5.推し活パワーで窮地を脱せよ!
「農作物を一瞬で育てる? そんなことが可能なのか?」
話を聞いていたお父様が不思議そうに首を傾げる。
「まぁ、普通なら時間がかかる。だけど、ミリアたんの力を使えば可能だよ」
『わ、私の力ってそんなに便利なの?』
「大切なのはイメージ。今までミリアたんで色々な想像をしていた私にかかれば、簡単なことだよ」
『な、何を想像していたのっ!?』
そりゃあ、推しの可愛い姿とか困っている姿とか戸惑っている姿とか――。
『わぁ、言わないで! 恥ずかしい!』
「おっと、ごめん。心の声が聞こえるんだったね。でも、これでミリアたんに隠し事が出来なくなったね。ふふっ、一心同体……」
『そ、そんなことよりも! 本当に解決できるの?』
「もちろん! さぁ、畑に移動しよう!」
私が宙に浮きながら移動をすると、その後ろから皆がついてくる。そうして、畑の前に来る。
「ここには農作物の種が植えられている?」
「は、はい……。石で土を掘り起こして、そこに種を入れてます」
「石? 農具すらないの? 畑が全然耕されていないのが良く分かったよ」
農具がなけりゃ、畑を耕せない。なるほど、根本的な物が足りないせいでこの状況になったのが分かった。
でも、今はそれを考えている暇はない。とにかく、今は農作物が沢山必要だ。
「まぁ、畑に種が埋まっているなら話が早い。それを、成長させれば農作物が手に入るってことだね」
そう言うと、お父様も村人もざわつき始めた。どうやら、信じられないらしい。
ふっふっふっ、そんな気持ちも一瞬で変わる。それだけ、ミリアたんの力が凄いんだから。きっと、これが終わるころにはミリアたんを敬う信者が沢山出来るはず!
「じゃあ、ミリアたん……私の信仰を受け取って」
『うん。いつでもいいよ』
深呼吸をして、力を溜める。いつもしていた、ミリアたんを讃える振付……。それを、本人の前で披露する時が来た!
「ミリアたん、見て! これが、私の推し活だぁっ!」
手と足を激しく動かして、オタ芸をする。ペンライトがないのが残念だが、仕方がない……。私の気持ちをこのオタ芸にっ!
「シア、どうした!? なんか、ものすごい動きになっているぞ!?」
「お嬢様、邪神に取りつかれたんじゃ!」
周りが何と言おうとも、私のミリアたんの推し活は邪魔させない! うおぉぉっ、私の気持ち、ミリアたんに届けぇぇえええっ!!
『あっ、なんか凄い信仰が集まってくる! な、何これ……こんなの初めて!』
すると、ミリアたんの体がまばゆく発光した。今までにないくらいに激しい光だ。
『こ、こんなに強い信仰の気持ちを受け取ったのは……初めてっ! も、もう……耐えきれないっ!』
えっ、やりすぎた!? じゃ、じゃあ! ミリアたん、その力を私に宿して!
すると、ミリアたんから光が発射されて直撃した。おぉ、体に力が溢れてくる! じゃあ、この力を農作物が成長するようにイメージをして……むむむっ!
「こうだ!」
手を構えて、体から力を解放した。すると、光が広い畑を包み込む。しばらくは何も反応がなかったが、突然土が動き出した。
そして、そこから芽が出て、急激に成長していく。
「み、見ろ! 育っていっている!」
「し、信じられない! こんなに一瞬で!」
「まさに、神の御業!」
その光景に誰もが釘付けになる。種を植えただけの、耕されていなかった畑から、次々と芽が出て農作物に成長していく。
そして、畑には一面に成長した農作物が現れた。
「こ、こんなことが本当に起こるなんて……! シア様、ありがとうございます!」
「シア様は神様の申し子じゃー!」
「あぁ、シア様……ありがとうございます!」
すると、村の人たちが集まってきて、お礼を言ってきた。誰もが嬉しそうな顔をして、泣きながら喜んでいる。
これは、布教するチャンスでは?
「皆、これが信仰の力……推し活の力。その力があれば、もっと豊かになれるんだよ」
「信仰とは凄いんですね。これなら、私も信仰したいです!」
「俺も! 俺も信仰して、食べ物をいっぱい食べたい!」
「信仰すれば、可能なんですか!?」
「もちろん、ミリアたんを信仰すれば、これよりもっと凄いことが起こる。お腹いっぱいに食べられるし、心は救われるし。着るものだって良くなるし、心は救われるし。住むところだって立派になるし、心は救われるし。とにかく、救われるんだよ! 救われたい奴は集まれー!」
声を大にしていうと、まばらに散っていた村人たちが一斉に集まってきた。この熱気、良い。誰もがミリアたんを求めている感じだ。
信仰は許すけど、ガチ恋は許されない。絶対にだ。見つけ次第、殺す。
「それで! 俺たちの神様の名は!」
「こほん。静粛に。この場に集いしすべての者よ、刮目せよ! 可憐にして至高、慈愛に満ち、星々すら霞ませる輝きを宿した存在……その御名はミリア! あらゆる美徳をその身に宿し、微笑めば世界は祝福され、ひとたび御言葉を紡げば迷える魂は救われる! その一挙手一投足は奇跡に等しく、我らが歩むべき道を示す光そのもの。そう、この方こそが、我らが心の拠り所にして絶対なる導き手、偉大なるミリア様であらせられる!!」
手を向けて、皆にミリアたんを見てもらう。見よ、この神々しい――って思ったら、ミリアたんが地面の上に倒れていた。
「ミミミミミミッミリアたーーーーーんっ!!????」




