愛歌に襲い掛かる。
キャルベンの兵士三人が愛歌の守りに入った。
「愛歌さん、下がって!」
キャルベンの兵士三人は水の刃を放つが、DR タイガーダガー三体は爪で水の刃を弾いて進む。
「愛歌ッ!」
バイパートワマリーは愛歌に襲い掛かるタイガーダガー三体に粘着弾を当ててみせた。
「我らキャルベンの技、容易く真似られると思ったら大間違いだ…!」
キャルベンの兵士三人は粘着弾で纏まったDR タイガーダガー三体を槍で刺しまくり、機能を停止させた。
「ありがとう、兵士さんたち…。」
「いえ…。」
キャルベンの兵士の一体が愛歌に話し掛けようとすると上空から降りてきたDR キリンダガーが踵落としを喰らわし、消滅させた。
「あっ…!?こっのぉっ!」
愛歌は消滅したキャルベンの兵士の槍を掴み、DR キリンダガーに槍を突き出した。
DR キリンダガーは避けた後に槍の先をチョップし、愛歌の腹に槍の手持ち部分を激突させた。
「がっ…!?」
迂闊だった。ダガー・デュラハンたちは制服バリアの仕組みまで学習していた。
愛歌は自分が持った槍で自分を傷つける事になってしまった。
愛歌はその場に倒れる。
「げほっ、ごほっ…!」
「愛歌さん!貴様ぁっ、これ以上は許さん!」
キャルベンの兵士一人がDR キリンダガーの相手をし、一人は愛歌に近寄って守りに入った。
遠くでヘビーアサルト=ホエールランドレイクのフルバーストを真似た五体の竜鳥亀虎黄=五征王の攻撃でダーバラとディアスがぶっ飛んでいた。
「…あぁっ…!?」
カサエルの三度笠の一つが粉砕され、ランドレイクが元の姿に戻る隙を狙われて攻撃を受けていた。
「…げほっ、このまま…じゃ…。」
愛歌の脳内に流咲、グルーナ、真輝、潤奈、道人の顔が浮かび、涙を流していた。
「…約束…。守らない、と…。そうだ、守らないと…!まだ、まだぁっ…!」
その時だった。愛歌の右ポケットが赤く発光していた。
「…? 光…?」
愛歌は右腕を震わせながら光っている物を取り出す。
「…これ、お爺さんがくれた…。」
窮地に陥った時に開けるといいと言われた小さな箱。
愛歌は不思議と無心になって箱を開け始めた。
「…空っぽ…。…何だ…。」
愛歌は目を瞑りそうになった。
「よく頑張ったな、お嬢ちゃん。君は勇気のある子だ。」
「…えっ…?」
愛歌は気が付いたら見覚えのある赤い衣装を身に纏ったお爺さんに抱えられていた。
何故か愛歌は身体が楽になったような気がした。
「あの時の、お爺さん…?」
よく見ると街中で道人が助けたお爺さんだった。
「待っていなさい。今、良い子たちにはそれ相応の良き事を。悪い子たちには…こうだ!」
お爺さんがそう言うと急に雪が降り出した。
ソリを引っ張ったトナカイが急に現れて体当たりをし、DR キリンダガーをぶっ飛ばした。
「なっ…!?ゆ、雪…?何で…?今、五月だぞ…!?」
「…綺、麗…。」
深也は驚いて周りを見て、目を覚ました海音は雪に見とれていた。
「さて、世界から子供たちを攫い、笑顔を奪った不届き者たちにはお仕置きをせねばならんな…!」
お爺さんは愛歌を地面に下ろし、逞しい赤い背中を見せた。
左肩に大きな袋を担いだ。
「あ、あれは…!?」
「サ、サンタさんじゃあぁぁぁぁぁ〜っ!?」
司令が驚いた後、大樹の叫びが戦場にこだました。




