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アルディア戦記 ~少年はやがて皇帝になる~  作者: wok
第三章 アルデ州へ

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第65話 山小屋II

アキトは目を開けた。すぐになにかが焦げている匂いを感じた。


外はすでに暗くなっていた。屋根に当たる雨の音が聞こえている。ランタンの灯と暖炉の炎が山小屋を暖かく照らしていた。


「できました」


アリアが振り返る。


「アキト、よく眠れましたか?」


「はい」


「それはよかったです。ちょうど食事の用意ができました」


そう言うとアリアはそれぞれの皿に目玉焼きを乗せて、塩をふりかけた。


「今日はベーコンエッグです」


黄身は完全に固まっているが、形は普通の目玉焼きだった。


「いただきます」


三人は手を合わせたあと食べ始めた。


「!」


全員が顔をしかめた。


「苦いの…」


ルナが口を歪める。


アキトは目玉焼きの端をフォークで持ち上げて裏側を見た。


裏側は真っ黒で、かつてベーコンだったものが炭化していた。


「ぁ、ぁぁ。これは焼きすぎたのかも…」


「そうですね…」


アリアが小声で答える。


「でも、焦げてない部分は食べられますので大丈夫です」


そう言うとアキトはナイフで全員のベーコンエッグから炭化した部分を切り取った。


「ありがとう、アキト。料理とは難しいものですね」


アリアは少し沈んだ声で言った。


食べられる部分を食べ終えたあと、アキトは言った。


「今から僕が果実水を作ります」


メリダが残していったりんごなどの果実を数個取り出すとその皮を剥く。そして細かく砕き綿布の上に乗せて包むと絞った。


甘酸っぱい匂いが小屋に広がった。


それぞれのコップに果実汁を注ぎ水で割った。


「どうぞ」


アキトはそれぞれに果実水の入ったコップを配った。


「おいしいの!」


ルナは喉を鳴らして飲んだ。


「ありがとう。ところでアキトはどうやって料理を覚えたのですか?」


アリアが尋ねる。


「いえ、僕が作れるのはカイト兄さんに教わった野営食だけです。あとは…エリナ姉さんが料理するのを見ていたくらいです」


アキトは答えた。


「そうでしたか」


アリアは頷くと、ルナに目線を移した。


「ルナちゃんは料理を作れますか?」


ルナは首を横に振り言った。


「ねえねがいつも作ってくれたの…」


アリアはルナの頭を軽く撫でたあと言った。


「実は、私は今まで一度も料理をしたことがなかったのです。昨日のスープがはじめてでした」


アリアは自分の長いポニーテールを弄り始めた。


「メリダに単独偵察させることは最善策だと思います。ただ、料理については何も考えていませんでした」


「メリダが当然のごとくやっていたことがこれほど大変だったとは…」


アリアは下を向いた。


「確かに」


アキトは顎に手を当てしばし考えた。そして提案した。


「では、明日からは三人で料理を作りましょう。僕の国の諺《ことわざ》に三人集まればなんとかの知恵というものがあります」


「なんとかの知恵ですか、そうですね。三人が知恵を出し合えばうまく作れるかもしれません。感謝します、アキト」


アリアは顔を上げ微笑んだ。



続く


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