第79話 第24補給小隊II
一同はキーロフ達の小屋の前へ着いた。近くの沢には複数の陶器の壺が浸けられていた。
「まずは火起こしやな。まかせとき」
ナンナンは駆け足で小屋へ入ると、火の点いたランタンを持って帰ってきた。
「ナンナン、疲れてたんじゃなかったの?」
ルナはナンナンを見上げる。
「デザートは別腹なの」
「だよねぇ」
ナンナンはルナとメルの口真似をして腰をくねらせた。
ルナとメルは目を丸くする。
「それと同じや、飯をつくるときの体力も別腹や」
ナンナンはランタンの火から麻の火口に火を移し、その上に薄い薪を手際よく組んで軽く息を吹きかけた。
火の勢いが増す頃合いを見計らって薪を焚べた。
「よっしゃ、焚き火ええ感じになってきたで」
「じゃあ、ワイルド串を持ってくるか」
キーロフはそう言うと沢に浸っている壺を一つ持ってきた。
壺を開けると果実の甘い香りと香辛料とにんにくのほどよい匂いが広がる。
「わぁ、美味しそう」
メルがつばを飲み込む。
「美味しそうなの!」
グゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
誰かのお腹が鳴った。
「ナンナンはしょうがないやつだなぁ」
キーロフが笑う。
「今のは吾輩ちゃうで!」
ナンナンが首を振る。
三人は頬を赤らめたルナに気づいた。
「あ、すまない」
キーロフがぽつりとつぶやくと、ワイルド串を焚き火のそばに刺して回った。
「人間だから仕方ないよ。私も鳴ることあるし、気にしない気にしない」
メルがルナの肩を叩く。
「吾輩も美味しいものを見るとよく腹を鳴らすんや、せやからルナルナと吾輩は腹鳴り仲間や」
「はっ、ルナルナと吾輩の腹がなるぅ、はっ♪」
ナンナンは変な歌を歌い始めた。
「おれたちゃ、腹鳴りな・か・ま、へいっ♪」
「おい、ナンナン」
キーロフが制止しようとするも歌は続く。
「ナンナンのばかっばかぁー」
ルナはナンナンの背中をぽかぽかと叩いた。
「いたい、いたい、かんにんやー」
「ばかっばかぁー」
しばらくの間、ナンナンが叫びルナが小さな手で叩き続けた。
その光景を見ていたメルが笑った。
その笑いにつられてみんなが笑った。
ジューーーーッ
ワイルド串の香ばしい匂いが漂ってきた。
「あと少しだ」
キーロフはすべての串を裏返した。
「せや、のみもんがいるな。酒と果実水をもってくるわ」
ナンナンは小屋にはいると盆に乗せた木のコップを4つ持ってきた。
キーロフと自分には酒を、メルとルナには果実水を配った。
「ありがとう、ナンナン。さっきは叩いてごめんなさいなの」
ルナは小さな声で言った。
「かまへん、かまへん。ルナルナにならいくら叩かれてもかまへんでぇ」
ナンナンは笑った。
ワイルド串がこんがりときつね色に焼き上がった。
「今だ」
キーロフが合図をすると、一同は串をとった。
「いただきます」
ルナはそう言うと肉を口に入れた。
肉は柔らかく、にんにくと香辛料がその味を一段と引き立てる。肉の間に挟まれたきのこを食べると染み込んでいた肉汁が口の中に広がった。
「おいしいのぉ!」
「ほっぺが落ちそうです」
「めちゃくちゃうまいわ!」
「いい出来だ」
「私、この小隊に配属されてよかった。ねぇ、ルナ」
メルはルナを見つめた。
「うん、メル」
ルナは微笑む。
キーロフは即座に次の串を刺して回った。
パチンと薪の爆ぜる音と虫の鳴き声が心地よい。
天空には三日月となった蒼き月レイズが煌めき、星の海が広がっていた。
続く




