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アルディア戦記 ~少年はやがて皇帝になる~  作者: wok
第三章 アルデ州へ

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第73話 十年の歳月

バッツは立ち上がるとゆっくりとこちらへ歩いてきた。


そして、アキトをじろじろと見つめた。


「お前がアキトか」


「はい」


アキトは頷く。


バッツはアキトの腕を掴むと二度揉んだ。


「ほぅ、いい体躯をしているな…」


「で、どうだった?レイチェル」


「はっ、アルディア一の剣士かどうかはわかりませんが強かったです。あたいは本気で戦いましたが負けました…」


「ほぅぅ、アルディア一の剣士といえばガルーダだったがな…まあ昔の話だ」


「ガルーダ?」


「どうした、アキト」


「兄さんの父の名前がガルーダでした」


「なに!?アキトはガルーダの息子か?」


「いえ、違います」


「義兄弟か。で、ガルーダはどうしている?」


「ガルーダさんは酒が祟って亡くなったと聞いています」


「やつらしい最期だな。俺より先に楽《らく》しやがって馬鹿野郎が…」


バッツはしばらく目を閉じた。


「ガルーダの息子はどうした?」


「ガルーダの息子…僕の兄カイトは僕とルナを逃がすため戦い亡くなりました」


アキトは俯く。


「そうか…いい兄だったんだな————」


「はい…」


バッツはルナに目線を向ける。


「嬢ちゃんがルナちゃんかい?」


「なの…」


ルナはそばにいたアリアの後ろに隠れた。


「怖がらせてしまったみたいだ…」


バッツは苦笑する。


「で、あんたが姫様か?」


バッツはアリアを鋭く見た。


アリアはバッツと目線を合わせると言った。


「今の私はアリアです。昔はアルテシア・ヴィ・アルディアと呼ばれていました…」


「そうか、俺も遠くからアルテシア姫を見たことがあるがあんたがその人かまではわからん。上の者はみんなあの戦いで死んでしまったからな」


「そして、ガルドアのクソ野郎どもはアルテシア姫の死を正式に確認している」


「バッツさん、姫様は姫様ですわ。先日もダイスさまとわたくしで姫様を連れ出した話はしましたわ」


「そうだったな。レイチェルにメリダは妄想癖があると聞かされていたものでな…」


「レ・イ・チ・ェ・ル。今日も…明日も!徹夜でわたくしのお話に付き合っていただきますわ!!」


メリダは頬を膨らませる。


「お手柔らかに頼むよ、メリダ」


さすがのレイチェルもこのときはメリダの気迫に押された。


「二人が親友だということはよく分かった」


バッツは両手を二人に向けて制止する。二人が落ち着く頃合いを見計らって話を続けた。


「今の俺達には王都アルカンティアを取り戻す力はない」


「そして…あんたが本物のアルテシア姫だったとしても、今の王家の御旗に昔のような価値はない」


「分かっております。私はアリアです。それで十分です」


アリアは静かに答えた。


「そうか、では俺もアリアと呼ばせてもらう」


「はい、よろしくお願いします」


アリアは頭を下げた。


「ここの連中について話しておこう」


「俺達はアルクール平原の戦いのあと逃げた敗残兵がもともとの集まりだ。そして俺は第13歩兵小隊の隊長にすぎなかった。レイチェルはそのときの部下だ」


バッツは窓から外を眺める。


「今では帝国の物資を襲う山賊みたいなものだがな」


そして、アキト達一行を見渡したあと言った。


「まあ、立ち話もなんだ、奥の椅子に座ってくれ」


バッツは奥の丸テーブルを手で示した。一行は頷くと奥へ向かった。


「レイチェル、人払いを頼む。話が終わるまで誰も近づけるな」


「はっ、了解しました」


レイチェルは外に出ていくと扉を閉めた。


一行はそれぞれ椅子に座った。


「では、話を聞かせてもらおうか」


バッツは手をテーブルの上で組んだ。



続く


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