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アルディア戦記 ~少年はやがて皇帝になる~  作者: wok
第三章 アルデ州へ

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第59話 ロアダルギア廃鉱山II

「外套が少し濡れただけで済みましたわ。そして着いた途端にこの豪雨、これなら魔女もわたくしたちを追えません。水の女神(ウォルトナ)様に感謝いたしますわ」


メリダは頬を緩めた。一方、アキトは足が鉄の棒のように重くなっているのに気づいた。


「もう、降ろしてください」


アリアは足を振った。


「名残惜しいですが、わかりましたわ」


メリダはゆっくりとしゃがんでアリアを降ろした。


「お姫様抱っこはともかくとして助かりました。メリダ」


「どういたしましてですわ、お姫様」


メリダは背負い袋から野営道具一式を取り出した。


「まだ、早いですが今日は入口近くで野営を致しますわ」


メリダは携行用焜炉(コンロ)を組み立てた。


手慣れた手つきで火打ち石を打ち一発で火口に火を点けた。


「メリダさん、火を点けるのが早い」


アキトは目を丸くした。


「あはは、毎日訓練させられましたから…火打ち石千練(せんれん)は二度とやりたくありませんわ」


メリダは苦笑しながら、細くて薄い炭を火口の上に置いた。


やがて炭が赤くなり、周囲を暖めはじめる。


その上に普通の炭を足す。


続けて毛布を取り出すとアキトに言った。


「アキトさん、ルナちゃんをわたくしに」


両手を伸ばす。アキトは頷くとルナを渡した。


メリダはすばやくルナを毛布で包むと焜炉のそばに寝かせた。


「暖がとれるのは助かります」


アリアはアキトの横にしゃがみ、両手を焜炉に当てた。


しばらくの間、炭の弾ける音だけが響いた。


メリダが片目をつぶり両手の親指と人差し指で作った枠のなかにアキトとアリアを入れた。


「これは絵になりますわ。相思相愛の男女が身を寄せ合って暖をとるこの姿、たまりませんわ」


メリダは目を細める。


「違います。これは————」


アリアの頬は赤くなり、アキトは下を向いた。


「これは?どういうことですの?姫様はアキトさんのことがお嫌いですの?」


「けして嫌いではありません」


「じゃあ好きということですわ」


メリダは満面の笑みを浮かべる。


「ともかくです。私なんかを妻にしたら、アキトが大変なことになります」


「そんなことありませんわ、アルディアの新しき王アキト陛下万歳ですわ」


メリダは追撃を緩めない。


「えーと、メリダさん、アリアさんが困っているので…」


アキトが割って入った。


「はっ、陛下に言われるなら従いますわ」


メリダはアルディア式敬礼をアキトにした。


「おはようなの」


ルナが目を覚ました。三人の顔を見ると頬を緩めた。


「ルナちゃん、おはようございます」


アリアはルナに手を振った。


「では、ルナちゃんが起きましたのでお食事といたしますわ」


メリダは水を入れた鉄鍋を焜炉に置いた。そして湯気が出始めた頃合いを見て乾燥豆と乾燥野菜と塩を入れる。


それを木のスプーンで混ぜて豆のスープを作りそれぞれの木のコップに注いだ。


次に、木の実と蜂蜜で固めた棒状の携行食を各自に渡した。


「少し固いかもしれませんが、今は我慢してくださいませ」


「ありがとうなの、メリダさん」


ルナは頭を下げた。


「いただきます」


アキトはそう言うと、みんなも続いた。



続く


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