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アルディア戦記 ~少年はやがて皇帝になる~  作者: wok
第四章 反攻、イセル州攻防戦

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80/81

第80話 討伐ごっこ

秋の徴税が終わると、ガルドア帝国の討伐部隊が毎年必ずアルカンティアからやってくる。今年で12回目だ。回数を重ねるごとに形骸化していき、今では秋の恒例行事のようなものに成り果てている。


大軍をもってしても州の半分を占めるアルローザ大樹海を制圧することはほぼ不可能だ。ゆえに、ガルドア帝国はレジスタンスをアルローザ大樹海に封じ込めておくことを目的としていた。


もっとも帝国にとっては帝都クロノスから最も離れているアルデ州の情勢など、今となってはどうでもいいことなのだ。


日は天に昇り、そよ風が黄色くなった草を揺らす。木から紅葉した葉が一枚、ひらりひらりと地に落ちた。


アキトが率いる迎撃部隊はアルローザ大樹海の入口で帝国の討伐部隊と対峙していた。


「来ます!」


多数の矢が、レジスタンスの歩兵列のはるか前に降り注いだ。


「撃て!」


アキトが腕を振り下ろす。


後列の弓隊が斉射する。


撃った矢は、帝国軍の歩兵列のはるか前に落ちた。


青銀の鎧を身につけ、眼鏡を掛けた細い目の男は呟いた。


「これでは、弓技大会ではありませんか」


「弓隊の隊長さん、もう少し角度を上げるように命じてください」


「エルンスト様、それでは奴らに当たってしまいますが…」


「叛徒どもを討伐するのが我々の仕事でしょう?」


「ですが、前旅団長は当てるなと…」


「変わった前旅団長さんですね。しかし、私は帝国軍人として責務を果たす必要があります」


「角度を上げて撃ってください」


エルンストは細い目を見開いた。


「は、はい」


「すこし角度を上げて撃て!」


隊長は上ずった声で命じた。


帝国の弓隊は指示されたとおりに矢を放った。


アキトは矢の角度に気づくと大声で命じた。


「盾衾!急げ!」


ガンッ ガンッ ガンガンッ


盾列に矢が当たる。数本がすり抜け兵士の足に刺さった。


「ぐわぁ」


「本気で撃ってきやがった…」


どよめきが走る。


「クリシュナ、負傷者を後方に」


「はい!」


第24補給小隊はすばやく負傷者を後方へ下がらせた。


「弓隊撃て!」


双方の盾衾に矢が当たる。


「歩兵が来ます!」


「迎え撃て!」


戦場は歩兵同士の戦いとなった。


敵味方で打ち合いながら会話が繰り広げられた。


「おい、話が違うぞ」


「旅団長が変わっちまって今年はいつも通りにはいかねーんだよ」


「アルディア人同士で殺し合いとか勘弁だぜ」


「まったくだ」


「お前たちの装備、俺達よりよくねぇ?」


「ここ三年で格段によくなったな」


「おれもレジスタンスに入ろうかな」


「ぉお、こいよ、こっちこいよ、歓迎だ」


「早く帰りてーよ」


「もうちょっとだけ辛抱だ」


「だりーなぁ」


アキトは後退の合図を出した。


「僕が殿を務めます。速やかに後退を!」


アキトは前に出て後退の支援をしていた。帝国の歩兵部隊はレジスタンス側の撤退をほとんど阻止しなかった。


エルンストは戦場を眺めていた。


「これも子供の剣術ごっこですね」


「ん、あれは?」


望遠鏡を取り出すとアキトを見つめた。


「あの変わった剣、黒髪。そしてあの顔、似ている…」


「————間違いない、やつは賞金首のアキト!」


「弓を貸してください」


エルンストは弓を借りると矢をつがえ弦を引き絞った。


彼の眼鏡が陽光を受けキラリと輝く。


そして、アキトに向かって鋭い矢が放たれた!



続く


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