第81話 討伐ごっこII
アキトは迫りくる一筋の矢を斬り払った。
矢が飛んできた先を一瞥すると後退していった。
「さすがは100万ガドの男。セザール殿下の左目を奪った男に間違いない」
エルンストは目を細める。
「エルンスト様、追撃のご命令を!」
「待ちなさい。敵の後退の仕方が不自然すぎます。斥候を出してください」
「斥候ですか? 了解しました。前旅団長は即追撃命令を出していましたので…つい」
「前旅団長は突進牛さんでしたか」
エルンストは頭を抱える。
しばらくすると斥候が帰ってきた。
「敵は物資を捨ててあわてて逃げ出したようです」
「そうですか。では前進します」
討伐部隊は警戒しながら前進し、やがて開けた陣地にたどり着いた。
そこには大量の物資が山積みされていた。
「これは…」
エルンストは目を見開く。
「去年の二倍はあるぞ」
「おお、今年はすごいなぁ」
「やつらも分かってるじゃねーか」
兵たちから歓声が上がる。
あまりにも出来すぎている…
エルンストは手で顎を触った。
「物資の回収は後方の部隊に任せて前進します」
「え?」
「我々の任務は叛徒の討伐ですよ?」
「前旅団長は… 失礼いたしました。前進、前進せよ!」
号令が飛ぶ。部隊からどよめきが起こる。
討伐部隊は再び前進を開始した。
しばらく進むとレジスタンスの前線の防御陣地にたどり着いた。
陣地は幾重にも張り巡らされた空堀と木の柵で囲まれていた。陣地の前には複数の馬防柵が配置されている。木の柵の内側から多数の弓兵が矢を番えていた。
「止まってください」
エルンストが声を上げた。そして望遠鏡を取り出し様子を伺った。
これ以上攻めるなら、容赦はしないぞということですか…。確かに旅団規模では返り討ちにされるだけです。
「撤退します」
エルンストがそう言うと、討伐部隊は退却していった。
◆ ◆ ◆
アキトは討伐部隊が引き上げたのを確認したあと、コンゴール高地へ戻ってきた。
「おかえり、アキト」
「おかえりなさいませ、アキトさん」
アリアとメリダが声を掛けた。
「ただいま戻りました」
アキトが答える。
「よぅ、へいかぁ。うまくやったそうじゃねーか」
レイチェルが肩を叩いた。
「いえ、負傷者が数名でました」
「負傷者3名で済ませたなら上出来だ」
バッツが頷いた。
「しかし、今回の討伐部隊は我らに矢が当たるように撃ってきました」
カトレフが報告する。
「そうか…だが、この馴れ合いも今年で終わる」
バッツがアリアを一瞥する。アリアは頷く。
「終わる?」
「ああ、後日説明する」
「はいっ!」
カトレフは一礼する。
「隊長、待ってます!」
レイチェルが拳を握った。
続く




