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アルディア戦記 ~少年はやがて皇帝になる~  作者: wok
第三章 アルデ州へ

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第74話 アキトとアリア

テーブルのランタンの火がゆらゆらと揺れている。


辺りはすっかり暗くなり、蒼き月レイズの光が窓から差し込む。


アキト達はそれぞれの事情をバッツに話し終えた————


長い沈黙が続く。


バッツは閉じていた目を開き言った。


「俺はアルディアの民だ。ガルドアのクソ野郎どもからこの地を取り戻すのが俺の目的だ」


「悪いが、王家の復興は考えていない」


バッツはアリアを一瞥する。


「だが、ガルドアを倒すという目的は同じだ」


アリアは頷く。


「私もバッツさんに同意します。今もガルドアの理不尽な法が民を傷つけています。私の願いは民が安心して暮らせる世を作ることです。ただそれだけです」


「わたくしは王家を再興し姫様には新しいアルディア王国を作っていただきたいですわ!姫様には皆の思いが込められていますもの!」


メリダが珍しく語気を強めた。


「そうですね…」


アリアはしばらく沈黙した。


「いえ、滅んだ王家など気にする必要はありません!今の私はアリア。アルテシア・ヴィ・アルディアではありません!」


アリアは言い放った。


「姫様…」


メリダはそれ以上は言わなかった。


夜風が窓を叩き、薪が弾ける。その音だけがしばらく聞こえた。


「アキトがこの星の者ではないという話は、すぐには信じられんが今はいいだろう」


バッツはアキトの髪の毛を見て続けた。


「ガルーダも黒髪だった。その息子カイトもガルーダの剣技を引き継いだはずだ。お前もカイトからいろいろ学んだのだろう。だから、アキト。お前が|アルディア一の剣士の座《プリマ・スパーダ》を継げ!」


アキトは剣帯を撫でると頷く。


「アルディア一の剣士となれるよう努力します」


「ほぅ、期待しているぞ」


バッツは頷く。


「さて、いい頃合いだ。明日は挨拶回りをしてくれ。明後日から働いてもらう。アリアも特別扱いはしない」


「信を得るには実績を示せ。話は以上だ」


バッツは立ち上がると手を二度叩いた。扉が開くとレイチェルが入ってきた。


「こいつらを空いている小屋に案内してやってくれ」


「はっ、了解しました」


レイチェルはアキト達を見渡すと言った。


「お前ら、あたいについてきな」


一行は退出しレイチェルの案内のもと空いている小屋へ向かった。


小屋には粗末だが食事が用意されていた。


「クリシュナが作ってくれたものだ。それを食べて今夜は寝な」


「レイチェル、あとで伺いますわ」


メリダがレイチェルの肩をつかむ。


「か、勘弁してくれぇ」


そう言うとレイチェルは逃げていった。


旅の疲れもあり、食事をとると一行は深い眠りについた。


一行は、紅天楼を出立してから初めて安心して休むことができたのである。


翌日、一行は朝からひとりずつ丁寧に挨拶回りをした。


挨拶を終え小屋に帰るとルナとメリダは明日からの仕事の打ち合わせのためクリシュナの小屋へ向かった。小屋はアキトとアリアだけとなった。


「アキト、少し歩きませんか?」


「はい、お供します」


二人は外に出て歩き、やがて見通しのよい高台に着いた。


沈みゆく恒星エリーゼの夕陽が二人を赤く染めた。


広大な樹海の先に大きな城が見えた。


アリアのポニーテールが風に揺れる。


アリアは城の方を眺め目を潤ませた。


「アリアさん?」


「ごめんなさい。あの城を見てふと昔を思い出してしまいました」


アリアは手で涙をぬぐう。


「私にも家族がいました。

お父様はいつも笑って私の頭を撫でてくれた…

お母様はいつも私を優しく抱きしめてくれた…

アルフレッドお兄様は私のかけがえのない先生だった…

アルシオンお兄様は私の一番の遊び友達だった————」


アリアは目を閉じ、しばらく黙っていた。


目から涙がひとつ地に落ちる。


「なぜ、私も一緒に連れて行ってくれなかったのですか!なぜ、私だけ生きているのですか!」


アリアは叫んだ。涙がボロボロとこぼれ落ちる。


「どうして、わたしだけ、わたしだけが!」


アリアは泣き崩れそうになる。アキトはアリアを抱きとめた。そうするしかないとアキトは思った。


アリアはアキトの胸の中でしばらく泣き続けた。


そして泣き止むとぽつりと言った。


「もう大丈夫です。ありがとう、アキト」


アリアはアキトの胸を押して離れた。


「見苦しいところを見せてしまいました。ごめんなさい」


「いえ、そんなことは…」


「そうだアキト、メリダの妄想は気にしないでください」


「妄想って?」


「私と結婚して…アルディアをというあれです」


「あはは、そうですね。でも、僕はアリアさんのこと好きですよ」


アキトは無意識につぶやく。


「ひゃい?」


アリアは目を見開く。頬が赤くなる。


アキトも発言の意味に気づき頬が赤くなり下を向く。


すでに日は落ち、満天の星空が広がっていた。


「まあ、私もアキトのことはす…」


と言いかけたところで口を閉ざした。


「保留!保留です!!いいですか、メリダの言うことに縛られないでください」


アリアは言い放つと一人駆けていった。


アキトはこのときのことを生涯忘れることはなかった。


そして、三年の歳月が過ぎた————



第三章 終


第四章へ続く

三章終わりました。長かった。


四章は...

反攻作戦開始。

ついに地底湖に眠る戦艦長門が動き出す。


乞うご期待。

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