7.食生活の改善(1)
心からの信仰を集めるには、ミリアたんの力で領地を豊かにしなければならない。そして今、この領地に足りないものは――圧倒的に食料だ。
食料を確保するには、まず畑をどうにかする必要がある。聞いた話では、これまでまともな収穫が得られなかったのは、単純に知識不足が原因らしい。
ならば話は簡単だ。畑の問題を解決すれば、状況は大きく改善するはず。
これが、第一段階。
まずはミリアたんの力で育てた農作物の一部を売って資金に変える。そして、そのお金で農具と種を揃えた。
選んだ作物は、じゃがいも、かぶ、そして豆。どれも育つのが早く、収穫量も期待できる。
とにかく今は、みんなが腹いっぱい食べられることが最優先だ。体に力がなければ、何も始まらない。
何をするにも、まずは食べることから。そして、今日――その第一歩を踏み出す日が来た。
「よし、準備は完了したね」
荒れ果てた畑の前に村人全員を集めた。これから、皆で畑を耕していくつもりだ。すると、その様子を見て家族が心配してくる。
「ほ、本当にやるのか?」
「だ、大丈夫なの?」
「シアはまだ赤ちゃんなのに、何かするのか?」
両親がオロオロとして、お兄様が不思議そうに頭を傾ける。
「大丈夫、私に任せて! 知識もあるから、やり方も分かるよ! これで、みんなが救われるなら安いものだよ!」
「まぁ! シアはなんて素晴らしい天使なの! 可愛らしいだけじゃなくて、こんなにも優しい思いに溢れているなんて!」
すると、お母様が感動をしてギュッと抱きしめてくる。へへっ、家族との交流はこそばゆいな。
「シアは神が遣わせてくれた天使なのかもな」
「えっ!? 俺の妹って天使だったの!?」
「えぇ、とびっきりの可愛らしい天使よ!」
家族がめちゃくちゃ持ち上げてくれる。よせやい、照れるじゃないか。
「じゃあ、皆。私の動きを見て、その通りにするんだよ!」
「えっ……赤ちゃんのシア様の真似を?」
「それは、これから見せるから。ミリアたん、祈りを捧げても大丈夫そう?」
『うん、任せて。今度はしっかりと受け止めてみせるから』
ミリアたんがしっかりと頷いてくれた。だけど、前回のようにならないように、少し控えめにしよう。だって、何よりもミリアたんが一番だから。
私は手を組んでミリアたんを拝む。心を落ち着かせて――。
「ミリアたんは世界で一番尊くて可愛くて愛おしくて存在しているだけで全てを救う至高の神様であり私の生きる意味であり生きる糧であり心と体と魂のすべてを満たしてくれる最高の存在でありその一挙手一投足が奇跡であり輝きであり希望でありどんな絶望も塗り替える光でありこんなにも素晴らしい推しに出会えた私は宇宙一幸せ者であり――」
『な、長いよ!』
「ミリアたんのためならどんな困難も乗り越えられるしこの身が朽ちても信仰を捧げ続けるとここに誓うからどうかその偉大なる御力をほんの少しだけこの地に分け与えてくださいミリアたんは最高で至高で唯一無二で永遠に愛されるべき神様です!」
『うっ……い、いくよ!』
その時、ミリアたんが光って、その光が私に注がれる。この力があれば、何でもできる!
想像しろ! 岩をも砕く強靭な腕! 大地を踏み割る強靭な脚! どんな過酷な環境でもねじ伏せる圧倒的な肉体!
血は滾り、骨は軋み、筋肉は唸る。そのすべてを、この身に!
限界なんていらない、常識なんて叩き壊せ! 私の体よ、覚醒しろ! 進化しろ! 超えろ!
今ここに顕現しろ、最強の肉体!!
その瞬間、体の奥で何かが爆ぜた。
骨が軋み、筋繊維が膨れ上がり、血流が轟音のように全身を駆け巡る。内側から押し広げられるように肉体が変質していく。否、進化していく。
細かった腕は一瞬で張り詰め、隆起した筋肉が波打つ。脚は大地を踏み砕かんばかりの力を宿し、全身がまるで別物のように作り替えられていく。
そして気づけば私は、ただ一人だけ場違いなほど筋肉隆々の存在へと変貌していた。頭以外は。
「きゃぁぁああああああっ!! 天使が化け物にっ!?」
「シア、シアはどこに行った!? シアーーーッ!?」
「すっげぇぇぇえええええっ!! いいなぁぁぁぁああああっ!」
すると、お母様が涙を流して絶叫し、お父様は頭を抱えて、お兄様は目を輝かさせてこちらを見た。
「うわぁぁあああっ、邪神の化身だぁぁああっ!」
「ひぃぃいいっ、た、助けてぇぇえええっ!」
「こ、殺されるーーーっ!」
周りにいた村人たちは阿鼻叫喚になった。
「はははっ、何をそんな大げさな」
そう、素晴らしいミリアたんの力を受けて、私は畑を耕す強靭な肉体を手に入れたのだ! 流石、ミリアたん!
皆にミリアたんを信仰すると、こんなに凄いことが起こるんだって体を使って教え込まなくちゃ!




