第8話 血
ナガト————
「ナガト…」
朧げなナガトの意識が覚醒しようとしていた。
アキトが懸命にナガトの体をゆすり声をかけていた。
目を開けると目の前にアキトがいた。
「アキト?」
「アキト、無事だったのか、よかった」
「アキトを危険にさらしてしまった。すまない」
「戦女神として不甲斐ない」
か細い声で言った。
「僕は大丈夫だよ」
「ギギさんにご飯をいっぱい食べさせてもらったよ」
アキトは答えた。
ナガトは体を起こし、アキトの後ろにいるギギを見た。
「そうか。礼を言う、ギギ」
ナガトはギギに頭を下げた。
「礼には及ばんよ、ナガトっちはわしの友だ。友の子を守るのは当然だ」
「友か」
ナガトは困惑した。
「だが、悪くはない。後、アキトは私の子ではないぞ、ギギ」
ギギは少し驚く。
「ナガトっちと坊主のマナの質はよく似ておるし、坊主の剣の構え方も近かったのでな」
「アキトが刀を構えただと?」
「ああ、ナガトっちが倒れたとき、坊主が剣を拾いそれを構えてわしと対峙しおったわ」
ナガトはアキトを見る。
「本当か?、アキト」
「うん。なんとなくそうするべきだと思って————」
「なんと!」
ナガトは驚いた。そして、ナガトは腕を組み考えた。
アキトが刀の構え方を知っているわけがない。
私の血を与えたことによりアキトに何らかの変化があったとしか考えられない。
結果的に戦女神の力を人に与えてしまったことになるか。
だが、誰にも頼ることができないこの世界でアキトが生きていくにはよいかもしれぬな。
私が眠りについてもアキトは生きていけるだろう。大丈夫だ。
「アキト、刀を構えてくれ」
ナガトは凛とした声でいった。
「なんで?」
アキトは質問する。
「確かめたいことがあるからだ」
「ナガトがそういうなら分かったよ」
アキトはサネユキを抜き構えた。
「いい構えだ」
ギギは感心する。
「これは————」
ナガトは目を見開く。
「刀をふってみてくれ」
アキトは頷く。
「えい」
シュッ
剣筋はよい。
だが、自重と筋力がないため一度振ると次振ることができないようだ。
「なるほど」
ナガトは頷いた。
「ふむ、アキトは毎日、刀を振るう訓練をするとよい」
「どうして?」
「ここで生きるには必要なことだからだ」
「わしも坊主は剣の修行をしたほうがよいと思うぞ」
ギギは同調する。
「わかった」
アキトはしばらく考えて頷いた。
◆ ◆ ◆
「————ということなんだ」
ナガトはギギに今までの経緯の説明を終えた。
「信じられぬ話だが、ナガトっちが言うのだから事実であろう」
「それにナガトっちが人でなく神ということは一目で分かる」
ギギは腕を組み感想を述べた。
ナガトはギギの目を見て話した。
「ギギに聞きたい。アキトを人が住んでいるところへ連れて行きたい」
「ここから近い人の集落はどこか?」
「エルダ村だ。ここから徒歩で五日くらいだが、今のナガトっちでは————」
アキトはギギを見つめた。
ギギは咳払いをした。
「坊主、何でもない。村の近くまではわしが送ろう。わしにできることはそれくらいだ」
「感謝する」
ナガトは深く頭を下げた。
「今日はもう遅い。ここで泊まるとよい」
「ありがとう、ギギさん」
アキトは笑みを浮かべた。
アキトは腹が満たされ安心したからだろうか、睡魔に抗えずベッドで泥のように眠りについた。
「ギギ、話しておきたいことがある」
「————そうだな」
ナガトとギギは別室に移動した。
◆ ◆ ◆
翌日の朝————
地底湖。
「これがナガトっちの依り代か。見たこともない船よのお」
「だが、戦のために造られた船だということは分かる」
ギギは感心する。
「ああ、私は大神アマテラス様に命じられてこの艦に鎮座した」
「何もかもみな懐かしい。昨日のことのようだ」
「ナガト、大丈夫?」
アキトはナガトを心配そうに見つめた。
「ああ、問題ない。必ずアキトを人がいるところへ送り届ける」
ナガトは胸を張った。
ギギは竜化すると背を屈めしゃがんだ。
「わしの背中に乗っておれ」
二人は頷きギギの背に乗った。
「では、外に出るぞ」
ギギは羽ばたくと、ゆっくりと地下水道を飛んだ。
やがて、朝の陽光がさしこんできた。
地下水道を抜け、海へ出た。
潮の匂い、鳥の鳴き声、朝の優しい陽光。
ギギはゆっくりと高度をあげる。そして、大きな弧を描くと陸に向かって飛び始めた。
岩山と沼地を抜けると緑の大地がアキトらの眼下に広がった。
続く
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