第69話 レイチェル
カトレフはアキト達一行をポルタ村の民家へ案内した。彼の小隊がその民家を警備する。
一行はその民家で旅の疲れを癒した。
翌日の朝、一行はカトレフ達に護衛されてアルローザ大樹海へ入った。
林道は落ち葉で埋め尽くされていた。葉の隙間から陽光がちらちらと差し込む。
迷路のような道を右へ左へと進んでいく。案内がなければほぼ間違いなく道に迷うだろう。
やがて、道は開けコンゴール高地の入口が見えてきた。
馬防柵が幾重にも並び、数十の木柵と空堀が構築されていた。
陣地の各所にはアルディア王国の白水鳥の旗が掲げられ、風に揺れていた。
アリアは旗を見上げると目を細めた。
カトレフは最初の門がある空堀の前に行くと向こうの兵士に叫んだ。
「カトレフです。ただいま戻りました」
「カトレフさん、おかえりなさい。今、橋を降ろします」
兵士は近くにあるハンドルを回した。
ガラ、ガラッ、ガラララッ
少しずつ板橋が降りてきた。
ガチャンッ
板橋は完全に降りた。
「さあ参りましょう」
カトレフを先頭に一行は板橋を渡った。
「カトレフさん、レイチェルさんが宴を用意してるから、練兵所に来るようにとのことです」
「レイチェルが?」
カトレフは眉をひそめる。
兵士たちの視線がアリアに集中した。
「おい、あれが姫様じゃないのか?」
「うわぁ、きれいな人だぁ」
「でも、本当に本物なのかな?」
アリアは口元を引き締めた。
その次にアキトに目線が向けられる。
「ずいぶんと若いな…」
「あの奇妙な剣はなんだ?」
「なんでも、やつはセザールを斬ったらしいぜ」
アキトは背を少し屈めた。
カトレフは告げた。
「少し面倒なことになるかもしれませんが…練兵所に向かいます」
一行は練兵所へ向かった。
◆ ◆ ◆
練兵所には、多くの兵士達が闘技場を囲って集まっていた。その中心に青い髪をした筋肉質の女が立っていた。
「カトレフ帰ったか。どうせ騙り姫に誓いでも立てたのか?」
女は大声で笑った。
「失礼が過ぎます、レイチェル。このお方はアルテシア・ヴィ・アルディア姫殿下に間違いありません!」
「どうだかな、美人なのも気に入らねぇ。王族は10年前に皆死んでいる。お前も知っているだろ?」
レイチェルはアリアを睨みつけた。
「騙り姫もなにか言ってみたらどうだ?」
アリアは何も言わず、ただレイチェルを見つめていた。
「否、否、否、否!姫様は姫様です。わたくしが生き証人ですわ」
メリダが叫ぶ。
「泣き虫のお前が大口を叩くようになったものだな、妄想癖メリダさんよ」
レイチェルは木槍で肩をトントンと叩く。そして目線を再びアリアに戻す。
「けっ!すました顔もさらに気に入らねぇ。まあいい。あたいが用があるのはお前だ」
レイチェルはアキトを指さした。
「お前、名は?」
「アキトです」
「あたいの名はレイチェルだ。覚えておきな」
レイチェルは木剣をアキトの足元に投げる。
「今から歓迎会さ。剣をとれ、アキト」
「えっ?」
アキトはとまどう。
「さっさと剣をとれ。それとも怖気づいたか?アルディア一の剣士さんよ」
どっと笑い声が沸く。
「アキトさんはアルディア一の剣士ですわ!」
「にいには強いの!」
メリダとルナが反論する。
カトレフはアキトの肩を叩く。
「申し訳ない。だが、これは避けられぬ戦いです」
「わかった…」
アキトは低い声で答えた。
サネユキと背負い袋をメリダに預けると、木剣を取りゆっくりと闘技場へ歩いていった。
続く




