第9話 エリナとルナ
ビューーー、ビューーーゥ
風切音が心地よい。初めて空を飛んだアキトは好奇な目で景色を眺めていた。
「すごいよ!」
「そうだな、アキト」
ナガトは微笑んだ。
雲が流れていく。
飛行すること二時間。
村の集落が目視で確認できた。
「あれがエルダ村だ。わしはその近くにナガトっちと坊主を降ろす」
「よろしく頼む、ギギ」
ギギが高度をゆっくりと下げ始めた。
そして————
人気のない街道の近くに着地した。
「この街道をまっすぐ行けばエルダ村だ」
「そして、これがわしからの餞別だ」
ギギは革袋をナガトに渡した。
「これは?」
ナガトは聞き返す。
「人の国で使われている金貨だ。なにかの役には立つはずだ」
「かたじけない」
ナガトは頭をさげた。
「では、わしはここで退散する。達者でな」
「ギギさん、またね」
アキトは無邪気に手を振った。
「坊主、頑張れよ…」
ギギは竜化すると羽ばたき去っていった。
虫の鳴き声と草が風に揺られる音のみが聞こえる。
陽光は温かく二人を包む。
「さて、行くか。アキト」
「うん」
二人は街道を西へ向かった。
ナガトはゆっくりと歩いた。いつもより足取りが鈍い。
アキトはナガトの歩調に合わせた。
「ナガト、大丈夫?」
「大丈夫だ」
ナガトは凛とした声を上げた。
半時ほど歩くと集落が見えてきた。
「ナガト、集落が見えるよ」
アキトが指さした。
「ああ、もう少しだ」
ナガトが応じた。
◆ ◆ ◆
しばらく歩くと、集落の近くで一人の小さな女の子がお花摘みをして遊んでいた。
「あの子に聞いてみよう」
「おーい、そこのきみ」
ナガトは声をかける。
栗毛の髪をした短髪の女の子は声に気付き振り向く。
「誰なの?」
「きみはこの村のも…うぐ」
めまいがナガトを襲う。そして、ナガトは倒れた。
「ナガト!!」
アキトは叫ぶ。
「え?」
女の子は摘んでいた花を落とした。
「お姉さん、どうしたの!」
女の子もナガトのもとに駆け寄ってくる。
「ナガト、しっかりして」
アキトがナガトをゆする。
「すまない、少しめまいがしてな」
ナガトはか細い声で答える。
「お姉さん、大丈夫?」
女の子がナガトを覗き込む。
「ナガトが、ナガトが!!」
今にも泣き出しそうな声でアキトが叫ぶ。
「姉ね、呼んでくる!」
女の子は近くの民家に駆けだす。
しばらくすると女の子が年頃の娘を連れて戻ってくる。
娘は周囲を見渡すと言葉を発する。
「話はあとです。そこの男の子、彼女の右肩を持ってください。私は左肩を持ちます」
アキトは頷く。
「ルナ、扉を開けてください」
「わかったの、姉ね」
ルナは足早に民家へ向かう。
娘は左肩を抱える。アキトは右肩を抱える。
ナガトを娘達が住む民家へ連れて行く。
「はやく、はやく」
ルナが民家の扉を開けて、中にはいる。
そして、アキト達は民家に入りナガトをベッドに寝かせた。
「すまない」
ナガトはか細い声で礼を述べた。
娘は栗色の長髪をかきあげナガトの額に手を当てた。その後、右手首の脈を診た。
「熱はないようです、脈は————少し弱いですね」
「自己紹介がまだでしたね。私はエリナです。こちらは妹のルナです」
娘が名乗った。
「私、ルナ」
エリナの隣にいた女の子も名乗った。
「私はナガト」「僕はアキトです」
それぞれ名乗りを上げた。
ルナはナガトとアキトをまじまじと見つめた。
エリナは一度炊事場へ行きお茶をもって帰ってきた。
「アキト、起こしてくれないか」
「ナガト、大丈夫?」
アキトが心配そうな目で見つめた。
「ああ」
弱弱しくナガトは答えた。アキトはナガトの背を持ちあげた。
続く
評価やレビューなどがあれば励みになります。
よろしくお願いします。




